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ロボットアームを食品工場で活用する際のメリットと注意点

レンテックインサイト編集部

ロボットアームを食品工場で活用する際のメリットと注意点

工場における生産性向上を図るため、ロボットアームを導入する取り組みが進められています。特に食品を扱う工場の場合、ほかの工場とは異なる独特の課題があります。本記事では食品工場における課題や、ロボットアームを導入する際の注意点について解説します。

食品工場における課題

食品工場特有の課題として、衛生面の配慮を重視しなければならない点が挙げられます。また食品業界には小規模の企業が多く、ほかの製造業と比べて全体的に人手不足であるため、機械での自動化による生産性向上が期待されます。

多様な作業工程と衛生面の配慮

食品工場には、食品の調理や盛り付け、搬送、検査、包装、梱包などのさまざまな工程があります。一般的な工業製品とは異なり、形が不均一で柔らかい食品を扱う作業は自動化が困難です。そのため、機械に頼らず人手により作業しているケースが一般的といえます。また食品を扱う工場では特に衛生面に注意しなければなりません。食品工場で用いる機械には、微生物やほかの物質からの汚染を十分に防止できる構造やシステムが求められます。

中小企業が多く労働力が不足

食品製造業の企業数のうち大企業は1%未満であり、約80%は従業員20人以下の小規模企業が占めています。業界全体として人手不足の問題が大きく、製造業全体と比べて欠員率は2倍以上となっています。さらに食品製造業はほかの製造業と比べて労働災害の発生数が多く、特に転倒やはさまれ、巻き込まれの災害が起きやすいです。労働力不足を解消し、安全な労働環境を実現するための対策として、作業工程の機械化が期待されています。

ロボットアームを食品工場で活用する際のメリットと注意点 挿絵

ロボットアームを用いた生産性向上

食品工場の作業をロボットアームで自動化することで、人手不足の解消が期待できます。作業工程に合わせて設定や動きを柔軟に変更できることもロボットアームの利点です。

自動化による人手不足の解消

ロボットアームを活用すると、食品工場におけるさまざまな作業を自動化できます。人間の場合は法律に則って休息を取る必要があり、また長時間作業による疲れでミスが発生することもあるでしょう。しかし、ロボットアームは実施させたい作業のティーチングを行えば、同じ動作を休むことなく何度も繰り返し実行できます。また、危険な作業工程をロボットアームで自動化することにより、労働災害の防止にもつながります。

柔軟な作業内容の変更

食品工場の大部分を占める中小企業では、小規模ラインで多品種の製品を生産することが多いです。しかし、同じ製品を長期間生産するケースは少ないこともあり、費用対効果の観点から専用機の導入は困難です。作業内容が頻繁に変更される場合は、専用機でなく、汎用的に使用できるロボットアームによる自動化が望ましいでしょう。ロボットアームはティーチングの手間をかければさまざまな作業に対応できますし、ティーチングを容易にする機能が盛り込まれた機種も多く存在します。

ロボットアーム導入における注意点

ロボットアームを導入する場合、柔軟物を取り扱えるか、衛生面は問題ないかなど、食品工場特有の課題に注意しましょう。さらに、投資したコストを回収できる見込みが立つことも確認しておく必要があります。

柔軟物である食品の取り扱い

電子機器や機械部品とは異なり、食品は形が不均一で、柔らかく、粘性を持つことが多いです。そういった特徴がロボットアームで把持する際に課題となり、安定した作業が困難な場合があります。

導入時ロボットの活用方法を検討する時間を取り、試行錯誤してみるのもよいでしょう。例えば、ロボットの作業の前工程で食品の形状を均一に揃えておく、食品を掴む作業は人が行い、そのほかの工程をロボットアームで行うという分担にする、といった対応をしているケースがあります。

工場の衛生管理への対応

食品工場では食品の安全性を確保するため、洗浄や殺菌作業が必須です。そのため工場で使用するロボットアームも洗浄や殺菌作業に対応していなければなりません。また、機器の部品点数が少ない、工具を使用せずに分解や組み立てができる、十分な防水防塵性能を持つ、などの機能が求められることもあり、それらの工場の要求に合うロボットを選定する必要があります。

技術とコストのバランス

食品は利益率が低いため、ロボットアームを導入しても採算が取れないと判断される場合がよくあります。またロボットには一定以上のスピードで安定した作業ができることが求められますが、食品を扱う細やかな作業の中では人手の作業の方が効率的な場合もあります。

高精度なセンサーやAIによる画像処理技術などを用いて、ロボットアームの精度やスピードを向上させる取り組みをしている企業もあります。しかし、高度な技術は導入コストやランニングコストも大きくなります。長期的に見て、十分コストを回収できる見込みがありそうか判断しなければなりません。

食品工場に適したロボットアームを選定しよう

食品工場には独特の環境要件と人手不足の課題がありますが、汎用的な作業に向いているロボットアームの活用で生産性向上が期待できます。ラインの組み換えが頻繁に発生する工場でも、そのたびにロボットをティーチングして新たな動作を覚えさせられます。ロボットアームの導入の際は、食品の特性や工場の衛生要求に適した機器やシステムを選定し、技術の導入にかかるコストを踏まえて判断しましょう。

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