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ITスキル学習の標準「ITSS」「ITSS+」「UISS」「ETSS」の違いと役割

レンテックインサイト編集部

ITスキル学習の標準「ITSS」「ITSS+」「UISS」「ETSS」の違いと役割

ICTを適切に活用できる体制をつくることは、「DX」という言葉が当たり前になった今、すべての業界の企業で求められています。しかし、ICTといっても開発、運用、セキュリティなどその対象となる領域は幅広く、どのように知識を身につければよいのかあるいは、どのように人材を獲得・育成すればよいのか悩む方や企業は少なくないでしょう。

本記事では、経済産業省のIT政策実施機関である「情報処理推進機構(IPA)」がITスキルの標準として提供する「ITSS」「ITSS+」「UISS」「ETSS」などの資料とそれぞれの違いについてご紹介します。

「ITSS」は、IT人材の体系的な把握と学習・育成の指標となる資料

「ITSS」(ITスキル標準)は、ITサービス企業・人材の育成のためにIPAが作成したITスキルの指標であり、「1部:概要編」「2部:キャリア編」「3部:スキル編」の3部で構成されています。現在の最新バージョンは『ITスキル標準V3 2011』であり、IPA公式サイトのダウンロードページよりPDFあるいはドキュメント形式でダウンロード可能です。

その名の通り、「1部:概要編」では、目的、適用分野、活用法など「ITSS」を企業や個人が活用するにあたって最初に押さえるべき項目がまとめられており、「2部:キャリア編」では下記11職種ごとの役割や達成度指標(その職種のプロフェッショナルとしての実務能力を評価するための指標)が掲載されています。

  • マーケティング
  • セールス
  • コンサルタント
  • ITアーキテクト
  • プロジェクトマネジメント
  • ITスペシャリスト
  • アプリケーションスペシャリスト
  • ソフトウェアデベロップメント
  • カスタマサービス
  • ITサービスマネジメント
  • エデュケーション

ITサービスを提供する企業に向けて制作された資料のため、ユーザー企業にとっては「関連度が低い」と感じられる職種もあるでしょう。しかし、ITベンダーとの協業に向けて、パートナー企業の業務プロセスや役割を把握する上では、資料の全般に目を通すことがプラスに働くはずです。

「3部:スキル編」では、必要なスキルを一覧化した『スキルディクショナリ』や研修科目と手順をまとめた『研修ロードマップ』などのツールを用いて、各職種の学習・育成の方法がより具体的に記述されています。

「ITSS+」とは? どのような内容が加わったのか

2017年に公開された「ITSS+」は、その名の通り「ITSS」に不足する内容をプラスするために作成された資料です。そこで用いられているのが“学び直し”というフレーズ。ITSSのスキルリストに従って、各キャリアのロードマップを歩んでいるIT人材に対し、第4次産業革命(※1)に向かうDX時代で必要とされるスキルを提示しています。

※1…第4次産業革命(インダストリー4.0)について詳しくは『工場の第4次革命、インダストリー4.0とは?』をご参照ください。

実際に「ITSS+」で、具体的に項目立てて資料が用意されているのは下記4領域です。

  • データサイエンス
  • アジャイル
  • IoTソリューション
  • セキュリティ

まさに現代のDXでフォーカスされることの多い領域であり、ユーザー企業にとっては「ITSS」以上に具体的に参照すべき内容は多いかもしれません。

「ITSS+」でも「ITSS」と同様に各領域で必要とされる役割(ロール)と、それぞれが身に着けるべきスキルがまとめられているととともに、「アジャイル領域」では具体的なアジャイル開発の進め方、プロダクト責任者の役割などについて解説されています(※2)。

※2……「アジャイル開発とは何か」について知りたい方は「ウォーターフォール、アジャイル、スパイラル……情報システム部門が必ず押さえるべきシステム開発方式の違い」をご参照ください。

「ITSS+」はあくまでIT人材の学び直しを主眼に置いた資料のため、人材の調達や評価に用いられることは想定されていません。ただし、DXの文脈で2017年以降、IT人材にどのようなスキルが必要とされるようになったのかを確認するにあたっては有効に働くはずです。

「UISS」「ETSS」「ITLS」「CCSF」……それぞれの違いと内容は?

「UISS」「ETSS」「ITLS」「CCSF」など、「ITSS」「ITSS+」以外にもIPAがIT人材のスキル標準を定義するために作成した資料は、数多く存在します。 それぞれの概要を押さえ、「ITSS」「ITSS+」との違いを理解しましょう。

UISS(情報システムユーザースキル標準)

ITシステムのユーザー企業を対象に、必要な情報スキルやそのために必要な役割、スキル標準などについて解説しています。IT業界以外の企業にとってより活用可能性が高い資料はこちらになるかもしれません。ここでは下記13の人材像が定義されます。

【情報システム部門が担うべき10職種】

  • ビジネスストラテジスト
  • ISストラテジスト
  • プログラムマネージャ
  • プロジェクトマネージャ
  • ISアナリスト
  • アプリケーションデザイナー
  • システムデザイナー
  • ISオペレーション
  • ISアドミニストレータ
  • ISアーキテクト

【情報システム部門を支援する3職種】

  • セキュリティアドミニストレータ
  • ISスタッフ
  • ISオーディター

資料リンク:情報システムユーザースキル標準(UISS)と関連資料のダウンロード

ETSS(組込みスキル標準)

DX時代のものづくりにおいて重要性を高め続けている組込みソフトウェアのスキルについてITSSと同様7段階で定義し、必要なスキルや研修フレームワークを定義する資料です。ここで定義される職種は、下記10種類に分けられます。

  • プロダクトマネージャ
  • プロジェクトマネージャ
  • ドメインスペシャリスト
  • システムアーキテクト
  • ソフトウェアエンジニア
  • ブリッジSE
  • 開発環境エンジニア
  • 開発プロセス改善スペシャリスト
  • QAスペシャリスト
  • テストエンジニア

資料リンク:組込みスキル標準(ETSS Series)

ITLS(ITリテラシースタンダード)

ICTのスペシャリストではない、ビジネス部門やスタッフ部門のビジネスパーソンを対象に、ICT活用の基礎的なリテラシーを提供するための資料です。2018年12月に初版公開の資料であり、職種・産業を問わずIT活用が求められるようになった状況を反映しています。

CCSF(共通キャリア・スキルフレームワーク)

ITSS、UISS、ETSSの各スキル標準の基盤となるIT人材像の共通フレームワークであり、下記三つの人材類型・6つの人材像を定義しています。

【基本戦略系人材】

  • ストラテジスト

【ソリューション系人材】

  • システムアーキテクト
  • プロジェクトマネージャ
  • テクニカルスペシャリスト
  • サービスマネージャ

【クリエーション系人材】

  • クリエータ

資料リンク:共通キャリア・スキルフレームワーク

「iCD」の活用にあたっても、「ITSS」は基礎知識となる

IPAが提供している、IT人材の学習・育成の標準となる資料群についてまとめてご紹介してまいりました。「ITSS V3」の公開は2011年であり、より制作年が新しいIT人材スキルの標準としては同じくIPAが提供する「iCD(i コンピテンシ ディクショナリ)」が存在します。これも「ITSS」がその基盤である点は変わりません。「ITSS+」と「iCD」を併用する上でも、本記事でご紹介した各資料の違いや各役割の定義は意識しておくことをおすすめします。

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