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画像処理技術で活用の幅が広がるロボット技術

レンテックインサイト編集部

本記事では、画像処理技術とロボット技術を連携させた「ロボットビジョン」について解説します。

産業用ロボットは、労働人口の減少が続く日本国内の製造工場で広く普及してきています。新興国の安い労働力とのコスト競争を勝ち抜くためにも、今後ますますロボットの普及が進められていくことが予想されています。そうした背景がある中で、産業用ロボットの用途を飛躍的に高める技術として『ロボットビジョン』の開発が進められています。

ロボットビジョンは産業用ロボットにカメラを搭載し、製品や構造物などを認識させてロボットを知能的に制御する技術です。例えばロボットが製品をつかむ姿勢を自動で制御できるようになるので、従来のようにすべて人が教示する必要がなくなります。このほかにも障害物を感知し、不良品を判別するなど、複雑な判断が可能になるため、これから幅広い業種への展開が期待されています。

画像処理を駆使したロボットビジョンとは

ロボットビジョンとは、産業用ロボットにカメラや照明などの画像処理に必要な機器を連携させて、製造現場での製造品の識別や災害の現場での障害物の検出などの、必要な情報をインプットし、ロボット自身が最適な動作を判断する技術です。例えばロボットの動作エリア内に作業者が侵入した場合、従来のロボットでは作業者を認識できず、衝突して重大な災害が発生するリスクがありました。一方、ロボットビジョンを活用したロボットであれば、作業者を認識して衝突を避けるために動作を停止するなどの判断が可能です。

またロボットビジョンは活用用途に合わせてシステム構成を変化させることが可能です。カメラの台数を変えて2Dを3Dにすることや、製品にキズがないかを画像から判断させるなど多様な用途で使用できます。使用先の工場や工程に合ったシステムにカスタマイズすれば、単純に省人化やコストダウンだけでなく、新たな付加価値を生み出すことも可能になります。

ロボットビジョンが活用できる産業用ロボットは特定メーカーに限らず、さまざまなロボットで採用が可能です。ファナック、DENSO、川崎重工などの国内メーカー、ABB、JAKA、ユニバーサルロボットなど海外メーカーでも対応ができます。そのため、自社の工場で使用できるロボットメーカーが限定されている場合でも導入が可能になります。

ロボットビジョンのメリット

ロボットビジョンは産業用ロボットに画像処理機器を備え付けて、空間認識させることでさまざまなメリットを生み出すことができます。導入するメリットを具体的に4点解説します。

  • ワーク姿勢を自動判別するので教示作業が低減できる

    従来の生産ラインではロボットで製品を確実に把持するために、治具などで製品の位置と姿勢を厳密にセットする必要がありました。ロボットビジョンを活用すればランダムに置かれた製品でも、ロボット自身が最適なポジションを判断して把持することが可能になります。

  • 同一ラインで多品種混合させた流動が可能になる

    多品種の製品を同じラインに流す場合、従来はそれぞれ別のロボットプログラムを使うため混流できませんでした。ロボットビジョンを活用すれば同一エリアに別の製品があっても、ロボットが判別して必要な動作を決めることが可能です。

  • 最適なロボット経路を自動で作成できる

    ロボットビジョンではエリア内の構造物や製品の位置を判断して、自動で最適な作業経路を算出できます。従来であれば教示者の技量によって経路設定がばらついていたので、無駄な移動が発生することもありました。

  • シミュレーション技術の向上によりPCで動作の事前検討ができる

    ロボットビジョンではCAD上でロボットの動作をシミュレーションできます。そのため導入前にサイクルタイムを調査することや、ラインレイアウトの最適化が検証可能になります。

ロボットビジョンの用途

ロボットビジョンは従来のロボットよりも多機能のため、活躍の場が広がることが期待されています。製造業に限らず、複数の業種での活用事例をいくつかご紹介します。

  • コンベアを流れる製品のピッキング作業(食品、医薬品業界など)

    パッケージングされた食品や薬品の袋がコンベア上をランダムな姿勢で流れてくるため、従来は人が検査や梱包を行っていました。ロボットビジョンを活用して製品の向き、文字内容、異物をチェックすれば人が作業する必要はなくなります。

  • AGV上の製品をピッキングして次工程に搬送(自動車部品業界など)

    自動車部品を運ぶAGV(無人搬送機)は停止時に製品の位置ずれが発生します。そのためロボットビジョンを搭載したロボットで、製品の姿勢をすべて揃えておけば、次工程での搬送不良を防止することができます。

  • 協業ロボットと画像処理でネジ締め作業(自動車部品、電子部品業界など)

    ロボットビジョンを活用してネジの位置や姿勢を判別すれば、ロボットが自動でネジを取り出して製品の適切な位置でネジ締めすることができます。

今後ますます活用が広がるロボットビジョン

ロボットビジョンの基本情報やメリット、導入事例などについて解説してきました。ロボットビジョンは産業用ロボットを知能化し、活用の幅を広げ、導入の可能性を高める技術として期待が高まっています。初期導入時のシステムが高額になるデメリットはありますが、長期的な視点で考えると自動化技術の蓄積やコストダウンに繋がる可能性があります。将来有望な技術として注目してみてはいかがでしょうか。

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