2014年にソフトバンクの「Pepper」が登場して以来、コミュニケーションロボットは私たちにとって身近な存在になってきました。2022年現在では、コミュニケーションロボットはさらに進化しており、その用途も広がっています。
本記事では、コミュニケーションロボットの概要や主な用途、将来展望を解説します。
コミュニケーションロボットは、音声や動作などの手段を使って人とコミュニケーションを取ることを主目的としたロボットです。話しかけると返事をしてくれたり、リアクションを取ってくれたりと、本当に人やペットと接しているかのような感覚を得られます。
コミュニケーションロボットの先駆けとなったのは、1999年に発売されたソニーの「AIBO」です。当時はかなりロボット感の強いデザインではあったものの、本当の犬のような振る舞いをする「AIBO」は人気を博し、ペットロボットという新たな市場を創出することに成功しました。
その後、コミュニケーションロボットがさらに普及するきっかけを作ったのは、2014年に登場したソフトバンクの「Pepper」です。身長121cmの人型ロボットである「Pepper」は、音声や胸のタブレット端末、身振り・手振りなどを使った高度なコミュニケーション能力を持っており、大きな話題を生みました。家庭向けとしてはあまり普及しなかったものの、商業施設やオフィスには数多く導入されたため、「Pepper」と接したことがある人は多いのではないでしょうか。ソフトバンクは現在も「Pepper」事業を継続しており、コミュニケーションロボットの普及に貢献しています。
当初は単なる娯楽としての用途しかなかったコミュニケーションロボットですが、現在ではさまざまな用途で活用されるようになっています。ロボット技術や通信技術の進化によって、コミュニケーションロボットにできることが格段に増えたことがその理由です。
ここでは、2022年現在の主なコミュニケーションロボットの用途をご紹介します。
安価かつ高性能なロボットが登場した影響もあり、家庭での癒しや子どもの遊び相手として、コミュニケーションロボットを購入する人が増えています。また、最近のコミュニケーションロボットの中には、人と会話ができるだけでなく、天気予報やアラーム、タイマー、家電製品の操作といったさまざまな機能を備えているものもあります。私たちの生活をサポートしてくれる実用的な存在としても、コミュニケーションロボットが活躍するようになってきたといえるでしょう。
店舗での呼び込みやオフィスビルの受付など、ビジネスシーンでもコミュニケーションロボットは活躍しています。コロナ禍においては、対人での接客を減らすという意味でもロボットのメリットが再認識されることになりました。コミュニケーションロボットだけで応対するのではなく、必要に応じてオペレーターによる遠隔通話に切り替えるなど、柔軟な対応もできるようになっています。
コミュニケーションロボットの新たな用途として期待されているのが、子どもへの教育です。例えば、IT人材の育成を目的として、2020年度から学校でのプログラミング教育が必修化されましたが、上述した「Pepper」を学校に提供し、プログラミングの授業で活用する事例が増えています。ほかにも、気軽に英語を学べる教材として英会話ロボットが販売されており、グローバル化に備えた子どもの英語教育に役立てられています。
少子高齢化が進む日本では、コミュニケーションロボットを高齢者の介護で活用する事例も増えています。例えば、コミュニケーションロボットと接することでの認知症予防や、見守り機能によって離れた場所にいる家族が安心できるといった内容です。ほかにも、介護施設でのレクリエーションとして、歌を歌ったり、クイズやしりとりをしたりするコミュニケーションロボットが活躍しています。コミュニケーションロボットの活用によって、スタッフの業務負担を減らせるだけでなく、高齢者の活動履歴の見える化もしやすくなるというメリットもあります。
株式会社シード・プランニングの調査では、コミュニケーションロボットの市場規模は2030年には900万台にまで拡大すると予測されています。調査を実施した2018年の時点では約30万台であることから、今後急激に増えていく見込みであることが分かるのではないでしょうか。
コミュニケーションロボットがさらに普及していくためには、さらなる性能アップが求められています。2022年現在でも、AIを搭載したコミュニケーションロボットは数多くありますが、まだまだ自然な会話やふるまいができているとはいえず、人がロボットに合わせている状態です。今後、AIや5Gなどの通信技術が発達していけば、より人に近い会話やふるまいができるようになり、用途もさらに広がっていくと考えられます。
コミュニケーションロボットは、今後数十年の間にさらに普及していくと考えられています。癒しやエンターテインメントだけでなく、教育や介護といった明確な課題を解決する手段としても、活用が進んでいくでしょう。いずれは、各家庭に当たり前のようにコミュニケーションロボットがいる社会になっていくかもしれません。