前回記事「ロボット活用の基礎知識~導入イメージをつかむ~」でもお伝えした通り、 ロボットを導入する際に、まずやっておきたいのが検討チームの体制作りです。 とはいえ具体的に何をすればよいのか手順が見えにくい場合も多いのではないでしょうか。 そこでここでは導入の最初のステップである、検討チームを構築する手順についてご紹介します。
ロボットの導入は一部の部門ではなく、全社で取り組むべきものと言えます。というのもロボット導入で期待する効果は、ある一部分の作業の置き換えではなく、生産工程を見直し全体最適を図るチャンスになるからです。 生産工程だけでなく、他部門に効果を波及させるため、各部門でロボット導入の目的・意義を理解し協力を得る必要があるでしょう。
例えば営業部門では、ロボット導入は顧客へのアピールにもなり、新規受注につながることもあります。 また、情報システム部門においては、生産システムとロボットの制御を連携させる仕組みを検討する必要があるため、担当者の参加が不可欠です。
なにより、経営者がロボットを導入することで業務を革新させる強い意志を持ってリーダーシップを取る必要があります。 経営層と業務部門とで一体となって進める必要があり、かつ業務側では部門を横断したチームを作る必要があります。小規模の企業であれば経営者自ら広い視点で関わる必要がでてくるでしょう。
そのためロボットの導入にあたっては、経営者、工場長が先導してできるだけ多くの部門を巻き込んで組織横断のロボット導入の検討チームを作っておきましょう。
ある企業では、ロボットの導入にあたり、製造部門、設計開発部門、金型部門を含めたプロジェクトチームを結成しました。 工期、施工方法、工場レイアウトなど工場全体に影響するため、各部門からメンバーを集め、ロボット導入の目的・目標を共有しました。
チームを作ったら、ロボット導入についての検討を行っていきましょう。
ロボットを導入する際には、ロボットと作業者の役割分担を見直す必要があります。 検討チームでは経営視点と現場視点の両方から課題を検討し、部門を横断した意見交換をしていくことが導入効果を大きくすることに重要な役割を果たします。
経営者から見た経営上の課題について、チームで共有します。ロボットがどのように課題を解決するのを期待するか、 認識を合わせておくことで、異なる部門でも同じ目標に対して取り組むことができるようになります。
経営上の課題を理解した上で、現場をよく知るメンバーが作業工程の課題を具体的に指摘していきます。 ロボットの得意な分野を最大限に活用できるように、経営層と実作業に携わる社員が意見交換をすることで導入イメージを擦り合わせていきます。
ロボットを導入すると工場全体のレイアウトや動線が変わります。 これらの変更によって工程間の連携がうまくいかず、付帯作業に人手が必要になってしまう可能性もあります。 ロボット導入後も工程間の連携がスムーズにいくように、現状どのようなラインになっているのか、調査してチーム内で共有する必要があります。
ロボットを導入した後に、課題を解決できたのか検証するために、目標を設定しましょう。 例えば人件費を年間で〇円減らす、作業員の労働時間を〇時間減らす、月間の生産数量を〇個増やすといったことが考えられます。
目標をもとにして、具体的な費用対効果を検討します。 ロボットは何でもできるという誤解も多く、想定していなかった苦労や失敗もたくさん出てきます。 できるだけ詳細に費用対効果について検討しておくことで、想定外の苦労を減らすことができます。
ロボット導入で必須となるのが、外部事業者の活用です。ロボット導入に関連する事業者には「ロボットメーカー」と「SIer(システムインテグレータ)」があります。
ロボットメーカー、SIerそれぞれの役割は原則として以下の通りです。
ロボット、並びにロボットシステムを構築するための機能を提供します。
ロボット・周辺装置・プログラムを組み合わせて、導入企業の要望に合わせたシステムを構築します。
ロボットを導入するには、ロボットメーカーと導入企業とをつなぐ役割を持つSIerとの連携が非常に大切になってきます。 特に初めてロボットを導入するときは、SIerと信頼関係を構築し、事前検討した内容をしっかりと伝えることで、スムーズなシステムの構築が可能となります。
ロボットメーカーやSIerを探すには、自社工場に設備を納入する実績のあるメーカーや商社に紹介してもらう方法や、 インターネットでなどで検索して直接問い合わせる方法、ロボットを導入している事業者から紹介してもらう方法が考えられます。
このようにしてSIerの候補を絞り込み、SIerからも情報を収集しておきましょう。
こうして検討チームで討議した内容と、SIerなどからの情報をもとに、経営者がロボットの導入可否について意思決定を行う必要があります。 できるだけ詳細な事前検討をしておくことが、正しい意思決定につながり、想定外の苦労を軽減することにつながるでしょう。
次回は、「ロボット活用の基礎知識~要件検討編~」をお届け予定です。