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情シスのコア業務・ノンコア業務とは? それぞれをどう区別し、いかに取り扱うべきか?

レンテックインサイト編集部

情シスのコア業務・ノンコア業務とは? それぞれをどう区別し、いかに取り扱うべきか?

情報システム(情シス)の業務効率アップや働き方改革を進めるにあたって、社内で対応しなければならない「コア業務」とアウトソースや自動化が効果的に働く「ノンコア業務」を分けることが重要だとよく言われます。

しかし、コア業務とノンコア業務を区別するのは容易なことではありません。また、そもそも両者の区別が一様に行えるわけではないという事情もあります。

本記事では、「なぜ重要なのか」という理由から、情シスのコア業務・ノンコア業務の区別と取り扱いについて考えます。

なぜDX時代の情シスにとってコア業務・ノンコア業務の区別は重要か

そもそもなぜ現在、コア業務・ノンコア業務について深く考えることが情シス担当者に求められるのでしょうか。

背景には、DXの重要性が叫ばれるようになった現在の市場環境があります。

一般に、「コア業務」とは企業の利益や経営上の目的達成に直接貢献する業務を指し、「ノンコア業務」はそれ以外の企業活動を維持するために必要な業務を意味します。従来、日本においてIT部門はコストセンターとみなされる風潮があり、すなわち部門全体がノンコア業務とみなされ、アウトソースが前提となるケースも少なくありませんでした。

そのため、日本では他国と比べ、IT人材がIT企業に偏っていることがデータにも現れており、『IT人材白書2017』(IPA)には、情報処理・通信に携わる人材の割合が日本では「IT部門:それ以外の企業 = 72.0%:28.0%」なのに対し、米国では「34.6%:65.4%」、カナダでは「44.0%:56.0%」、イギリスでは「46.1%:53.9%」、ドイツでは「38.6%:61.4%」、フランスでは「46.6%:53.4%」と大きな乖離があることを示すグラフが掲載されています。

しかし、『令和元年版 情報通信白書』(総務省)にも明記されている通り、DXや産業のサービス化実現のカギとなるIT部門は今や利益の源泉となるプロフィットセンターの中心であり、事業部門や経営部門と密に連携を取りながら新たな価値やビジネスモデルを生み出すことが求められるのです。

そこで社内で取り組むべきコア業務、適切にアウトソースすべきノンコア業務について再考することが重要になったという経緯があります。

コア業務・ノンコア業務を区別する際に押さえておくべき二つのポイント

それでは、現代の市場環境においてコア業務とノンコア業務をどのように区別すればいいのでしょうか。

その区別にあたってポイントとなるのが「全社戦略」と「自社のITリソース」です。今後ITをどのように企業活動に生かし、DXを遂げるのかについての全社戦略に基づくことで、中心的に取り組むべきコア業務をトップダウン式に考えることが可能になります。

それに対し、自社のITリソースから考えるのは、ボトムアップ式のコア業務・ノンコア業務の区別法です。業務を“丸投げ”ではなく、適切にガバナンスを利かせながらアウトソースするには、その業務を外注する意味や目的について理解した人材が欠かせません。また、その人材をサポートする仕組みとして、マニュアル作成による定型化や自動化・コミュニケーションなどに貢献するツールの導入、引継ぎ体制の確立などがあります。

結果として、IT戦略の策定や要求定義、システム企画などはコア業務に、ヘルプデスクやPCキッティング、ネットワークの運用・保守などはノンコア業務に分類されることが多いと考えられますが、企業の戦略や人材リソースによってコア・ノンコアは左右されるため、業務の種類ごとではなく、個別にその業務の性質を判断することをおすすめします。

「コア業務だけに取り掛かれれば理想的だが、これまで積み上げられてきた業務体制の関係上そうもいかない」「ノンコア業務の定型化やマニュアル化には時間がかかる」こうした企業ごとの事情がある中で、たとえコア・ノンコアに業務が分類できても一律に扱いを変えることは難しいでしょう。

そこで長期的なプログラムを策定するためにも「全社戦略」と「自社のITリソース」について明らかにしておくことが効果的なのです。

ノンコア業務を減らす手段は多様化している

社内のノンコア業務を減らすにあたって、現代では従来型の外注以外にもさまざまな選択肢があることを押さえておくことも重要です。

例えばRPAやITSMツール、ChatGPTなどの生成AIを用いた自動化は現在可能性を広げている分野の一つです。『平成30年度 年次経済財政報告』(内閣府)には、IT技術の普及は定型的な業務を減らし、非定型的な業務を増やすことに貢献すること、日本はアメリカやドイツに比べ定型業務の割合が大きいことが指摘されており、ICT利用の進んだ現在はその代替が加速する只中にあると考えられます。

また、業務のアウトソーシング形態もその内容によってBPO、ITO、KPOなど分類できることは押さえておきましょう。IT部門だけでなくバックオフィス業務全般を外部化するBPOや、ノンコア業務の委託ではなく、データ分析など知識の必要なプロセスを外注するイメージのKPOが、自社の全社戦略に適合している場合もあります。

選択肢が増えたこと、今後も増え続けることを前提に、企業としてのビジョンやミッションといった軸に従ってベストな選択肢を探り続けましょう。

コア・ノンコアの定義は時代とともに変化する

DX時代に考え方をアップデートして取り組むべき情シスのコア業務・ノンコア業務というテーマについて取り扱ってまいりました。かつてコストセンターと呼ばれていたIT部門がプロフィットセンターの中心へと変化したことが象徴している通り、コア・ノンコアの定義も市場や産業の変化とともに変わっていくものです。その変化へ対応できる能力を維持しながらそれぞれの方向性を目指すことが、今企業には求められています。

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