ITとOT、制御システムと工場内設備、IoTセンサーとPC、OT機器同士など、相互に情報をやり取りする工場内ネットワークは増加し、その先にさらなるDXを見据える企業も増加しています。それに伴って存在感を高めているのが、産業用ネットワーク構築における標準プロトコルとして知られる「OPC UA」。工場ネットワークの広がりに伴い高まるセキュリティ整備へのニーズもその普及を後押ししています。
本記事では、「OPC UA」とは何か、そのメリットや役割、気を付けたいポイントを含め、詳しくご紹介します。
OPC UA は、「Open Platform Communications Unified Architecture(オープンプラットフォームコミュニケーションにおける統合アーキテクチャ)」の略称であり、産業オートメーションやその他の産業分野におけるデータの相互運用における標準規格です。
スマート工場に対する国家プロジェクトの先進事例として知られるインダストリー4.0(詳しくは『工場の第4次革命、インダストリー4.0とは?』をご参照ください)の推奨通信プロトコルとして指定されたことで多くの注目を集め、現在では「OPC UA対応」という文言を、PLC・コントローラーやIoT機器、SCADAなどのソフトウエアで目にすることは少なくありません。中国製造2025や韓国・シンガポールの国家プロジェクトにも取り入れられており、日本でもIVI(Industrial Value Chain Initiative:産業バリューチェーンイニシアティブ)などの組織がOPC UAの採用促進に参加しています。
OPC UAの特長として挙げられるのがプラットフォームを問わない相互運用性の高さと、各国、多様な産業界の組織との連携による仕様の発展性、設計時より組み込まれたスタンダードなセキュリティ機能のラインアップです。
OPC UAにより、セキュアかつ構造化された形で、マルチベンダーの情報連携を可能にすることで、データを正確、確実かつ安全に伝えることが運用団体であるOPC Foundationや日本OPC協議会のビジョンとして掲げられています。
そもそもOPC UAは、WindowsPCを介したデータ通信の標準プロトコルとして、1996年に規格化された第1世代のOPC(OPCクラシック)を下敷きにしています。当時のOPCが示すのは、「OLE(Object Linking and Embedding)for Process Control」であり、Windowsのソフトウエア間でのデータ連携・共有技術である「OLE」をその名に含んでいました。
しかし、産業界のIT化が進むにつれ、プラットフォームに依存しない柔軟性や拡張性、セキュリティ性を持った通信プロトコルが求められるようになり、2006年、第2世代のOPCとして「OPC UA」が登場することとなりました。
M2M、センサーやアクチュエーターとPC、クラウドなど、現代の工場DXでは工場とITという垂直方向のみならず、設備と設備、コントローラーとコントローラーなど水平方向に広がる相互運用が求められています。OPC UAは、クライアントサーバー、クラウドベース、フィールドバスなど求められる通信環境に合わせ、通信スタックを選択することで、プラットフォーム・ベンダーに依存しないデータ通信を実現します。
その内容は、OPC Foundationにより、GItHubにてオープンソースで公開されています。
また、OPC UAはデータに対し、オブジェクト指向ベースで情報モデルを適用することで、メタデータを付与し、情報の活用や標準化に寄与します。特定の産業における情報モデルに依存しない標準プロトコルとしてのOPC UAの存在感は、その採用が増加するとともにさらに高まっていくでしょう。
セキュリティモデルの設計も、OPU CAの構築にあたって重視されたポイントの一つです。
OPC UAのセキュリティはユーザー識別などのユーザーレベル、デジタル署名などのアプリケーションレベル、暗号化などのトランスポートレベルの3層で設計されており、ドイツ情報セキュリティ庁(BSI)のセキュリティ分析(2017年、2022年)により、重大な欠陥やセキュリティ脆弱性がないことが報告されています。
OPC Foundationのセキュリティワーキンググループにより、脆弱性の対処やアップデートが行われる仕組みも構築されているということです。近年リスクの高まりが指摘されている産業オートメーションネットワークのサイバーセキュリティにおいて、OPC UAやその搭載された製品を利用することは、有効な対処法の一つとなるでしょう。
OPC UAの特性やメリットについて、近年注目を集める理由とともにご紹介してまいりました。この通信プロトコルは、各工場、製品をつなげるための汎用性に特徴があり、活用にあたっては分野ごとに整理された情報モデルの策定がカギとなります。OPC UAを活用する団体、企業が増加している2020年代、産業機器・製品の相互運用における有用性はさらに高まっていくでしょう。