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HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション)がデジタル活用で重要と言われる理由

レンテックインサイト編集部

HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション)がデジタル活用で重要と言われる理由

ChatGPTをはじめとする生成AIに大きな注目が集まった2023年。すでに業務でAIを活用し始めているという方や、利用に向けてリサーチを始めているという方も少なくないでしょう。AIを業務で実際に“活用する”というシーンにおいて、考えなければならないのが人間とコンピューターの相互作用(インタラクション)。その研究を行うのがHCI(Human-Computer Interaction:ヒューマンコンピューターインタラクション)という学問領域です。

本記事では、HCIについて分かりやすくご紹介した上で、その注目すべき理由や関連用語についても解説します。

HCI(ヒューマンコンピューターインタラクション)は「人間とコンピューターの相互作用」

HCIは、「人間とコンピューターの相互作用」と翻訳されます。コンピューターは入力・出力・記憶・制御・演算という5つの基本機能によって構成されており、現在のAIの進化の一因は、演算機能の飛躍的向上にあります。

そして見逃してはならないのがChatGPTや画像生成AIなど現在注目を集めるAIサービスの多くは、テキストや音声の入力に対し答えを返してくれる対話型AIであり、UI(ユーザーの使い勝手)やUX(ユーザーの使ったときの体験)の観点で優れていることが活用を促進するためのカギとなっているということです。

すなわち、コンピューターの基本機能における入力・出力にあたる部分が重要であり、HCIはその領域においてより利便性を高める方法や新たな可能性について考える学問分野です。情報技術に注目が高まる中で、HCIに関する論文や研究発表も数多く公開されています。例えばものづくりの分野でユーザーにとってのUI/UXを考えるにあたって、HCIにまつわる論文はヒントとなってくれるかもしれません。HCIは製品やシステムの開発においてユーザーの視点を中心に置く「人間中心設計」の実践としても参考にしたいところです。

UI/UXについてより詳しくは『「UI/UX」「デザイン経営」とは?これからのものづくりにデザインが重要と言われるのはなぜ? 』を、人間中心設計についてより詳しくは『人間中心設計とは何か?プロセスや日米の乖離を押さえよう 』をぜひご一読ください。

HCIの本質と企業が注目すべき理由

HCIが単なるUI・UXの向上と異なるのは、それが従来の人間とコンピューターの間にはみられなかった新しい相互作用の発見を目的としているためです。

例えば、我々は現在手でキーボードやタッチパネルを使って、あるいは言葉で話して音声で入力することを基本としていますが、視線や表情、手首の神経などを使い、手や音を介さずに入力する方法もHCIにおいて活発に研究されています。また反対に、これまで視覚と聴覚の比重が大きかった情報の出力方法を、触覚や味覚などほかの五感へ広げたり、聴覚と視覚へのより多様なアプローチ方法を探ったりするのもHCIの領域です。

タッチパネルが普及し、音声入力の精度もどんどん高まっているように、コンピューターと人間の対話方法にはこれまでも変化が生じてきました。その流れは綿々とつづき、我々のイメージする「コンピューター」のあり方や当たり前も変化するということはデジタル活用において意外と見落とされがちな点です。DX(デジタルトランスフォーメーション)はデジタル技術によって企業やビジネスのあり方そのものが変化することを意味しますが、そのデジタル技術自体も日進月歩で進化していくということは忘れてはなりません。

せっかく大きなコストや手間をかけてレガシーシステムを刷新しても、新たなシステムが変化に取り残されてしまっては、すぐにこれまでと同様の問題が発生することになります。だからこそ、世の中の将来像を予測することと、それに合わせて変化を続けられる体制を整えることが今、企業に求められているのです。

HCIに着目することは、未来を予測し変化に備えるための一手段となるはずです。

HCIの関連用語、「HRI」と「HAI」とは?

HCIの関連用語として押さえておきたいのが、「HRI」と「HAI」です。

HRIは「Human-Robot Interaction」──すなわち、人とロボットの相互作用を意味します。ロボットに指示を与える、ロボットとともに作業する、ロボットから作業を引き継ぐなど、人とロボットが接する際の関わり方をHCI同様に研究します。

HAIは「Human-Agent Interaction(人とエージェントの相互作用)」を意味し、情報科学の分野でエージェントと呼ばれる自ら判断・行動する主体(AIやロボット)と人との関わり方を研究する学問です。

また、HCIやHRI、HAIではコンピューターやロボット、エージェントを介した人と人の相互作用も研究対象となります。

AI発展において、HAIへの注目は右肩上がりに高まっています。今後商用利用可能な生成AIをカスタマイズしたサービスを自社で開発したり、あるいは利用したりする企業は増加するでしょう。そこで競争力を獲得できるかどうかに、HAIの観点は大きくかかわってくるはずです。

多様な人材のテクノロジー活用にHCI、HRI、HAIは貢献する

「人間とコンピューターの相互作用」を意味するHCI。そのHCIに企業が注目すべき理由、関連用語などについて解説してまいりました。コンピューターはもちろん、AIやロボットも少子高齢化の進む多くの先進国において労働生産性を高めるための手段として今後存在感を発揮していくと予想され、そこで十分に効果を得るためには多様な人材に対応した操作性が求められます。HCI、HRI、あるいはHAIはそこで大きな役割を果たすことになるでしょう。

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