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EVシフトの進む日本 製造業の課題と焦点は?

レンテックインサイト編集部

IT Insight EVシフトの進む日本 製造業の課題と焦点は?

2021年12月にトヨタ社が16台のEV(電気自動車)モデルを発表し、BEV(バッテリーEV)のグローバル生産台数目標を200万台→350万台に引き上げることを発表。その7カ月前にはエコカー減税の新基準が適用される(詳しくはコチラ)など、2021年はEVシフトに関する大きな動きがみられました。
自動車業界のみならず、製造業全体にとって「脱炭素化」はますます存在感を高めていくでしょう。

そこで本記事では、近年の脱炭素化の流れを振り返り、これからの企業の関わり方を考えます。

EVシフトが進む背景 2030年、2050年までのシナリオは?

まずは、脱炭素に向かうマクロな流れを捉えましょう。

「産業革命以降の平均気温の上昇を2℃未満に抑制する(1.5%が努力目標)」

上記の「2(1.5)℃目標」について196カ国が合意し「パリ協定」が結ばれたのが2015年12月のことです。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第5次評価報告書(2013年)では、以下の4つのRCP(Representative Concentration Pathways:代表的濃度経路)シナリオで、予想される温室効果ガス等の濃度別の平均気温の上昇幅の予測が示されています。

  • RCP2.6(2046-2065年:1.0【0.4~1.6】℃/2081-2100年:1.0【0.3~1.7】℃)
  • RCP4.5(2046-2065年:1.4【0.9~2.0】℃/2081-2100年:1.8【1.1~2.6】℃)
  • RCP6.0(2046-2065年:1.3【0.8~1.8】℃/2081-2100年:2.2【1.4~3.1】℃)
  • RCP8.5(2046-2065年:2.0【1.4~2.6】℃/2081-2100年:1.0【2.6~4.8】℃)

この中で「2(1.5)℃目標」2081-2100年まで達成できているのは、温室効果ガス濃度シナリオの下限(2.6W/㎡)であるRCP2.6のみ。だからこそ、厳しい温室効果ガスの削減目標を具体的に定めることが求められるようになったという流れがあります。

日本は、2020年10月に温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量をマイナスした合計をゼロにする、「カーボンニュートラル宣言」を行いました。また2021年4月22日には、温室効果ガスの排出量-46%(2013年度比)の2030年目標を設定しました。

データで見る温室効果ガス排出量と製造業の関わり

環境省と国立環境研究所が取りまとめた資料によると、2020年(令和2年度)の温室効果ガス排出量(速報値)は11億4,900万トンでした。これは、2013年度と比べて-18.4%の値です。
なお、この調査における「温室効果ガス」は以下の7種類で構成されています。

  • 二酸化炭素(CO2)→90.8%
  • メタン(CH4)→2.5%
  • 一酸化二窒素(N2O)→1.7%
  • 代替フロン等4ガス<ハイドロフルオロカーボン類>(HFCs)→4.5%
  • 代替フロン等4ガス<パーフルオロカーボン類>(PFCs)→0.3%
  • 代替フロン等4ガス<六フッ化硫黄>(SF6)→0.2%
  • 代替フロン等4ガス<三フッ化窒素>(NF3)→0.03%

排出量全体の90.8%を占めるCO2のうち、エネルギー起源の排出は92.7%。そのうち、産業部門(工場等)は33.8%、運輸部門(自動車等)は17.7%を占めています。また、非エネルギー起源のうち、4.1%が「工業プロセス及び製品の使用」によるものです。
このような全体に占めるウェイトの大きさから、ものづくり産業における脱炭素化の重要度が説かれているというわけです。

また経済産業省の資料「製造業を巡る動向と今後の課題」では、国立研究開発法人国立環境研究所の資料を基に、CO2の産業部門の排出量の90%以上を製造業が占めることが、以下のデータで示されています。

【産業部門CO2排出量(エネルギー起源)の内訳(2019年度確報値)】

  • 鉄鋼業:40%
  • 化学工業:15%
  • 機械製造業:12%
  • 窯業・土石業:8%
  • パルプ・紙・紙加工業:6%
  • 食品・飲料:5%
  • その他製造業:8%
  • 非製造業:6%

また、自動車は運輸部門のCO2排出量の86.1%を占めています。充電ステーションの不足や燃料電池の性能などさまざまな課題を乗り越え、EVシフトを達成することが推奨される背景にはこのような事情があります。

カーボンニュートラルと経済性の両立を測るには?

さて、ここからは製造業の企業がカーボンニュートラル化を進めつつ、経済性との両立を測る方法について考えていきましょう。

脱炭素と経済成長をトレードオフの関係ではなく、革新と飛躍の機会と捉えるのが日本政府の後押しする「グリーン成長戦略」ですが、それに向けて以下の14産業が重要分野としてピックアップされています。

1.洋上風力・太陽光・地熱産業(次世代再生可能エネルギー)
2.水素・燃料アンモニア産業
3.次世代熱エネルギー産業
4.原子力産業
5.自動車・蓄電池産業
6.半導体・情報通信産業
7.船舶産業
8.物流・人流・土木インフラ産業
9.食料・農林水産業
10.航空機産業
11.カーボンリサイクル・マテリアル産業
12.住宅・建築物産業・次世代電力マネジメント産業
13.資源循環関連産業
14.ライフスタイル関連産業

脱炭素に代わる新エネルギー、それらを蓄電する燃料電池やそのマネジメント、温室効果ガスの排出効果を測定したり、設備稼働の最適化を測ったりするためのセンサー・IoTなど、連鎖的に新たな市場が生まれ活発化するのが「グリーン成長戦略」の理想です。

その後押しのため用意されたのが、2兆円規模のグリーンイノベーション基金、税制・金融面の優遇などでした。

個々の企業にとって重要なのは、こうした時流の変化にキャッチアップするための情報収集力です。本メディアや政府資料で情報を更新することはもちろん、GX(グリーン・トランスフォーメーション)という視点で、DXを見直してみることが新たな発見を呼ぶはずです。

2030年の目標達成に向け産業界は飛躍が求められる

2022年に入り、脱炭素目標の一つの節目である2030年まであと8年と迫る中で、EVシフトやカーボンニュートラルが求められる背景と製造業の関わりについてデータをもとに見てまいりました。
(2030年の)目標まであと-27.6%と、今後数年で産業界はさらなる飛躍を求められることになるはずです。それに向けた準備として情報収集とGX視点でのDXに取り組んでいくことをおすすめします。

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