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人工知能(AI)と機械学習(ML)は何が違うのか

レンテックインサイト編集部

人工知能(AI)と機械学習(ML)は何が違うのか

大きな注目を集める「人工知能(AI)」と「機械学習(ML)」。この二つの用語はしばしば同じように扱われますが、実際には異なる概念です。いずれを活用するにせよ、その違いを理解し明確にしておくことは欠かせません。

本記事では、AIとMLの違いやそれぞれの技術の分類、活用イメージなどについて分かりやすくご紹介します。

AIとMLの違いは、‟技術の総称”or‟その実現手法の一分野”

AIとMLの違いは、AIは‟コンピューターが人間のように知的な動作をする技術の総称”であり、MLは‟その実現手法の一分野”であるという点です。例えば、機械ではなく人間が登録したルールに基づいて動作する「ルールベースAI」はMLとは異なる手法で実現されたAIです。とはいえ、現在著しい進化の渦中にあるAIの中核にあるのはMLであり、そのため「AI≒ML」のように語られることが多いのです。

AIは‟コンピューターが人間のように知的な動作を行う技術の総称”

人工知能(AI)とは、コンピューターが人間のように知的な動作を行う技術の総称です。AIの目的は、問題解決、推論、意思決定、自然言語処理など、人間が持つ知的能力を機械で再現し、さまざまなタスクを自動化することです。応用分野は多岐にわたり、例えば音声認識、画像認識、自動運転、医療診断、ロボット技術、さらには金融やエンターテインメントの分野にもおよんでいます。

AIは、「強いAI」と「弱いAI」に大別されます。強いAIは、人間と同等またはそれ以上の知的能力を持つ理論上のAIであり、まだ存在しないという見解が一般的です。一方、弱いAIは特定のタスクをこなすために設計されたAIで、私たちの日常に浸透しているのはこちらです。例えばChatGPTやGeminiは、特定の質問に回答する、画像やテキストを生成するといった狭い範囲で高いパフォーマンスを発揮しますが、汎用的な知能はまだ持ち合わせていません。

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MLは‟特定のタスクを行うため、システムがデータを使って自動的に学習する手法”

機械学習(ML)は、AIの一分野であり、特定のタスクを行うため、システムがデータを使って自動的に学習する手法を指します。機械学習は現在のAI技術の中核であり、人間の脳神経の構造を模倣したニューラルネットワークやその一部であるディープラーニング(深層学習)もMLの一種に該当します。

また、MLには「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の三つの手法があります。それぞれの違いは、以下の通りです。

・教師あり学習:事前にラベル付けされたデータ(入力と正解のペア)を使ってアルゴリズムを訓練し、未知のデータに対して正しい出力を予測します。例えば、画像認識で犬や猫を識別する場合、犬と猫の画像にそれぞれラベル付けしたものを学習データとして利用します。

・教師なし学習:ラベル付けされたデータを使わずに、アルゴリズムがデータのパターンや構造を自動的に見つけ出します。その具体的な手段には、データの変数を減らす次元削減データをグループ分けするクラスタリングなどがあります。

・強化学習:出力に対して報酬を与え、それを最大化するように学習を繰り返させることで目的や環境に対して最適なモデルを構築します。事前に与えたデータを学習するのではなく、MLモデルが出力と入力の相互作用を繰り返すことで目的に対して「強化」されていくのが特徴といえます。

AI・MLは実際のところ、どのように活用されているのか

AIとMLは、現代の多くのビジネスや日常生活に深く関わっています。以下に、AIとMLの応用例をいくつか挙げてみます。

自動車業界

自動車業界の大変化を象徴するキーワード、CASEの「A = Autonomous:自動運転」は、AIが道路上の物体を認識した上で、状況に応じた判断を行うことで実現されます。その背後には、何百万もの画像やデータを学習し、正確に物体を識別する機械学習のアルゴリズムが存在します。MLは、このような高度なAIシステムにおいて、特定のタスク(画像認識や運転状況の予測など)を効率よく処理するために重要な役割を果たしています。

金融業界

金融業界では、AIとMLを使った信用スコアリングや不正検出が行われています。例えば、顧客の取引履歴や行動パターンをMLで学習することで不正行為や金融詐欺の対策などが行われています。中国アリババグループの「芝麻(ジーマ)信用」の信用スコアは、AIが与信に活用された有名な事例です。また、投資判断や資産運用の自動化にもAI/MLは全面的に利用されています。

医療業界

病気の診断や治療のサポートでもAI/MLの活用可能性は広がっています。例えば、健康診断結果やスマートウォッチなどのウエアラブルデバイスから得られる生体情報などのPHR(Personal Health Record)を用いてMLモデルを構築し、発症リスクの予測や病気の早期発見をサポートするAIが数多く開発されています。また、「PHR社会実装加速化事業」など、政府がその後押しを行う動きも見られます。

小売・物流業界

小売や物流など多くの方が日々利用する産業の効率化や高度化でもAI/MLは活躍しています。天気、気温、価格、商品陳列などさまざまな変数を考慮しての受発注予測やマーケティングは、リアル店舗でもECでもAI/MLによるサポートが欠かせません。また、物流分野では、MLを使って在庫管理や配送ルートの最適化を行い、コスト削減と効率化を実現しています。

エンターテインメント業界

テキストのみならず画像や音声、映像までも人間以上に高度に生成できるAIは、エンターテインメント業界に大きな影響をおよぼしつつあり、2023年には米ハリウッドで仕事を奪われることに危機感を持った脚本家や俳優らによるストライキが起こったほどです。また、ユーザーの閲覧履歴をもとに好みに合ったコンテンツをレコメンドする機能も、今やほとんどのプラットフォームに実装されています。

情報システム部門によるAI・ML活用の可能性

AI/MLの活用に興味を抱いている、あるいはそのようなミッションを与えられている情報システム部門は少なくないでしょう。情報システム部門自身の業務を効率化・自動化し、コア業務へ専念するためにAI/MLが活用される事例も増えています。

情報システム部門への問い合わせ回答を自動化

チャットボットを活用して問い合わせ対応を自動化しようという取り組みは、すでに顧客対応などで広く取り入れられており、情報システム部門のヘルプデスク業務に応用されている例も散見されます。

生成AIの関連技術として、社内データをAIに渡すことで回答の精度を高めたり方向性を定めたりする「RAG(Retrieval-augmented Generation)」の有効性が認められており、自社にカスタマイズした問い合わせAIを構築することで、情報システム部門のコア業務集中を進めようという取り組みも見られます。

システム開発の随所でAIアシスタントがサポート

要件定義〜プログラミング、デプロイ、運用に至るまでシステム開発のいたるところでAI活用が進んでおり、企業の生産性に大きな影響をおよぼすと言われています。例えば、複雑な要求や仕様の整理やレビュー、タスク定義とスケジュール調整などのプロジェクト管理、実際に手を動かすコードの生成などいずれに業務にも特化したAIの開発あるいは専用システムへのAI機能の盛り込みが進められており、AIのアシストを受けて作業することが今後は当たり前になると考えられます。

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ルールベースとMLの使い分けや組み合わせがAI活用を促進する場合も

AIを活用していく上で基盤となる基礎知識について、「AIとMLの違い」という話題を皮切りに解説してまいりました。AIは、幅広い知的タスクをコンピューターに代行させる技術であり、MLはその中でも有力な手段の一つです。ルールベースとMLの使い分けや組み合わせによりAIの高度化や目的への最適化が可能になる場合もあります。AIを活用する上でベースとなる知識として、本記事の内容をぜひご活用ください。

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