ロボット Insight

ロボット活用の基礎知識~要件検討編~

レンテックインサイト編集部

前回はロボットの導入検討チームを立ち上げ、検討するべき事項についてご紹介しました。 検討が終わったら、業務に精通した実施責任者を選任しましょう。 実施責任者は経営課題を念頭において、工場内のロボット導入レイアウトを検討し、導入費用の試算、運用体制の構築を実施します。

それでは具体的にどのような手順で要件検討を行えばよいかご紹介しましょう。

要件検討を社内で行う重要性

企業によっては、要件検討からシステム構築を担当するSIer(システムインテグレータ)やロボットメーカーに任せることもありますが、できるだけ社内で行うことをお勧めします。 業務を一番知っているのは自社であるため、業務の実情に合わせて要件を作ることができます。

また、実際のシステム構築はSIerやロボットメーカーに依頼しますが、その時々に発生する要件確認のやりとりが迅速になります。 要件を検討する上で学習した内容が、SIerやロボットメーカーとの共通認識となり、「こういう形で伝えたら理解してもらえるな」ということが分かるようになります。

また、要件検討を通じて社内の人材が育成され、次のロボット導入の検討がスムーズになります。 人材がロボット導入に習熟することによって、導入後の微調整やちょっとしたトラブルが社内で解決できるようになります。

運用開始後の微調整を外部業者に依頼すると時間もかかるうえに、費用がかかってしまいます。 自社でできるかぎり対応できる体制を作っていくのも大切な取り組みです。検討チームも実施責任者の検討内容を随時共有し、フォローしていきましょう。

実施責任者が行うべき要件検討の手順とは

実施責任者が要件を検討する手順は以下のようになります。

(1) 対象となるワーク、作業の選定

対象ワーク、生産数量、タクトタイム、品種替えの頻度を実際に書き出します。 ロボットの生産にかかわる部分を可視化して整理することで前後の工程のつながりと合わせて検討することができます。

(2) 制約条件の洗い出し

工場の環境には制限があり、製造現場に合わせたロボットの選定が求められます。 SIerやロボットメーカーのアドバイスを活用しながら制約条件を書き出して整理しておきましょう。

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(図:各制約条件一覧)

(3) 導入レイアウトの作成

ロボットを前後の設備と合わせて設置し、レイアウトをより具体的に検討します。その他に必要となる機器についても選定しておきましょう。 CADでレイアウトを作成するか、設備、ロボットの平面図を同じ縮尺で用意し、模造紙に貼り付けて検討しておきましょう。
また、この時点でロボット自体の仕様を詳細に検討しておきましょう。検討するべき項目については次のようなものがあります。

  • ロボットの種類(水平多関節(スカラ)/垂直多関節/パラレルリンク/直交)
  • 可搬重量
  • アーム長
  • ロボットハンドの種類
  • カメラの有無
  • トレイ/専用トレイ
  • コンベア
  • パーツフィーダー
  • その他機器の有無
  • 治具製作の必要性

分からないことがあれば、ロボットメーカーのショールームで相談してみてください。

(4) 導入費用の試算

ロボット本体と必要な機器、レイアウトを詳細化したら、導入費用を積算します。ロボットや機器の本体価格のほかに、システムインテグレーション費用がかかります。
システムインテグレーションには以下の作業が含まれます。

  • 設計
  • 製作(ハード組立、電気、ソフトウェア開発、画像処理など)
  • 設置
  • 調整

ロボットや機器の本体価格はインターネットやカタログで確認できます。システムインテグレーション費用については、作成した制約条件、導入レイアウトをもとにSIerに相談してみましょう。
試算した金額は導入検討チームに共有します。導入検討チームで試算した費用対効果と照らし合わせ、最終的には経営層がロボット導入可否を判断します。

(5) 社内体制・運用の検討

システム稼働後の保守安全管理を行う運用担当者の候補を絞り込みます。 運用担当者は、ワークの変更や新たなティーチングが発生した場合に、ロボット設定の変更ができるようになるのが理想です。 運用開始後の生産性が向上し、費用も抑えられます。

検討した内容をもとに、提案依頼書(RFP)を作成

実施責任者は検討した内容をもとに、SIer・ロボットメーカーに提案依頼書(RFP)を作成し、正式な見積を依頼します。 RFPには、導入目的と期待される効果、スケジュール、予算規模とともに、今まで検討した内容および提案してほしい項目を記載します。

SIerまたはロボットメーカーから提案してもらった内容を検討し、予算を念頭に置いて最終的に1社を選定することになります。
このように、ロボット活用のためには、実際の業務を一番知っている自社内での検討がとても大切になります。 社内人材の育成や体制の構築がロボットのより効率的な活用に繋がってくるのです。

RFP作成時の注意点については、また次回ご紹介します。

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