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サービス化する製造業が押さえておきたい「サービスマネジメント」の基本

レンテックインサイト編集部

IT Insight サービス化する製造業が押さえておきたい「サービスマネジメント」の基本

画像素材:Adobe Stock

DXにより、製造業は「もの」を通じて「サービス」を提供する産業としての側面を強めていくと予測されます(詳しくはコチラ)。企業が顧客に提供する価値のすべてをサービスとして捉えるサービス・ドミナント・ロジックが提唱されたのは2004年ですが、本格的に結実するのはこれからでしょう。

そこで本記事でご紹介するのが「サービスマネジメント」の基本的な手法です。なぜサービスマネジメントは必要なのか、分かりやすく解説してまいります。

サービス・ドミナント・ロジックとは? サービスマネジメントはなぜ必要?

「サービス・ドミナント・ロジック」とは、商品・製品を含め、企業が顧客に提供する価値のすべてを「サービス」として捉える経営理論です。例えば、米Amazonの提供するタブレット端末kindleについて考えてみてください。消費者の主目的は、kindleというものそれ自体ではなく、電子書籍の閲覧やゲームアプリの利用、動画の視聴といったサービスから得られる価値です。Fire TV StickやAlexaといった製品も同様でしょう。

経済学者のセオドア・レビット氏が1968年に自著『マーケティング発想法』に記した「ドリルを買う人が欲しいのは“穴”である」という言葉は今でもマーケティングの鉄則の一つとしてよく耳にします。そして、売った後もインターネットを介した双方向のデータのやり取りが可能になった現代において、「“穴”=価値」に対しより企業がコントロールできる余地は増加しました。そのため、今サービス・ドミナント・ロジックが現実のビジネス環境と接続を進めてきているのです。

企業が顧客に価値を届けられるようサービスをコントロールすることはすなわち、「サービスマネジメント」という一言に集約されます。そのため、サービスマネジメントのノウハウを身につけることは、ものづくり企業の一大テーマとなっているのです。

製造業で見られるサービスドミナントを取り入れた例としては、下のようなものが挙げられます。

  • ウエアラブル機器販売企業が、ユーザーの生体情報を取得し、専用アプリで体調管理や安全衛生を提供
  • 工場設備を提供する企業が、機器の稼働状況や故障の状況などをモニタリングし、コンサルティングや保守サービスを提供
  • 電気自動車メーカーが、充電サービスやメンテナンスサポート、オーナーだけが利用できるコミュニティや施設利用権などを提供

サービスマネジメントの王道「ITILⓇ」の基本

サービスマネジメントの王道を学ぶにあたって推奨されるのがITILⓇ(Information Technology Infrastructure Library:ITインフラライブラリ)です。1980年代後半にITサービスマネジメントの成功事例をまとめた書籍群として、英国政府から発行された同ライブラリ。平たく言えば、“ITサービスをビジネスに生かすための基本的な考え方をまとめた資料”ですが、サービス・ドミナント・ロジックのカギにITが位置している現在では、全産業のサービスマネジメントにおいて広く参照されています。(※ITIL®は、AXELOS Limited の登録商標です。)

ITILⓇにおいてサービスマネジメントは以下の5段階に分かれ、「継続的なサービスの改善」を常に行うことが想定されています。

  • サービスストラテジ(サービスの戦略)
  • サービスデザイン(サービスの設計)
  • サービストランジション(サービスの本番環境への移行)
  • サービスオペレーション(サービスの運用)
  • 継続的なサービス改善

サービスストラテジは、中長期的な目線でサービスを運営するうえで管理しなければならない項目について検討する段階です。その対象としては「顧客との関係」「市場の需要」「財務」「サービスごとの投資対効果」「事業の基本戦略」などが挙げられます。

サービスデザインは、サービスストラテジで定めた戦略に基づき、具体的なサービスの設計に取り組む段階です。その対象は「サービスレベル」「サービス・カタログ」「可用性」「キャパシティ」「ITサービス継続性」「情報セキュリティ」「サプライヤ」「デザイン・コーディネーション」などの領域におよびます。

サービストランジションでは、サービスデザインで作り上げたITサービスの設計を顧客へ提供する環境へ移行するにあたって押さえるべき事項がまとめられています。

サービスオペレーションではサービスを運営すれば必ず発生する顧客からの問い合わせやトラブル、運用フェーズではじめて見つかる問題についてどう対処すればいいのかについてまとめられています。

サービスマネジメントの「三つのP」とは?

ITILⓇではサービスマネジメントで必要な資源として、以下の三つのPが提示されます。

  • Process(手順)
  • Product(製品)
  • People(人材)

Processは、管理する手順や顧客に提供するフローなどサービスを提供するにあたっての仕組みのこと。ProductはITSMS(IT Service Management System:ITサービスマネジメントシステム)などサービスマネジメントのためのツールを、Peopleはそのものずばりサービスマネジメントに取り組む人材を指します。
また、書籍によってはこれら三つに、外部のベンダーやITコンサルなどを含む「Partners(パートナー)」が加えられることもあります。

これらの要素が重要だという事は、これまでもわかっていたという方が大半でしょう。しかし、サービス化した事業では前述したサービスマネジメントの各段階において三つ(4つ)のPをどう活用するかを継続的に検討し、最適化していくことが求められます。

そのような複雑かつ終わりのない課題に対処するためには、体系的にまとめられたベストプラクティスを活用することが役立つはずです。

企業の未来を見据えてサービスマネジメントの学習をはじめよう

全産業でサービス化が進む状況を背景に、サービスマネジメントの基本をまとめてまいりました。本記事でご紹介したのは、サービスマネジメントという一大テーマの氷山の一角であり、実際の業務に繋げるにはITILⓇについて書籍で学んだり、資格を取得したりといったさらなる研鑽が求められるでしょう。
とはいえ、ベストプラクティスが豊富にまとめられており、効率的に知見を学びやすい分野だというのはサービスマネジメントのメリットです。本記事をきっかけに、まずは入門書を参照するなど、サービスマネジメントに気軽に入門してみてはいかがでしょうか。

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