極めて高い生産性が求められる半導体工場では、さまざまなロボットが活躍しています。また、高品質な半導体を製造するためには精密な技術とクリーンな環境での生産が必須となっており、ロボットによる自動化が欠かせません。
本記事では、半導体工場でどのようなロボットが活躍しているのかを解説します。
半導体業界では微細化をはじめとする技術開発が絶え間なく行われており、高性能化が進んできました。同時に大量生産によるコスト削減も進められた結果、生産ラインを完全に自動化している半導体メーカーが多いです。
半導体工場の自動化を実現しているのは、半導体製造の各工程を担う半導体製造装置と、それぞれの工程間を繋ぐための搬送用ロボットです。ここでは、搬送用ロボットを中心に、半導体工場で活躍しているロボットをご紹介します。
ウエハー搬送用ロボットは、半導体チップなどの製造工程やウエハーの生産工場において、ウエハーを安全かつ正確に搬送するためのロボットです。
半導体チップの製造工程では、ウエハーに対して成膜、露光、現像、エッチングといった加工を繰り返していくことで、回路パターンが形成されます。その後、ウエハーを切断して一つ一つの半導体チップを切り出し、パッケージングするとようやく完成するという流れです。ウエハーは半導体の基板であり、半導体製造工程の大半はウエハーに対して行われます。
ウエハー搬送用ロボットは、半導体製造装置内に組み込んだり、装置と装置の間を繋いだりする形で導入されています。ウエハー製品の品質維持のため、搬送用ロボットは高精度かつスムーズな動きができなければなりません。また、搬送中の振動が大きいと位置ズレが起こったり、ウエハーが滑ってキズがついたりする恐れがあるため、低振動な動きが求められます。こういった要求に応えるべく、ウエハー搬送用ロボットの各メーカーは動力源となるモーターの制御技術やロボットハンドによる把持方法を工夫するなどして、低振動・高精度・高速なロボットを提供しています。
半導体チップのパッケージング工程では、支持基板としてガラス基板が用いられることがあります。このガラス基板を搬送するロボットも、半導体工場の中で活躍するロボットの一つです。
ガラス基板のサイズは大きいものでφ300mmのウエハーサイズや500mm角相当のパネルサイズにもなりますが、厚みが薄いので取り扱いには注意が必要です。また、ガラス基板上に半導体チップが搭載されるため反りが発生しやすく、搬送中の振動によって割れてしまう可能性もあります。これらの理由から、ウエハー搬送用と同様に低振動・高精度・高速なロボットがガラス搬送用として導入されています。
AGV(無人搬送車)は主に物流倉庫などで荷物の自動搬送に活用されているロボットです。昨今では半導体工場にも導入されており、半導体製造装置間の搬送などを行っています。
AGVを活用すれば、少し離れた位置にある装置間の搬送も自動で行えるようになります。従来は人の手で行っていた搬送作業を自動化すれば、人件費を削減できるだけでなく、クリーンルーム内の清浄度を維持しやすくなって製品の品質向上にも役立つ点がメリットです。半導体工場向けAGVの中にはロボットアームを搭載しているタイプもあり、搬送だけでなく半導体製造装置への部品供給も自動化できます。
半導体工場で稼働するロボットには、大きく二つの機能が求められます。
一つ目は、高精度かつ高速な動作ができることです。ウエハーやガラス基板など、半導体の製造工程で扱う部品は傷つきやすく、ハンドリングが難しいものばかりです。その上で、正確に目的地まで搬送しなければならないため、極めて高精度な動作が求められます。また、半導体は世界的に供給不足の傾向にあるため、生産能力を高めるために動作の高速化が求められています。2022年時点での世界最速クラスのロボットであれば、1時間に600枚以上のウエハーを搬送することが可能です。
二つ目は、クリーンルームへの対応です。一般的なロボットは摺動部のグリスやモーターの動作によって発塵するため、クリーンルーム内の清浄度を低下させてしまいます。そのため、摺動部にシールドをつけて密閉度を高めるなど、発塵しにくい構造をしたクリーンルーム対応のロボットを導入しなければなりません。クリーンルームに対応したロボットは大気環境用と真空環境用の二つに分けられますが、昨今では真空環境で行われる製造工程が増えているため、真空環境用のロボットの需要が高まっている状況です。
本記事でご紹介した通り、半導体工場ではさまざまなロボットが活躍しています。微細な半導体を高品質に量産するためには、ロボットによる自動化が欠かせません。半導体工場の生産性はロボットが支えているといえるでしょう。
半導体工場における自動化の手法は、他の業界にとっても参考になるノウハウが詰まっています。半導体業界以外の製造業の方も、自社の工場に応用できないかという視点で注目してみてはいかがでしょうか。