2021年に発足したデジタル庁が政府・自治体で活用するガバメントクラウドを選定するなど、日本社会のIT化とその一大テーマとしてのクラウド化が進められています。本記事では「わが社もクラウド利用を進めたいが、どのような製品を選べばいいかわからない」と悩む方に向けて、「パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッドクラウドの違い」をご紹介します。「パッケージ・オンプレミスとクラウドの違い」や「クラウド・SaaS・ASPの違い」が知りたい方は『いまさら聞けないクラウドの基本パッケージ・オンプレミス・SaaS・ASP……それぞれの違いとは?』をご参照ください。
パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッドクラウドの違いは、簡単にいうと“サプライヤーの提供するパブリックなクラウド環境を利用するか(パブリック)、企業内でクラウド環境を構築する(プライベート)か、その両方か(ハイブリッド)”です。
そもそもクラウドとは、インターネットを通して「データの管理・共有」「電子メール」「機械学習」といった機能を利用するIT利用の形態のことを指します。そのため、最も本来のクラウドのイメージに近いのはパブリッククラウドでしょう。都度機能が提供されかつ管理や更新はプロバイダーが行うため、利用コストが抑えられ導入のハードルも低いこと、必要な機能を必要なタイミングで必要な分だけ利用できるのがメリットといえます。
ただし、共通のパッケージとして提供される機能を利用するパブリッククラウドでは、企業独自のカスタマイズやセキュリティ要求に対応できません。そこで、プライベートクラウドやハイブリッドクラウドが検討されることになります。プライベートクラウドは企業のネットワーク内で独自に構築されるため、サプライヤー任せのパブリッククラウドに存在するセキュリティや障害のリスクが排除できます。その一方で、導入・運用時のコストが大きくなりやすく、自社のIT部門の管理が不十分であればかえってリスクも高まるというデメリットもあります。
ハイブリッドクラウドはその名の通り、プライベートとハイブリッド双方を組み合わせたクラウド環境です。機密情報をプライベートクラウドで管理しつつ、その他の機能はパブリッククラウドで柔軟に対処する、既存システムをプライベートクラウド化し、パブリッククラウドを合わせて導入することで徐々にクラウド化を進めるなどの利用法がポピュラーです。
どれが自社に適しているかは、クラウドに求める仕様、IT部門の体制、既存システムの構成などによってケースバイケースとなります。まずはパブリッククラウドを導入できないかを検討し、それが難しい場合、その理由を挙げていく中でプライベートクラウド・ハイブリッドクラウドを検討してみてはいかがでしょうか。
クラウドサービスを検討する中で、よく候補に挙げられるのが3大クラウドと呼ばれることもある、米IT企業3社のサービスです。
AWSは米小売大手Amazonが提供するクラウドサービスで、世界のクラウド市場で最大のシェアを占めています。データベース構築、IoT、コンピューティングなどさまざまなサービスが提供されています。国内に製造業専門チームも存在するため、見聞きしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。
AzureはWindowsやOfficeで知られる米マイクロソフトのクラウドサービスで、シェアは世界2位。こちらもデータベースやIoT、自動化など一通りの機能が用意されていることはもちろん、OfficeなどITソフトウエアとの連携に強みがあるのがポイントです。また、金融や航空など特定の業界との親和性が高いことでも知られています。
GCPはGmailやChromeなどを提供するGoogleのクラウドサービスです。すでに作成済みのGoogleアカウントから利用でき、機械学習などビッグデータ活用・AI領域でも注目を集めています。シェアは世界3位であり、AWSやAzureと比べてパッケージとしての普及度は小さいものの、独自のメリットを持ちます。
もちろんAlibaba Cloudや国内プロバイダーなどクラウドサービスは他にも様々なものがあります。また、複数のクラウドサービスを組み合わせるマルチクラウドも選択肢として有力です。
企業、業界ごとの業務形態が異なるなかで、既存のシステムが複雑に構築されていることも少なくなく、パッケージとしてのパブリッククラウドの導入が難しいといわれる場面もありました。 しかし、クラウドには以下のようなメリットも存在します。
「既存のシステムが再現できないから無理」などと二分法で考えるのではなく、どうすればオンプレミスとクラウド両方のメリットを自社にとって最も良い形で享受できるのかを考えてみてください。
パブリッククラウド・プライベートクラウド・ハイブリッドクラウドの違い、3大クラウド「AWS」「Azure」「GCP」の違いについてご紹介してまいりました。「令和2年版情報通信白書」(総務省)によると、2019年の企業の「クラウドサービスを利用していない理由」1位は「必要がない」(45.7%)でした。しかし、その後新型コロナウイルスの世界的流行が起こったように、ビジネス環境がどのように変化するかは予測できません。今ある必要だけでなく、これから生じるかもしれない必要に目を向けて、IT戦略を策定していきましょう。