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スマートグラス、AIスピーカー……製造業でのスマートデバイス活用可能性

レンテックインサイト編集部

工場DXと言われると、まず各種システムのデジタル化やIoT活用がイメージとして浮かぶ方は多いのではないでしょうか。しかし、工場DX化・スマート工場化の先進事例はそれらに留まりません。例えば、スマートグラス、AIスピーカーといったスマートデバイスの活用可能性は大いに広がりつつあります。
本記事ではそれらにテーマを絞り、具体的な事例や活用のポイントをご紹介します。

事例1:音声通話やARで作業者をサポートする「スマートグラス」

最初にご紹介したいのが、「スマートグラス」を活用した事例です。メガネ型の端末を通じて実際の風景にバーチャル空間を重ね合わせるAR技術や音声通話機能が利用できるスマートグラス。コロナ禍を経て、その市場規模拡大の動きも見られました(詳しくはコチラ)。

両手をふさぐことなくインターネット通信が可能なスマートグラスは、工場作業における指示出しや、点検項目など視覚的に表示した方が分かりやすい情報の提示といった利用をされています。例えばその場に熟練者や監督者がいなくとも、遠隔地からリアルタイムで指示を行うことも可能になります。
ほかに、災害時の避難指示やAR技術を用いた研修、作業時の目線データを利用した作業の効率化などの事例も見られました。

実際に産業用スマートグラスを導入するにあたって気を付けたいのが、以下のようなポイントです。

  • 音声入力などハンズフリー操作のスムーズさ
  • 防塵・防爆などの耐久性
  • 装着時の快適さ
  • 通信方式と推奨回線速度

利用可能性が広がりつつある今だからこそ、「使いにくい」という印象を現場に与える可能性は事前に排除しておきましょう。

事例2:ハンズフリーの実現が、作業効率化やペーパーレスに繋がる「AIスピーカー」

「スマートグラス」でも活用されている音声入力技術は、機械学習の発展を背景に近年精度の高まりが著しい領域です。手袋をしての作業や手元の汚れる作業の多い工場において、ハンズフリーを可能にするAIスピーカーに注目が集まっています。

音声で直接入力することで、筆記のために作業を中断したりその後紙からPCへ内容を転記したりする必要がなくなり、作業の効率化に繋がるだけでなく、ペーパーレス化も進めることができます。また、このような音声認識システムをロボットと組み合わせることで、人間とAIの協働の可能性が広がることも期待されています。

「騒音のある工場では音声入力は難しいのではないか」と感じられますが、近年は指向性マイクの進化により、90dBといった高騒音環境でも音声認識が可能な機器も登場しています。また、高度な機能を求めないならば、スマートフォンを音声入力デバイスとして活用することも可能です。

長い文章の正確な入力など、音声入力が不得意な部分もあるため、簡単なメモや数値の記録などまずはスモールスタートで手を付けやすいところから導入してみましょう。

事例3:“常に身に着けている”というメリットに注目 「スマートウォッチ」

身に着けられるスマートデバイスとして最も普及していると考えられる「スマートウォッチ」。常時身に着けるという特性から、即座の対応が求められる情報を伝える場合や、リアルタイムの状況を把握する必要がある場合に用いられることが多いデバイスです。

例えば設備停止や不具合が発生した場合、自動的にリーダーのスマートウォッチに通知が届くよう設定しておくことで発見までのライムラグをなくせます。さらにスマートウォッチを通じて保守担当者に連絡をすれば、復旧までの流れが滞りません。また、常に身に着けているというスマートウォッチの特性を利用して、工場内の環境や作業者の体調の測定を行うケースも見られました。作業者の脈拍や体温など状態に異常が見られた場合は直ちに対処できるだけでなく、疲労の蓄積や熱中症リスクを数値化し未然に警告することも可能になります。

スマートウォッチを通じて蓄積されたデータは、労働環境改善や作業効率化など経営・生産技術の分野においても貴重な知見を与えてくれるでしょう。

事例4:触覚を伝え、遠隔でも正確な操作を可能にする「ハプティクス」

「ハプティクス(haptics)」とは、振動や質感など触覚を通じて情報を伝達することに関わる情報技術で、触覚技術とも呼ばれます。微細な触覚を伝えるハプティクスにまず期待されているのが、遠隔地からのロボットアームやウエアラブルデバイスの操作です。正確な触覚を伝達し、保存して再現し、物体と双方向に伝送するハプティクス技術を特に「リアルハプティクス」と言い、慶應義塾大学 ハプティクス研究センターなどで実用化に向けた研究が進められています。

例えば、リアルハプティクス技術と、ARをさらに発展させたMR(複合現実)技術を組み合わせ、袋状食品包装に微小な穴が空いていないかの検査を、リアルハプティクスを通じた触覚の数値化とそのウエアラブル端末への表示により、安定して行うことを可能にした技術が、慶應義塾大学のプレスリリースでは紹介されています。このように、これまでKKD(勘・経験・度胸)頼りだった領域を定量化し安定して再現可能にすることにも、ハプティクス技術は活用可能です。

ハプティクスの活用には低遅延・高速・大容量の通信網が不可欠であり、5G通信の普及はその大きな後押しになると目されています。ローカル5Gの検証に取り組むならば、ハプティクスの活用可能性にも目を向けてみてはいかがでしょうか。

まずはスモールスタートから活用可能性を見出そう

工場のDX化・スマート工場化の可能性について、スマートグラス、AIスピーカー、スマートウォッチ、ハプティクスの4つの観点からまとめてまいりました。まず一台手に入れてみて、試行錯誤を繰り返すなど、スモールスタートから自社に合った使い方を見出す企業も少なくありません。まずは気楽な気持ちで、どのような可能性が開かれているかをイチから探ってみてはいかがでしょうか。

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