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オンプレミス回帰の中で高まるハイブリッドクラウドの重要性

レンテックインサイト編集部

オンプレミス回帰の中で高まるハイブリッドクラウドの重要性

オンプレミスとクラウド、事業のシステム基盤としてどちらを選べばよいのでしょうか。

総務省『令和5年版 情報通信白書 』によると、クラウドサービスを利用している企業の割合は2022年時点で72.2%に達しており、2018年から13.5ポイント増と、クラウド利用はもはや常識となりつつあるといえます。一方で、2019年ごろより欧米を中心に「オンプレミス回帰」と呼ばれる流れが起こっているのもまた事実です。

いったい、オンプレミス回帰はなぜ起こっているのでしょうか? また、クラウドか、オンプレミスかという二者択一以外の選択肢はないのでしょうか? 本記事では、オンプレミス回帰、ハイブリッドクラウドという関連する二つの潮流をご紹介します。

クラウドの種類やオンプレミス、クラウドの違いについて詳しくは『いまさら聞けないクラウドの基本 パッケージ・オンプレミス・SaaS・ASP……それぞれの違いとは? 』をご参照ください。

「オンプレミス回帰」が起こっている理由は大きく二つ存在する

オンプレミス回帰とは、その名の通り、IT環境をクラウドからオンプレミスに戻すこと、およびその潮流のことを意味します。また、厳密にクラウドからオンプレミスに移行する場合だけでなく、パブリッククラウドからプライベートクラウドへと、クラウドの利用形態をよりオンプレミス寄りにする場合も該当します。

オンプレミス回帰が起こっている理由には、大きく分けて以下の二つが存在します。

  1. コスト・運用に関する理由
  2. セキュリティ・カスタマイズ性に関する理由

一つ目の理由に関しては、クラウドの特性が企業の使い方にそぐわなかったというケースが当てはまります。多くのクラウドサービスはプランと利用量に応じた従量課金制で利用することになります。その分、初期費用が抑えられ、保守・運用にかかる人的コストの削減にもつながることが期待されますが、予想を超えた利用規模拡大などにより思ってもみない利用料金が発生し、“クラウドは高い”というイメージを持たれる場合もあります。そこで、初期費用はクラウドよりかかるものの、その後発生する費用については手綱を握りやすいオンプレミスに回帰する企業が生まれているのです。

二つ目の理由は、貴重な資産であり、流出することが自社の社会的信用の大幅な毀損につながるデータを自社で確保しておきたいという企業の意向によるものです。いまや、体制の整っていない企業よりもクラウドサービスのセキュリティ対策は信頼がおけるものだという認識は広がっています。とはいえ、100%情報セキュリティ環境をカスタマイズし、信頼性を担保するにはやはり自社のオンプレミス環境にデータを置いておくことが有効でもあります。また、セキュリティ面以外にも、クラウドではどうしても制限のある機器の選定自由度やシステム連携などのカスタマイズ性を求めてのオンプレミス回帰もあるでしょう。

上記のほかにも、自社内にオンプレミスの知見を残しておきたい、障害対応やパフォーマンスの安定性が不安、といった考えもオンプレミス回帰に影響する場合があります。

オンプレミス回帰=“時代への逆行・クラウドの否定”ではない

オンプレミス回帰をすることは、必ずしも企業にとって時代への逆行というわけではありません。確かに、コストの平準化効果、導入の容易さ、運用・保守にかかる工数・手間の削減、事業規模に合わせた迅速なスケールアップ/スケールアウトなどクラウドのメリットはさまざまに挙げられます。 しかし、そのメリットが発揮されるかどうかは、それぞれの利用形態やリソースに依存しており、場合によってはオンプレミスのほうが合理的なケースも確かに存在するからです。

例えば、オンプレミス回帰を実施した企業として有名なオンラインストレージサービス「Dropbox」では、自社サービスの成長に伴い利用するデータ量が大きく跳ね上がることが確実視されており、かつ社内にオンプレミスのシステムを構築・運用できる人材リソースが確保できたタイミングでAWS(Amazon Web Services)から自社ストレージにデータを移行したといいます。

十分に事業が拡大し、さらに今後の成長曲線も具体的に描けた段階で、満を持してオンプレミスに回帰し、自社管理によるコストの最適化とそれまで獲得したユーザーデータを利用したカスタマイズに取り組むのは、クラウド・オンプレミス双方の特性を生かした典型例といえるでしょう。

「オンプレミス回帰」はあくまでクラウドを経験した上でオンプレミスのメリットを得るために行う施策であり、クラウドが現代の企業にとって有効であることを否定する概念ではないことは忘れてはなりません。

そこで、クラウド・オンプレミス双方のメリットを得ることができる「ハイブリッドクラウド」が有力な選択肢となっています。

オンプレミス回帰の中で高まるハイブリッドクラウドの重要性 挿絵

ハイブリッドクラウドとは? 実現にあたって企業には何が問われるのか

ハイブリッドクラウドとは、クラウドとオンプレミスを組み合わせて利用し、両者のメリットを享受することを目指すクラウドの利用形態です。前述の「Dropbox」もハイブリッドクラウドを推進しており、オンプレミス回帰の帰結として多くの企業が目指すところに「ハイブリッドクラウド」があります。

パブリッククラウドのアジリティや運用・保守コストの削減といったメリットは享受しつつ、オンプレミスのカスタマイズ性も適材適所で組み合わせるハイブリッドクラウドは誰にとっても合理的に感じられる選択肢ですが、ここで問題となるのがクラウド・オンプレミス両者の特性を理解し、適切なシステム環境を構築・運用できるかということです。

クラウドの特性を理解し自社にとって理想的な利用形態を探るためには、機能テストやユーザーテスト、障害復旧などさまざまなケースを想定した入念なシステムテスト、あるいは実際に導入する中で得た知見が欠かせません。また、オンプレミスにおいては拡張性や保守性を高めるための仮想化やサーバー運用・管理のノウハウが求められます。さらに、ハイブリッドクラウドでは両者を統合管理するためのシステムや体制の構築も必要となるでしょう。

クラウド移行、あるいはオンプレミス回帰の先にハイブリッドクラウドという可能性があることを見据えて自社のITインフラに関するケイパビリティを増強する視点は今すべての企業に求められています。

オンプレミス・クラウド両方の特性を把握した上で変化前提・長期的な目線での環境構築を

本記事では、オンプレミス回帰の潮流が起こっている理由と今後の企業に求められるクラウド環境のあり方について取り扱ってまいりました。クラウドや仮想化技術の発展により柔軟性が高まったからこそ、オンプレミス、クラウドの両方の特性を把握した上でベストな環境を構築することが求められる状況にあります。自社にとって何がベストかは変化することを前提に、長期的な目線で複数の可能性を検討することにトライしてみてください。

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