安全柵なしで作業可能な協働ロボットは世界市場規模を拡大し続けており、その波は日本でも同様に発生しています。ここ数年はコロナ禍により設備投資が抑えられてきたものの、長い目で見ればより私たちにとって身近な存在となることはほぼ確実でしょう。
さて、皆さんは、協働ロボットとは何かと問われて「○○だ」とはっきり答えることができるでしょうか。従来の産業用ロボットとの違いについても「言われてみれば考えたことがなかった」という方もいらっしゃるはずです。
本記事では、協働ロボットの定義やメリット、活用で押さえたいポイントなど基本事項をまとめてご紹介します。
「協働ロボットはその名の通り、人間とともに協力して働くためのロボットである」と定義できます。そして、これがそのまま産業用ロボットとの違いになります。
従来の産業用ロボットは主に、人の作業を丸ごと置き換える形で導入されてきました。溶接・塗装や搬送に使われる垂直多関節ロボット、組み立てが得意な水平多関節ロボット(スカラロボット)、高速な動きが可能なパラレルリンクロボット……。従来の産業用ロボットは、いずれも安全確保のため柵で囲われ、人とは独立した単純作業を行うのが主でした。
協働ロボットは、人の隣でピッキングや包装、ラベル貼り、積み込み、検査など自動化可能な作業に取り組むことを想定して製造されています。
協働ロボットを活用するメリットをもう少し具体的に見ていきましょう。
人の隣で作業を代行する協働ロボットに最も期待されているのは、人手不足解消効果です。とある食品メーカーでは、一部の作業を協働ロボットに担わせることで、それまで5人の人員が必要だった出荷作業を2人で行えるようになったそうです。複数の作業内容をティーチングし、効率よくロボットを投入することができれば何倍もの人の作業を代行させられる未来も見えてきます。
人間の作業を代行するだけでなく、適切な作業に投入することで何倍もの生産性をあげられるのも協働ロボットのメリットです。人に対するロボットの強みとして、“正確な作業を疲れずに繰り返すことができる”という点があります。精度が求められる単純作業はロボットに任せ、人はより臨機応変さや微細な感覚が求められる作業を担うというのが、協働ロボット導入のベストな形です。
コロナ禍において新たに浮かび上がった協働ロボットのメリットが、工場内の「3密対策」につながるというものでした。これまで人が密集していた現場にロボットを投入することは、当然「密集」を防止し、人との会話や接触がなくなれば「密接」対策にもなります。コロナ禍が収束した後も、「ウイルス」はリスクの一つとなり続けます。その対策として協働ロボットには注目が集まっています。
定格出力が80Wを超える協働ロボットが安全柵を設けるといった対策なしで人間と共同作業を行うには、以下のような条件を満たすことが求められています。
ロボットの構造や機能に関する要件はベンダー側が対処しますが、工場内のリスクアセスメントやリスク低減策の策定・周知には自社で取り組まなければなりません。
リスクアセスメントは例えば、下記の手順で実施します。
柵の設置が義務付けられていないからといって、事故の心配はないと決めてかかるのはNGです。リスクは常に存在することを前提に、評価と対応策の策定に乗り出す必要があります。
協働ロボットの導入を成功に導くコツは、「なるべく具体的に導入する作業と期待される効果を洗い出しておく」ということです。はじめに課題ありきで計画を進めなければ、協働ロボットのメリットを十分に得ることはできません。頻繁にオペレーションが変更されるような作業や、速度や百kg近いものの運搬が求められる作業は協働ロボットには不向きです。繰り返し単純な動作を繰り返すことが求められるような作業をうまく切り出すことが協働ロボットをうまく活用するためには必要でしょう。
導入のハードルが高い場合は、まずはレンタルしてみるのも一つの手です。オリックス・レンテックのロボットレンタルサービス「RoboRen」では、国内外のトップメーカーの協働ロボットを取り揃えています。
導入が進む協働ロボットの従来の産業用ロボットとの違いやメリット、リスクアセスメント手法などの基本事項についてご紹介してまいりました。
協働ロボットは、いわばこれまで人間の仕事に含まれていたロボットの得意な仕事を代行してくれるパートナーです。現在のオペレーションの中で「ロボットの方が得意なのでは?」という部分がないか、ぜひ現場の従業員に尋ねてみてください。そこにこそ、協働ロボットの可能性がひそんでいるはずです。