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DXの本当の意味 デジタイゼーションとの違いや事例、日本企業に求められる理由とは

レンテックインサイト編集部

製造業においてDX(デジタルトランスフォーメーション)がキーワードとして用いられ始めてからずいぶんになります。 「DXに本気で取り組まなければならない」「DXこそが生き残りのカギだ」といった言葉を見聞きすることが増えました。
この記事ではDXとは何かの基本のきについて“わかりやすく”“具体的に”ご紹介します。
あまりに各所で耳にし過ぎて“DX疲れ”を感じている方も、あらためて基本に立ち返り考えをリセットするためにご一読ください。

DXとは“デジタル技術による変革で新しい価値を生み出す世の中・組織になること”

 DXとは“デジタル技術による変革で新しい価値を生み出す世の中・組織になること”です。 DXのDはDigital(デジタル)、XはTransformation(変革)を意味します。英語の「Trans-」は「○○を超える」「○○を横切る」という意味を持ち「X」と略されます。 デジタルでこれまでの世の中・組織から一線を画すというニュアンスがそこには込められています。
これが、デジタル技術を用いた既存ビジネスの効率化や高付加価値化を意味するデジタイゼーション(Digitization)、デジタル技術による既存のビジネスモデル・顧客体験の変革を意味するデジタライゼーション(Digitalization)とDXとの違いです。
デジタイゼーションやデジタライゼーションは手段、DXは結果と考えてみると分かりやすいかもしれません。 行政や企業がDXに取り組む場合、まずはデジタイゼーションやデジタライゼーションに目を向けることが重要です。

日本のDX推進の旗振り役を担う経済産業省はDXの定義について、以下のIDC Japan株式会社の定義を引用しています。

企業が外部エコシステム(顧客、市場)の破壊的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、 第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、 新しい製品やサービス、新しいビジネス・モデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること

引用元:DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ ┃デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会、3ページ

ここから、企業のDXにおいては「新たな価値の創出」に加え、その結果としての「競争上の優位性の確立」もキーワードとなることが見て取れます。また、変化は外部・内部の両面から生じるということも頭に入れておきましょう。

ちなみにDXという言葉は2004年にウメオ大学(スウェーデン)のエリック・ストルターマン教授が発表した論文『information technology and the good life 』で初めて世に出ました。意外と歴史の長い言葉なのです。

DXのイメージを具体化するための特徴的な先進事例三つ

 それではDXの取り組み事例を知って、よりイメージを具体化していきましょう。

DXの一つの理想像:Uber

まずはDXの理想像として配車サービスUberの事例をご紹介します。
UberがDXで変革したのは配車サービス市場です。ドライバーと乗客の相互評価の仕組みを実現することで一般車による送迎が気軽に行える社会を実現し、それまでのタクシーしか選択肢がない状況を大きく変えました。デジタルの力で新しい価値を生み出し、大きな競争上の優位性を発揮した理想的な事例といえるでしょう。

日本ではいわゆる白タク行為(一般ドライバーによる自家用車を用いた運送サービス)を禁止する法律によりUberの一般車配車サービスは規制されていますが、デリバリーサービスをDXで変革したUber Eatsが根付きつつあるのは皆さんご存知の通りです。

大企業の製造業DX:シーメンス

Uberは新興企業がDXによって市場を大きく変革した事例でした。
しかし、多くの方にとってより身近なのは自社のビジネスモデルや文化を変革するDXでしょう。
インダストリー4.0を提唱し、製造業DX先進国として知られるドイツ。 同国の総合テクノロジー企業シーメンスは成長戦略「Vision2020」に向けて大胆に組織構造を再編し、デジタル事業への投資を強化することで大きな成長を遂げました。 従来事業基盤としていたオートメーション領域に加え、IoTプラットフォーム「MindSphere」などソフト領域を伸ばしたことがその背景にあります。
大企業がDXに積極的に取り組み、成長につなげた好例といえるでしょう。

中小企業の製造業DX:旭鉄工

日本の中小企業、例えば町工場でもDXを遂げることは可能です。
中小企業がIoTを上手に活用し成長を遂げた事例として有名な旭鉄工株式会社は、ラインの稼働状況を記録するIoTシステムを自作するところから工場DXを始めたといいます。 その取り組みは最終的に、年間1億円の労務費削減や生産ライン遠隔モニタリングサービスという新規事業の創出につながりました。
DXはあくまで目標と考えできることから一歩一歩取り組めば、中小企業でもDXを成功させることは十分可能です。

なぜ日本企業はDXに本気で取り組まなければならないのか

 先に引用した経済産業省の資料のタイトルに「2025年の崖」という言葉が含まれています。
これは、2025年までにDX実現を妨げる「複雑化・老朽化・ブラックボックス化」した既存システムが刷新されなかった場合に立ちはだかる苦境を比喩的に表現する言葉です。

もし2025年の崖を回避することが出来なければDXが達成できずデジタル競争の敗者となるリスクが高まる上、ITシステムの運用・保守の担い手の枯渇によりセキュリティ問題や業務基盤そのものの維持が困難になることが予測されています。その結果、2025年以降に予測される経済損失は最大12兆円/年にものぼると言われています。
同資料によると日本企業は世界平均よりも「ビジョンと戦略の不足」「時間と費用の制約」がデジタル変革の実現における課題としてあげられる傾向にあるとのこと。反対に「技術的な制約」「法律および規制」は少ない傾向にあるそうです(※)。

DXレポート ~ITシステム「2025年の崖」克服とDXの本格的な展開~ ┃デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会、5ページ参照

だからこそ、企業が“本気で”DXに取り組み時間と費用を投資することが求められる状況にあるといえます。

DXの実現手段は企業のアイデア次第

DXの概念や事例、日本企業が取り組むべき理由についてご説明しました。
DXはあくまで手段ではなく結果です。そのためにとれる手段は企業のアイデアと投資によって大きく広がります。
2025年の崖を回避するためにも、自社ができることに明日から取り組んでみてください。

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