2020年3月より商用利用が開始された5Gサービス。コロナ禍という思いもよらない障害にぶちあたったものの、着実にカバーするエリアを広げ、対応可能な端末を増やしており、2022年は企業や自治体によるローカル5Gの導入・活用が本格化すると予測する声もあります。
そんな文脈を理解するうえで押さえておきたいキーワードが「プライベートLTE」。本記事では、プライベートLTEとローカル5Gの違いや、プライベートLTEの特性、利用の可能性などについて解説します。
プライベートLTEとは企業や自治体の自営施設内で利用可能な“閉じた”LTEのこと。
携帯電話などの周波数帯として知られるLTE(Long Term Evolution)は、そもそも第3世代通信規格である3Gを進化発展させた第3.9世代通信規格3.9Gを指す言葉でした。しかし、2010年に国際電気通信連合(ITU)に4Gの名称をLTE(とWiMAX)のネットワークに用いることが許可されたため、現在では、LTEも4Gと呼称されるのが一般的です。
5Gはその名の通り、4Gの次の世代の通信規格として生み出され、詳しくは『ビジネスに新たな価値を生み出すローカル5Gの魅力』などレンテックインサイト内の他記事でご確認いただきたいのですが、4Gをはるかに上回る高速・低遅延・多数同時接続が特長です。そして、「ローカル5G」は、企業や自治体の自営施設内で構築された5G環境を指します。
このようにプライベートLTEとローカル5Gは非常に近しい概念ですが、世代とそれに基づく通信方式がはっきりと異なっています。なお、プライベート5Gという言葉もあり、こちらは、通信事業者のサービスとして提供されるローカルな5Gのネットワークを意味します。混同しないように気をつけましょう。
プライベートLTEについてもう少し詳しくご説明しましょう。
プライベートLTEとして用いられる通信方式には「sXGP(1.9GHz帯)」と「自営BWA(2.5GHz帯)」の2種類があります。より歴史が古いのは後者の「自営BWA(Broadband Wireless Access)」で、そもそもの始まりは2008年に「地域の公共の福祉の増進に寄与する」などの用途に限定して無線局免許が付与される「地域BWA」が制度化されたことにあります。2014年には電波法令の改正により、それまでのWiMAX方式に加えLTE方式での活用幅も広がりました。そして、自営BWAは地域BWAのうち、利用されていない帯域、近くに利用される予定のない帯域をプライベートLTEとして利用することを指します。2019年には、ローカル5Gのアンカーバンド(制御信号などをやり取りする帯域)としての活用が『ローカル5G導入に関するガイドライン案(総務省)』にて示唆されました。
通信エリアが広く、安定運用が期待されるLTEは、IoTやスマート工場の実現において、WiFiやBLE(Bluetooth Low Energy)など他の通信方式と比べても特筆すべきメリットがあります。
しかし、「無線局免許」が必要というのは、一つのハードルとなります。
そこで注目したいのが、2017年に自営PHSの後継サービスとして導入されたsXGP(shared eXtended Global Platform)。sXGPは免許不要かつ用途なども限定されておらず、プライベートLTEの可能性を大きく広げました。2021年1月に公衆PHSの音声サービスが終了し、寄せられる注目はさらに高まったように思われます。
高セキュリティ、低遅延な通信ネットワークを免許不要で構築できるというのは皆さんにとっても非常に魅力的に思われるのではないでしょうか。
プライベートLTEとローカル5Gを比較してきましたが、それらは単純に置き換えられるものではなく、前述の「アンカーバンド」のように、LTEは制御を、高速な5Gはデータ通信を担うといった使い分けが行われる事例が増えてくると考えられます。そのため、プライベートLTEの構築にかかったコストは、5Gネットワーク構築後も無駄にはならないといえるでしょう。
また、地域BWA事業者からネットワークを借り受けるなどの活用も視野に入ります。
もちろん、ローカル5Gとの組み合わせだけでなく、プライベートLTEのみで構築されたネットワークでもセンサーカメラによる異常検知、AGVの制御、IoTシステムによる機器のモニタリングなど、ほかにもさまざまな活用例が見られます。
プライベートLTEとローカル5Gは両立させることでさらに効果を発揮することがあるというのは押さえておきたいポイントです。
ローカル5Gとともに注目しておきたい「プライベートLTE」について解説しました。次世代技術としての座を5Gに明け渡したともいえるプライベートLTEは、ローカル5Gの補助的用途としても、今後も安定して活用されていくことが予想されます。まだまだ実験やサービス開発も盛んに行われている最中ですから、今後もより一層注目です。