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情シスに求められる「ベンダーコントロール」の基本

レンテックインサイト編集部

情シスに求められる「ベンダーコントロール」の基本

DXを達成し、デジタル時代に合わせた競争力を獲得するにあたって不可欠なプロセスのうち、ツールの導入・刷新や事業戦略の策定、IT人材の育成などに比べ見落とされがちな項目に「ユーザー企業とベンダー企業の関係の変革」があります。 “ベンダーに任せておけば大丈夫”。このような考えが、日本企業のデジタル変革を足止めする原因となりつづけてきたというレポートを皆さんはご存じでしょうか。

本記事では、ユーザー企業の情報システム担当者が知っておきたいこれからのベンダーとの関係性と、そこで取り組むべき「ベンダーコントロールの基本」について解説します。

経済産業省の『DXレポート2』から分かる、ベンダーコントロールが求められる理由

“顧客や社会の課題を正確にとらえるために、ベンダー企業はユーザー企業とDXを一体的に推進する共創的パートナーとなっていくことが求められる。”

令和2年12月にリリースされた『DXレポート2(中間とりまとめ)』(経済産業省)15ページには上記の一文が記述されています。その背景にあるのが、それまでのユーザーとベンダーが委託側・受託側という立場で分断され、既存システムの安定的な維持・運営が是とされてきた環境が日本のDXを阻んできたという分析です。

また、令和3年8月発表の『DXレポート2.1(DXレポート2追補版)』で指摘されているのが下記のデジタル産業を目指す企業の三つのジレンマです。

  • 後塵を拝するまで低位安定に甘んじてしまう「危機感のジレンマ」
  • 技術が陳腐化するスピードが速く、IT人材育成が追いつかない「人材育成のジレンマ」
  • ユーザー企業のデジタルケイパビリティが高まることが、ベンダーの利益に対してマイナスに働く「ビジネスのジレンマ」

これらを解消し、Society 5.0型のビジネスを創造していくためには、ベンダー企業が事業構造を変革するだけでなく、ユーザー企業がIT開発・活用に対し中心的な役割として深くコミットしていくことが求められます。

そこで今「ベンダーコントロール」の重要性が高まっているのです。

Society 5.0について詳しくは『Society 5.0とは? 製造業への影響、アフターコロナ時代の方向性を解説』をぜひご一読ください。

DX時代の情シスに求められる「ベンダーコントロール」とは

ベンダーコントロ―ルとは、ユーザー企業のIT人材がベンダー企業の選定から、要求定義、進捗管理、テスト、研修に至るまで、幅広い業務に窓口として携わること、およびその役割を意味します。 いわば、システム開発やクラウド運用におけるユーザー企業側の代表者であり、IT全般と社内システムに関する知識、ヒアリングや要望を伝えるためのコミュニケーションスキル、ビジネスを前に進めるためのリーダーシップなどさまざまな能力が必要です。特にクラウド時代、セキュリティやコンプライアンス、サブスクリプションなど多様化した契約形態に対応しながら適切なベンダーコントロールに取り組むことが求められます。

このような高度化したベンダーコントロールの要望に応えるべく、ベンダーコントロール(ベンダーマネジメント)に特化したチームである「VMO(Vendor Management Office)」が企業内に設置される事例も増加しています。VMOを設置するのが難しい場合はまず、ベンダーコントロール(ベンダーマネージャー)という役割を社内に設定し、その役割や求められるスキルセットを定義するところから始めましょう。

そこで対応しきれない部分を明らかにすることで、アウトソースする、法務部門など社内のスキルセットを持った人材の助けを借りるといった別の選択肢も浮上してくるはずです。

具体的なベンダーコントロールの業務と実践のポイント

ベンダーコントロールが行う業務は下記の通り、多岐にわたります。

  • ベンダーの選定
  • 要求定義
  • RFI・RFPの作成
  • ベンダーとの交渉・契約
  • ベンダーあるいは社内とのコミュニケーション・折衝
  • パフォーマンスや進捗の評価と管理
  • ベンダーとの関係の評価と管理
  • 各種リスクへの対応
  • ベンダー戦略の策定と見直し

このように多岐にわたる業務に対応するには、やはりVMOを組織することが効果的と考えられます。ただし、VMOが社内外において交渉力を発揮できるような経営陣の後押しや、その成果を測るKGI・KPIの定義がなければ、効力が十分に発揮されず定着しない可能性があることは理解しておきましょう。

ベンダーコントロールの人員が限られる、あるいはVMOの導入が初めてという場合は、まずはベンダーコントロールの目標を可能な範囲で設定することから始めましょう。最初から網羅的にすべてのベンダーをコントロールしようとすれば無理が生じ、結果として「これまで通りすべて任せてしまった方がよい」という結論に陥りかねません。まずは優先度の高いベンダーに向き合い、ベンダーコントロールの型をつくることで、徐々に成功の輪を広げていくことをおすすめします。

ベンダー企業は外注先から“共創”に取り組むパートナーへ

本記事では、ユーザー企業の情シスに求められる「ベンダーコントロール」について解説しました。DX時代においてベンダーはIT業務の外注先ではなく、ともに共創に取り組むパートナーと位置付けられます。その前提として、レガシー文化から抜け出し、DevOps文化を取り入れることは不可欠でしょう。DevOpsについて詳しくは『DevOpsで大切なこととは?』をぜひご参照ください。

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