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3Dプリンターを最大限に生かすための「DfAM」入門

レンテックインサイト編集部

ものづくりのスピードを飛躍的に加速させるアディティブマニュファクチャリング(AM)。レンテックインサイトの記事『ラピッドプロトタイピング/アディティブマニュファクチャリングが製造業にもたらすもの』で取り上げられている通り、「リードタイムの大幅な短縮」や「多品種少量生産に適している」などさまざまな可能性を持ち、産学官民の垣根を超えて研究が進められています。

そんなアディティブマニュファクチャリングを実践する上で押さえたいのが「DfAM」。日本でも徐々に浸透の兆しが見られるこの概念について、本記事では分かりやすくご説明します。

「DfAM」とは“アディティブマニュファクチャリングのための設計”

「DfAM(ディーファム)」とは、「Design for Additive Manufacturing(アディティブマニュファクチャリングのための設計)」のことです。
3Dモデルのデータを基に、一層ずつ樹脂や金属を重ねることで造形を行う積層造形法(付加製造)を指しています。
部品を加工し、組み合わせて製造するという従来の大量生産と全く違ったものづくりの可能性が開かれると注目を集めていますが、それはすなわち、得意な領域・不得意な領域にも違いがあるということです。

例えば、造形スピードにおいては、従来の量産品を作成するような工作機械に3Dプリンターは追い付いていません。その分、複雑な形状を自由度高く設計できるという点で、大きく注目を集めているというわけです。そのため、アディティブマニュファクチャリングは多品種少量生産に適していると言われます。

この“複雑で自由度の高い設計”という観点が、DfAMにおいては非常に重要です。例えば、従来であれば数十の部品を組み合わせて構成していた製品を一体構造とする、あるいは2、3のパーツの組み合わせで生産することも、積層造形法では可能になるかもしれません。ほかにも接合面をなくすことで強度を高めたり、製造の効率を高めたりすることが考えられます。

また、ラティス構造・ポーラス構造など、複雑な構造を実現できるのもアディティブマニュファクチャリングの特性です。軽量化と強度の両立や通気性、弾力性の向上など、3Dプリンターならではの構造によって、得られるメリットはさまざまです。

しかし、ラティス構造・ポーラス構造といった、複雑な構造を導入して強度を保つためには一定の造形ルールをクリアする必要があるため、設計時点でその点を織り込んでおくことが求められます。

このように、アディティブマニュファクチャリングの特性を理解して、設計・モデリング時点で折り込んでおくのがDfAMの基本です。

「DfAM」で求められる従来の製造方式と異なる発想とは?

DfAMの具体的な実践方法について見ていきましょう。

まず押さえておきたいのは、シート積層(SHL)、材料押出(MEX)、液槽光重合(VPP)、粉末床溶融結合(PBF)、結合剤噴射(BJT)、材料噴射(MJT)、指向性エネルギー堆積(DED)、さらには材料押出(MEX)の中でも、FDM、APF、CFFなど多くの種別が存在し、付加製造の方式ごとに、適した設計や材料は異なるということです。
一般によく知られたFDM以外の選択肢もあるため、特性をよく理解した上で検討する必要があります。

その上で、DfAM全般に求められるのが、「射出成型法や機械加工と同じ部品を3Dプリンターで置き換える」のとは別の発想を持つことです。従来の製造方式の基本をなすのは、大きな物質から余計な部分を削って、必要な形状の部品を切り出す、という考え方です。それが積層造形法においては大きな制約となります。

そこで、材料を積み重ねて形状を「生み出す」という特性からスタートしてDfAMを始める必要があります。こうして文字にすると当然のことですが、従来のものを「置き換える」という思考に人はついついとらわれがちなものです。

個別の積層方式を念頭に置くことによって、強度や積層時間に大きく関わる積層方向や、大きなパーツを生成するために切り分け接合、部品の統合など、具体的な検討ができるようになります。

ジェネレーティブデザイン、トポロジー最適化はDfAMの一種

3Dプリンターならではの可能性であるジェネレーティブデザインやトポロジー最適化もDfAMを支援するテクノロジーの一種とされることもあります(トポロジー最適化・ジェネレーティブデザインの違いや特性について詳しくは『ジェネレーティブデザインとは? 三つのメリットと設計の未来像を考える』をご参照ください)。

ジェネレーティブデザインはコンピュータによる設計を、トポロジー最適化はコンピュータによる設計の最適化と提案を指し、設計の内容ではなく、設計自体をコンピュータに補助してもらうという発想です。そして、それゆえに従来の製造方式にとらわれがちな人間の発想では考えもつかないDfAMの思想にあったアイデアが得られると期待されるのです。

また、開発リードタイム短縮や精度向上にメリットが高いと目される、「シミュレーション駆動型設計」とDfAMとの相性も良く、これらアディティブマニュファクチャリングに貢献するテクノロジーはすなわち、DfAMを支援するテクノロジーと捉えることも可能でしょう。

DfAMは、3Dプリンターによるイノベーションの源泉になり得る

積層造形法の特性を生かしたものづくりにおいて不可欠といえる「DfAM」について、その意味や実践のポイント、ジェネレーティブデザインやトポロジー最適化との関係について解説してまいりました。人間の手の届かない内部構造の色彩コントロールなど、本文でご紹介したほかにもDfAMについての研究は進んでいます。
3Dプリンターをイノベーションにつなげる源泉としてDfAMを取り入れていきましょう。

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