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「バーチャル・エンジニアリング」の現在と押さえておきたいポイント

レンテックインサイト編集部

IT Insight 「バーチャル・エンジニアリング」の現在と押さえておきたいポイント

画像素材:Adobe Stock

ものづくりの起点であり、製品の品質やコストの8割を決めるとも言われるエンジニアリングチェーン。CAD/CAM/CAEなどによりDXが進められてきましたが、企業の文化やビジネスモデル自体の刷新による競争力の創出というゴールを見据えれば「バーチャル・エンジニアリング」の実現は必須条件といっても過言ではありません。

本記事では、バーチャル・エンジニアリングとは何かについて深掘りし、その真価と実現方法について考えます。

バーチャル・エンジニアリングの流れと現在の課題

バーチャル・エンジニアリングとは、そのものずばり「エンジニアリングのバーチャル化」を意味します。1995年ごろから2000年代にかけて3DCADやCAM/CAEが浸透しはじめ、それまでの平面の製図から、バーチャル上で設計を行い、さまざまな環境におけるシミュレーションを行える環境が構築されていきました。

自動車や航空機までもバーチャル上でモデリングし、シームレスに詳細設計まで行うことで開発段階のリードタイムは大幅に短縮可能です。また、データや数値を見える化できる3Dモデリングにより、非エンジニアを含むさまざまな分野のステークホルダーとの協働が可能になる、理解が得やすくなるなどバーチャル・エンジニアリングにはさまざまなメリットが見出されます。

しかし、日本のバーチャル・エンジニアリングは遅れているとの指摘も。2020年初頭に行われた調査(※)によると、3DCAD/CAMの導入率は67.2%で前回調査(2016年)からの上昇幅は0.6ポイントでした。CAEは33.8%(前回より1.8ポイント上昇)、CATは7.2%(前回よりも3.0%上昇)という状況です。ツール導入の金銭面、教育面でのコストの大きさが足止めの一因となっているようです。

また、設計図面や仕様書のデータベース構築にまで着手できている企業はそれ以上に少なく、エンジニアリングチェーンとサプライチェーンのデータ連携が進まないことや、エンジニアリングと製造の分断を問題視する声もあります。

エンジニアリングチェーンのDXは、製造業DXの最優先事項の一つといえるでしょう。

※出典:【機械系エンジニア500人調査】製造業の現場で導入が進む3DCAD、CAE。業務の効率化だけでなく、エンジニアのキャリアパスに影響も┃エンジニアのためのキャリア応援マガジン「fabcross for エンジニア」

バーチャル・エンジニアリング成功のポイント

「高価なソフトウエアを導入しても思った通りのDXにはつながらなかった」という事態を防ぐために押さえておきたいのが、“エンジニアリングチェーンとサプライチェーンをつなぐための仕組みやツール、文化を導入する”というポイントです。

設計チームは、機能・方式・仕様などを“エンジニアリング”の目線から定義します。CADデータやE-BOM(Engineering BOM:設計部品表)は設計に特化して作成されており、それらを管理するPDM(Product Data Management)システムもまた同様です。
一方、製造チームが必要とするのは、“製造”に必要な手順、工具・治具、製品構造など。組み立て製造ではMBD(モデルベース開発)も普及し始めてきてはいるものの、2D図面や仕様書、M-BOM(Manufacturing BOM:製造部品表)を利用するのが一般的です。

この両者の違いをそのままにしていては、いくら開発力が強化されたとしても、最終的な顧客や自社の価値にはつながりにくくなってしまいます。企画・設計~販売・保守まで製品のライフサイクル全てにデータを活用して取り組むべきであるという考えをPLM(Product Lifecycle Management)と言います。
PDMをPLMへと発展させ、さらにERPと連携させることはエンジニアリングチェーンとサプライチェーンをつなげる目的に合致するでしょう。また、BOMの統合や、CAD図面のデータベース化など現場から変えられることも多くあります。

トップダウンで方向性を示すことの重要性

CAD組込み型のCFD(数値流体力学)プログラムのようにバーチャル・エンジニアリングを支援するツールも発展してきました。しかし、それらを生かすにはより、大局的な視点が必要になります。

経済産業省 製造産業局総務課・ものづくり政策審議室が2020年3月に公開した『製造業 DX レポート~エンジニアリングのニュー・ノーマル~』においても、エンジニアリングチェーンの強化にあたってまず取り組むべき方針として、“経営方針・目標と施策のゴールを連携させること”が挙げられました。

その背景にあるのは、製造部門・設計部門といった部門ごとの“個別最適”ではなく、エンジニアリングチェーン・サプライチェーン全体の“目標達成”を軸とすることが「2025年の崖」(詳しくはコチラ)回避の必須条件という考えでしょう。

企業のDXを統括するCTO(Chief Technology Officer)やCIO(Chief Information Officer)の重要性と不足も指摘されています。またデジタル改革に向けた部署を新設する企業も多くなってきています。日本企業は他国に比べ改革が現場主導となりやすい土壌がありますが、バーチャル・エンジニアリングにてエンジニアリングチェーンとサプライチェーンのシームレスな連携と最適化というゴールを見据えるならば、トップダウンで方向性を示すことは必須条件です。

バーチャルデータの価値は高まっていく

エンジニアリングチェーンにおけるDXの重要性と、それを成功につなげるための重要ポイントについて「バーチャル・エンジニアリング」を一つのキーワードに、解説してまいりました。
ソフトウエアの導入など具体的に着手すべきポイントが明確な領域ですが、前述の通り企業の目指す方向性と施策を一致させることがポイントとなります。今後、バーチャルデータの価値は一層高まり、そこから事業の可能性も広がるでしょう。

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