シュマルツ株式会社 代表取締役社長 ゲッテゲンス・アーネ 氏
手動搬送システム営業部 課長 山内 大輔 氏
手動搬送システム営業部 マーケティング担当者様
物流など重量のある荷物を搬送する仕事において、身体に負担がかかることが人材不足難と相まって深刻な問題となっています。
そのような背景から重量物を搬送するアシスト機器として発売されたのが移動式の真空バランサー「ジャンボフレックスピッカー」です。置き場所の制約も少なく、フォークリフトやパレットトラックと組み合わせて使用ができます。ジャンボフレックスピッカーがどのような革新をもたらすのか、シュマルツ株式会社のショールームを訪問し、ゲッテゲンス・アーネ氏、山内 大輔氏、マーケティング担当者様にお話を伺いました。
シュマルツグループは1910年にドイツ南部のグラッテンで創業された歴史ある企業です。1984年に真空機器の生産を始め、現在は手動搬送システムとFA用真空機器のグローバルトップメーカーとして知られています。
2002年にはアジア初の現地法人として、日本にシュマルツ株式会社を設立しました。週に2回定期的にドイツから日本への納品を行い、国内メーカーと同様の出荷環境を整備しています。
「当社の強みは真空技術にあります」と山内氏が語るように、真空の力を利用して荷物の重量を0に近づけ、重量物の積み替えをサポートする製品を展開しています。
シュマルツ社の製品はモジュラー化されており、真空エアを発生させる真空発生器、様々なデザイン・サイズ・材質の吸着パッド・アタッチメント、エジェクタやパッドを繋ぐジョイント・フィルター、ホースなどの配管部品、バルブ、真空スイッチといった真空吸着システムを構成する製品を幅広く取り揃えています。そのため最適な製品を組み合わせて質の高い搬送システムを構築することができます。
また、同社では産業用ロボットや協働ロボットの先端に取り付ける真空式のロボットハンドも提供しており、さまざまなロボットメーカーとの協業による事例があります。
「最も重視しているのは、作業者の安全とプロセスの信頼性です」とゲッテゲンス社長が語るように、警報装置や保護回路を備えた安全設計や事故の予防を考えた操作コンセプトで、作業者が老若男女問わず安心して作業できるような製品作りに取り組んでいます。
手動搬送システムは、荷物を搬送する作業をアシストするソリューションです。作業者が少ない力で重量のある荷物を移動させることができるため、身体への負荷を軽減し作業の効率性を高めます。
シュマルツ社はさまざまな手動搬送システムのソリューションを提供しています。代表的なものが真空バランサー「ジャンボ」シリーズです。
ジャンボは、真空発生器、リフティングユニット、操作ハンドル、真空グリッパーで構成されています。真空発生器がリフティングユニットから連続的に排気を行い、真空グリッパーに荷物が接触すると吸着して真空圧が上昇するため、リフティングユニットが収縮して荷物が上昇する仕組みです。
例えば「ジャンボフレックス」は、最大50kgの荷物を片手で搬送することができます。荷物の昇降、リリースまで指一本で操作することが可能です。
また「ジャンボエルゴ」は、バイクのスロットルのように操作するグリップタイプのハンドルを持つ真空バランサーです。最大300kgまでの木板、段ボール箱、ソーラーパネルのような大きく重い荷物を安全な距離を保ちながら動かすことができます。
ジャンボシリーズでは、搬送したい荷物に応じて様々な種類の真空グリッパーを選んで取り付けることができます。例えばジャンボフレックスの場合は、ビニール袋用の①「スカート付き円型吸着パッド RG-SKIRT」、円形のドラム缶向けの②「円型吸着パッド RG」、多品種の荷物に対応可能な③「マルチグリッパー」などがあります。
真空バランサーを移動させるには、クレーンシステムが必要です。使用環境に応じて、ジブクレーン、天井クレーンを選択できます。
このようにシュマルツ社では多彩な手動搬送システムのソリューションを提供しています。しかし、従来のソリューションでは、クレーンシステムを設置するためにアンカーを打って固定する必要がありました。
「レンタル倉庫なのでアンカーを打てない」「場所を限定せずに使いたい」「ピッキングした荷物を離れた場所で積み替えをしたい」といったニーズに応えて誕生したのが「ジャンボフレックスピッカー」です。片手で簡単に40kgまでの荷物を積み替え可能で、荷物を約1,800 mmの高さまで持ち上げることができます。
一番の特徴が、さまざまなフォークリフトやパレットトラックに組み合わせて使用する移動式の真空バランサーだということです。バッテリー駆動のため配線も不要。大容量バッテリーは5分で交換可能なため、すぐに再始動できます。
コンパクトに収納できるため、低いゲートを通過したり、エレベーターに乗せて異なるフロアで使用したりすることも可能です。物流センターや配送センターなどのオーダーピッキングや荷物の積み替えの作業を、作業者に負担をかけることなく迅速に実施できます。
ジャンボフレックスピッカーでも他のジャンボシリーズと同様に搬送したい荷物に応じて豊富な種類の真空吸着パッド・アタッチメントから選ぶことができます。
「何を運ぶのか、どのくらいの距離をどの程度のスピードで運ぶのかといった条件によってシステムが変わってきます」と山内氏が解説するとおり、実際の作業現場で事前にテストを行ってから最適なシステムを提案してくれるそうです。
シュマルツ社ではショールームや出張デモで各製品の操作を体験することができます。今回はショールームにお邪魔しました。
「ちょっとコツは必要ですけど、誰でもすぐに使えますよ」という山内氏の言葉に半信半疑でしたが、ジャンボフレックスピッカーを操作してピッキング作業を体験してみました。
まずは山内氏のお手本です。
ジャンボフレックスピッカーのセッティングは、駐車スタンドを伸ばした状態でフォークリフトなどの爪を差し込み、タッチパネルで駐車スタンドを収納します。
真空発生器をオンにすると、ジブのロックが解除され、自動的に駐車スタンドが下降します。
使用後にジブをロックすると真空発生器が自動的に停止し、駐車スタンドが上昇します。「自動処理によって待機時間を少なくする工夫をしています」(山内氏)。
大容量バッテリー。装置内で充電が可能で、バッテリー交換は5分でできるという使い勝手の良さが光ります。
ジブは360°回転可能なため、広範囲の積み替え作業ができます。
搬送の際は、真空吸着パッドを荷物に接触させます。
真空吸着パッドが真空状態になって荷物に吸着し、リフトチューブが縮み荷物は上昇します。
作業者がトリガーレバーを握ると、空気が流入して真空圧が下がり、リフトチューブが伸びて荷物が下降します。
トリガーレバーをさらに深く握ると、真空吸着パッドが荷物から外れて荷物を下ろすことができます。この一連のプロセスで、パレットに荷物を積み、別の場所へそのまま移動できます。
スカート付き円型吸着パッドに取り換えます。
大きなビニール袋や紙袋も軽々と持ち上げられます。このように真空吸着パットは簡単に取り付け・取り外しが可能です。
ということで実際にやってみました。アタッチメントを荷物に吸着します。
そうすると荷物がゆっくりと持ち上げられます。ちなみにこの荷物は30kgほどの重さがあります。
うまく吸着して持ち上げることができました!
最初は偏った位置に吸着して荷物が傾いてしまったり、荷物を降ろす時のトリガーレバーを握る深さの調整が難しかったりしたのですが、すぐにできるようになりました。
「我々の使命は、すべての人にとって働きやすい職場を作ることです」とゲッテゲンス社長は力を込めて語ります。
重量物の搬送作業は、腰痛などの筋骨格系障害を引き起こす要因となります。厚生労働省が発表した「職場における腰痛予防対策指針」では、満18歳以上の男性は体重のおおむね40%以下の重量制限が定められています。また満18歳以上の女性については「女性労働基準規則2条」で、断続作業の場合30kg、継続作業の場合20kgの重量制限が定められています。このため官公庁も重量物取り扱いに対し、アシスト装置の利用を推奨しています。
今まで搬送システムの導入をあきらめていた方、この機会に場所の制約が少ないジャンボフレックスピッカーを検討してみてはいかがでしょうか。