ICT活用による建設現場の刷新プロジェクトである「i-Construction」の一環として導入が推進されている「BIM/CIM」。2023年4月より国土交通省による「BIM/CIM原則適用」(小規模を除くすべての公共工事へのBIM/CIMの原則導入)が始まっており、今後建設・土木業界や同業界と関係の深いものづくり企業を中心に、同ツールの活用は加速していくことが予測されます。
本記事ではBIM/CIMとは何かからそのメリット、統計データが示す導入のボトルネックまで、その現在についてご紹介します。
「BIM/CIM」とは、調査・計画・設計といった初期段階からその後の施工維持管理において、「BIM/CIMモデル」と呼ばれる3Dモデルのモデリング情報と属性情報を組み合わせたものを導入し、その後の工程や全体での業務効率化や高度化を図ることをいいます。
前者のBIMは「Building Information Modeling」の略で建築に関する情報をモデル化し業務効率化や高度化することを指します。そして後者のCIMは「Construction Information Modeling/Management」の略で土木や建設に関することをモデル化し業務効率化や高度化することを指します。
BIM/CIMと比較される対象として、主に製造業で用いられる3DCADが挙げられますが、CADは「Computer Aided Design」の略称である通り、そもそも「Design(設計)」を補助する目的で発展してきた存在であり、2次元の図面を3次元でモデリングするという発想が根底にあります。一方、BIM/CIMは「Information(情報)」という要素をその名称に含んでいる通り、3Dモデルの情報とそのモデルに付与する属性情報を含めてモデル化するという発想が根底にあります。
また、BIMでは通常3DCADよりもコンポーネント数が少なく、複雑な形状の表現は難しいこともある代わりに、モデルの寸法をパラメトリックに変更可能かつ、寸法だけでなく性能や耐用年数といった特性についても情報を伝えやすいようにデザインされている傾向にあります。
BIM/CIMソフトの事例としては、Archicad、GLOOBE、Autodesk Revit、Vectorworksなど、3DCADソフトの事例としてはFusion 360、SolidWorks、Autodesk Inventor、NXなどが挙げられます。
BIM/CIMの活用が推進される中で、BIM/CIMデータの共有が求められる場面も増加しており、建設・土木業界や製造業において、同ツールに対する関心や同技術を扱える人材へのニーズは高まっています。
国土交通省の「BIM/CIMポータルサイト」では「BIM/CIM」を事業で活用する上でのガイドラインや活用事例、研修コンテンツなどが共有されており、例えば以下のようなメリットが示されています。
また、設計・開発の初期段階で品質やコスト、仕様などを作り込み、前倒しでの検討を可能にする「フロントローディング(※)」や、各工程を同時並行で進めることで開発期間の短縮化を実現する「コンカレントエンジニアリング」など、ものづくりの工程の効率化・モダナイズにおいてもBIM/CIMは大きな効果を発揮することが説かれています。
※フロントローディングについて詳しくは『「フロントローディング」のメリットと実現方法』をぜひご参照ください。
『建築分野におけるBIMの活用・普及状況の実態調査(令和3年1月 国土交通省調べ)』によると、建築分野においてBIMを「導入している」企業の割合は46.2%で、設計分野では総合設計事務所が81.2%と顕著に高く、また規模の大きい企業ほどBIMの導入割合が高くなる傾向にあります。
また、BIMの導入に至らない理由として「発注者からBIM活用を求められていないため」「CAD等で現状問題なく業務を行うことができているため」が大きな割合を占めており、必要にかられる状況にないからこそ、BIMの導入が伸び悩んでいることが見て取れます。「BIM/CIM原則適用」はその状況に大きな影響をおよぼし、今後のBIM導入を加速させるでしょう。
2D図面を下敷きに3Dモデルを構築してみるなどこれまでの資産・ノウハウを活用する形を検討する、デジタルツインを実現するための手法として取り入れるなど、これまでの歩みや未来をつくる取り組みとBIM/CIMを掛け合わせることが、自社にとっての第一歩を後押しするかもしれません。
BIM/CIMとは何か、具体的なメリット、導入に至らない理由などについて解説してまいりました。「BIM/CIM原則適用」は当初2025年からの目標だったものが2年前倒しされた施策であり、その背景にはコロナ禍によるデジタル化需要の高まりや、建設業の2024年問題などを前に、業務効率化の必要性が増していることがあります。今後数年間、大きなテーマとなり続けるであろう「BIM/CIMをどう取り入れるか」という課題に対し、他社事例などを元に自社の事業にどう取り入れるかの検討することが重要になるでしょう。