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ITシステムのモダナイゼーションとマイグレーション、その違いは?

レンテックインサイト編集部

IT Insight ITシステムのモダナイゼーションとマイグレーション、その違いは?

DXの遅れが引き起こす「2025年の崖」(詳しくはこちら)を回避するために、旧弊化した既存システム・構造(レガシーシステム)の刷新が求められています。実際に、レガシーシステムを刷新するとはどういうことなのでしょうか。
それを調べ始めた初期段階で登場するキーワードが「モダナイゼーション/マイグレーション」です。
本記事では、それらの違いや実行方法など基礎知識をレガシー刷新につなげやすい形で解説します。

モダナイゼーションとマイグレーションの違いは“既存システムを活用しながら刷新するか完全に置き換えるか”

モダナイゼーション(modernization)は近代化、マイグレーション(migration)は移行を指す単語です。
IT分野で用いられるモダナイゼーションとマイグレーションの違いは、“既存システムを活用しながら刷新するか完全に置き換えるか”にあります。家屋で例えると、耐震工事などを施し住みよい状態にリフォームするのがモダナイゼーション、イチから作り直すのがマイグレーション(レガシーマイグレーション)といえるでしょう。
レガシーシステムの刷新においてはいずれか一方を選ばなければならないわけではなく、「システム全体のモダナイゼーションの手段として、オンプレミスからクラウドへシステムをマイグレーションする」といったケースもよくあります。

レガシー刷新に向けて行われている取り組みは全てモダナイゼーションであり、その中でどの程度の割合でマイグレーションを行うのか、有効活用できる既存システムはどの程度かを考えるのが初動で求められるポイントです。

モダナイゼーションの実行方法5パターン

ここで、モダナイゼーションの代表的な方法について見ていきましょう。

【1】BPR(Business Process Re-engineering)
ITシステムのモダナイゼーションを超え、既存の組織構造や業務フローについても見直しを行うこと。ITの領域で一般に考えられるモダナイゼーションの範疇からは逸脱していますが、DXの本質(デジタルを用いたビジネスの変革)に即した効果が期待できます。DXの本質について詳しくは、こちらの記事をご覧ください。

【2】リビルド/リプレース
現行システムをベースとしてあるべきシステムを再定義し、イチから設計・開発を行うのがリビルド。同様に新たなシステムに丸ごと取り換えてしまうのがリプレースです。両者は似た概念ではありますが、どちらかといえばリビルドはスクラッチ開発を、リプレースはパッケージへの置き換えをイメージされる傾向にあります。

【3】リライト/リファクタリング
COBOLなどの言語で構築されたシステムを最新の言語で記述しなおす形でのモダナイゼーションです。機能の追加や効率アップ、セキュリティ向上などが期待できます。また、若手エンジニアは新しい言語から学び始めるため、旧来の言語で構築されたシステムを扱える人材が不足することを見越し、リライトに取り組む企業も多いです。
一方、リファクタリングは、言語や機能はそのままに、既存のプログラムの構造見直しや調整を行うことを指します。

【4】リホスト
言語やシステムの構造はそのままに、新しいプラットフォーム/ハードウエアに移行することを意味します。既存のソフトウエアやデータはほぼそのまま維持されるため、従来の強みや使用感をそのまま維持しながら、機能追加やセキュリティ向上を図りたい場合に取られることが多い手法です。

【5】リインターフェース/API連携
新たなブラウザやスマホなどのデバイスに対応させるため、システム間をつなぐソフトウエア(ミドルウエア)を活用し既存システムのインターフェースを改善するのがリインターフェースです。ソフトウエアやWebサービスをつなぐAPI連携もこれに関連します。

以上が、代表的なモダナイゼーションの手法です。このうち、リビルド/リプレース、リライト、リホストなどはマイグレーションの一環といえるでしょう。紹介した順にDXの達成に大きなインパクトを及ぼすことが期待され、その代わりにコストやプロジェクト失敗のリスクが高まる傾向にあります。

既存システムの強み/弱みを切り分け、予算や自社の業務内容を踏まえて適切な手法の選択、組み合わせを策定することが、レガシー刷新プロジェクトの成功を左右します。

モダナイゼーション失敗を回避するためのポイント

モダナイゼーション/マイグレーションの実行を足止めしてきたのは、かえってシステムが使いにくくなる、コストがかかりすぎてしまう、といったリスクの存在です。
それらを回避するために重要なのが「既存システムに対する理解」と「バランスの良いモダナイゼーション計画策定」です。

そこで重視するべきなのが、以下の二つの“見えていない課題”を探し出す姿勢です。

  1. ブラックボックス化したシステム構成
  2. ITテクノロジーの不備による機会損失

ドキュメントの不整備やそのときどきの業務への最適化により、レガシーシステムは複雑化・ブラックボックス化していきます。モダナイゼーション/マイグレーションはその解消手法としても注目を集めますが、そもそもどこに見えない問題があるのかを明らかにしないことには、どの手法にどのくらいのコストをかけて取り組めばよいかもわかりません。あえて1と2は切り分け、既存システムをそのまま再現できる体制を構築した上でさらなる機能を追加するのが、堅実にモダナイゼーション計画を実行することに寄与するでしょう。

両者の違いを踏まえてベストなレガシー刷新を

2025年の壁回避にあたって押さえておくべき、モダナイゼーションとマイグレーションの違いや実行方法についてご紹介してまいりました。
このように用語を用いてレガシー刷新のレベル感を明確にすることで、自社の理想を実現するにあたってどの方法がベストなのか正確に検討しやすくなるはずです。
似通った言葉ですが、意識的に区別して使用することをおすすめします。

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