クラウドサービスの利用は年々一般化しています。総務省が令和2年に実施した通信利用動向調査では産業全体の64.2%、製造業の62.0%がクラウドサービスを少なくとも業務の一部で利用していると回答しました。
とはいえそれは、4割近い企業がクラウドサービスを利用したことがないということの裏返しでもあります。また、クラウドサービスをより展開したいがまだまだ不明な点が多く、プロジェクトを進められていないという企業もあるでしょう。
本記事では、製造業の利用例やSaaS、ASPとの違いを含めて「クラウド」についてわかりやすく解説いたします!
クラウドとは、インターネット経由で呼び出して利用できるITサービスを指します。その種類は下記の通り、多岐に渡ります。
1997年に南カリフォルニア大学のラムナト・チェラッパ教授によって提唱されたクラウド・コンピューティング。通信の高速・安定化により技術的に可能になるとともに、社内でシステム環境を構築・運用する手間・コストを払うことなくシステムを、必要なときに必要な分だけ利用できるというメリットが重宝され、現在のようにシェアを広げました。今後、5Gインフラが広がるにつれて、よりその可能性は広がるでしょう。
前述の総務省による調査では、クラウドサービスを利用している理由としても最も多かったのは「資産・保守体制を社内に持つ必要がないから」。次に「場所・機器を選ばずに利用できるから」「安定運用・可用性が高くなるから(アベイラビリティ)」が続きました。
反対に利用しない理由では「必要がない」が最も多く、「情報漏洩などセキュリティに不安がある」「メリットが分からない、判断できない」が続きます。情報不足により二の足を踏んでいる企業はやはり少なくないようです。
また、災害や停電などの防災対策などアベイラビリティが期待されながら、セキュリティや安定性に不安が持たれているというある種相反する感情が向けられているというのもポイントです。クラウドをバックアップとして活用するとともに、社内にも重要なデータは残しておくといったいいと小取の活用法を模索することが重要でしょう。
クラウドと比較されることの多い概念がパッケージ・オンプレミス。それぞれ以下のように説明することができます。
パッケージはその名の通りすでに出来上がっているパッケージを導入しすること、オンプレミスはパッケージを包括しつつ、スクラッチ開発(自社開発)も含む概念と考えていただけると良いでしょう。
パッケージは導入コストや工数を押さえやすい代わりにカスタマイズ性が低く、自社開発は導入・運用・保守のコストが大きくなる代わりにカスタマイズ性が高いという違いがあります。
クラウドはどちらかといえばパッケージに近く、カスタマイズ性が低い代わりに導入・運用・保守の手間がほとんどかかりません。
もう一つ、クラウドに関連し、混同されやすいワードとしてSaaS、ASPが挙げられます。それぞれの定義は以下の通り。
このように同じ対象のどの部分を切り取るかの違いであり、その中でもより包括的な用語としてクラウドが使われているのが現状です。またASP全盛の時代はやや古く、複数のユーザーの利用が可能になるなどより発展したのがSaaSと考えると良いでしょう。
「〇aaS」という形の用語は「IaaS(Infrastructure as a Service:サービスとしてのインフラ)」「PaaS(Platform as a Service:サービスとしてのプラットフォーム)」等があり、それらの違いはクラウドを通して提供するサービスの範囲です。その中でもプラットフォーム、インフラ、アプリケーションのすべてをサービスとして提供するSaaSが最も“クラウド度”が高く、また現在主流となっています。
メリット・デメリットやASP・SaaSとの違いなど、クラウドの基礎となるポイントについてご紹介しました。現在製造業において“サービス化”が一つのキーワードとなっていることをご存じですか? 例えばものを販売するだけだった完成車メーカーに、ライドシェアやアフターケアといったサービスを販売するという道が開き始めています。
そうなれば、クラウドでサービスを提供することは必然となるでしょう。つまり、利用者としてだけでなく提供者としてもクラウドとは今後深いかかわりを持つ可能性が広がっているのが製造業なのです。
利用者としても、提供者となる未来を見据えても今のうちに深く知っておいて損はありません。