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ロボットアームの位置制御と力制御の違い

レンテックインサイト編集部

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ロボットアームの動作では、モーターの回転やロボットの動作状態を確認しつつ設定値をズレがないよう制御します。本記事では、代表的な制御方式である位置制御と力制御の違いについて取り上げました。位置や力の検出の仕組みや、各制御方式のメリットとデメリットについて解説します。

制御方式の違いによってロボットアームで実現できる動作にも違いがあり、安全性の配慮が必要になる場合もあるため、ロボットアームの利用を検討している方は参考にしてください。

位置制御とは

位置制御とは、ロボットアームの手先の位置や各関節の角度を、任意の位置や角度に動かすように制御する方式のことです。各関節の角度の情報のみを用いて制御を行うため、制御システムが構築しやすいです。そのためロボットアームの制御方式として広く普及しており、位置情報を微分すると得られる速度情報を用いた速度制御も合わせて活用されています。

位置制御のみ対応したロボットアームでは、力を検出する機構がないために障害物へ衝突しても素早く停止できず、障害物もしくはロボットアーム自身の破損につながる恐れがあります。破損にまで至らなくても、接触などの外乱により位置の誤差が発生した場合に、振動などの挙動を示すことがあります。

力制御とは

力制御とは、ロボットアームの手先や各関節に加わる力が適切になるよう制御する方式のことです。力覚センサーなど力を検出する仕組みを必要とし、位置制御と比べて制御アルゴリズムが複雑になります。実際は力制御のみでロボットアームを動作させるのではなく、位置制御を組み合わせて動作させることが一般的です。

例えば、ロボットアームの手先に研磨機を取り付けて金属の研磨を行う場合、力制御であれば手先を一定の力で金属に押し付けながら研磨ができるため、均一で滑らかな表面に仕上がります。また卵や果物など柔軟物のピッキング作業を行ったり、力加減を確認しながらハーネスの組付けを行ったりなど、従来は人の手で行っていた作業を代替させることも可能です。

工場内における大量生産向けのロボットアームでは、一度ロボットが設置されると作業環境が変化しないことが一般的でした。そのような環境では同じ動作を長時間継続し続けることが重要で、位置や速度の制御のみでも十分でした。しかし近年は少量多品種の生産に対応することが求められるようになり、ロボットアームの作業環境が変化することも多くなっています。このような変化に対応するにはロボットアームが周囲の状況をリアルタイムに把握し、適切な動作をさせる必要があるため、力制御が求められるようになりました。

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位置や力の検出方法

位置制御では各関節のモーターの回転角度を検出し、その情報を基にロボットアームの手先を任意の位置に移動させます。モーターの角度情報を検出するセンサーの役割を果たすのが、モーター付近に備え付けられたエンコーダです。エンコーダはモーターの回転を検知すると、その情報を電気信号として外部に出力します。

力制御では関節や手先に加わる力を検出しますが、そのためによく用いられるのがトルクセンサーなどの力覚センサーです。ロボットの各関節にセンサーを取り付ける方式や、手先の部分にのみセンサーを取り付ける方式があります。ほかには、力覚センサーを用いずに各関節のモーターに流れる電流値から各関節に加わるトルクを推定する方式もあります。検出方式の違いによりロボットアームの精度やコストなどに違いが生まれるため、用途や予算に応じて選定すると良いでしょう。

各制御方式のメリット

位置制御は力覚センサーなどの力を検出する仕組みが不要であり、力制御と比べて制御システムが簡易的になります。そのためハード、ソフト両面において部材費や開発費が抑えられるでしょう。ただし、障害物への衝突時に被害が大きくなることや、外乱が発生した場合に振動などの挙動を示す恐れがあります。特に人と接触して怪我が発生しないよう、リスクアセスメントを行い安全性には十分に注意しなければなりません。そのためロボットアームの周囲に障害物がなく、人が接近しないよう柵を設けるなど安全面の配慮が必要となります。

力制御は衝撃を検知して停止させる安全機能や、人がロボットアームに触れながら動作パターンを設定するダイレクトティーチング機能など、高度な動きを実現できます。近年は工場などにおいて人と同じ作業空間で働く協働ロボットの普及が進んでいますが、特に安全性の観点から協働ロボットにおいて力を検出する機能は必須です。

位置制御に力制御が加わり、より高度な動きを実現

位置制御はロボットアームの各関節の角度をエンコーダで検出し、その情報を基に制御します。力制御は力覚センサーなど力を検出する仕組みを必要とし、各関節や手先に適切な力が発生するよう制御します。モーターの角度情報のみで制御する位置制御の方が仕組みは簡易的です。一方、力制御は位置制御と比べて制御方式は複雑なものとなりますが、安全機能など高度な動きを実現できるため協働ロボットに採用されています。制御方式によって安全上のリスクや取るべき対策も異なりますので、ロボットを導入する際はぜひ検討してください。

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