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ロボット Insight

農業を自動化するロボットの活用事例

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight 農業を自動化するロボットの活用事例

ロボット技術やITを活用した新たな農業の形である「スマート農業」が注目されています。力仕事から繊細な作業まで、さまざまな場面で農業の負担を軽減するロボットが活躍しており、農業の自動化や省力化、高品質化に貢献するようになってきました。

人手不足、身体への負担、新規就農者の確保、農業技術の継承といった多くの課題を持つ農業を進化させる手段として、農業ロボットの更なる活躍が期待されています。

この記事では、農業にも活躍の場を広げているロボット技術の事例をご紹介します。

植物工場でのロボット活用

農業ロボットを最も導入しやすい環境の一つが、植物工場です。植物工場は温度や湿度、光、空調などのすべてが管理された屋内環境で農作物を育てる仕組みであり、新たな技術を積極的に導入して最先端の農業を行っています。植物工場は人工的に管理された環境であるがゆえにロボットも導入しやすく、多くのロボットが植物工場での実証実験を進めています。

植物工場と聞くと全自動で効率的に栽培が行われているイメージを持つと思いますが、一昔前まではそうではありませんでした。苗の植え替えや栽培棚への移動、収穫といった作業に多くの人手がかかることから、植物工場は思ったよりも儲からない事業として認識されており、実際に多くの企業が参入と撤退を繰り返していたのです。

しかし、近年の植物工場はロボットの活用によってイメージ通りの姿に進化しています。例えば、国内で最も成功している植物工場では検品やパッキング以外の作業の自動化を実現しており、電動昇降カートが栽培棚の上げ下ろしをしたり、ロボットがアームを伸ばしてレタスを収穫したりする様子を見ることができます。この植物工場では従業員の人数を半分以下にすることで人件費を削減できただけでなく、ミスや作業のバラツキの削減による品質向上の効果もあったといいます。

植物工場の多くは多段式の栽培棚で植物を育てるため、空間効率がよく大量生産がしやすいという特長があります。また、栽培に最適な環境を保つことによって短期間で植物が育つため、1年に10回以上収穫できる場合があるのも大きなメリットです。

ロボットによる自動化で効率よく栽培できるようになれば、植物工場のメリットが最大限に発揮されるでしょう。ロボットのおかげで、植物工場はようやく儲かる事業になりつつあるのです。

ドローンによる農薬散布や収穫

2021年現在、農業分野で最も活用されているロボットの一つがドローンです。

特に農薬散布は、ドローンの用途として一般的になりました。広大な農地に農薬を散布する作業は大変な重労働でしたが、ドローンを操作して農薬を散布することで負担が大きく減り、時間も大幅に短縮できます。これまで農薬散布のために活用されていた無人ヘリコプターなどに比べると、ドローンは扱いやすくて価格も安価です。

ドローンによる農薬散布の技術は進化しており、センサーを組み合わせることで害虫の発生箇所にのみピンポイントで散布する技術が開発されています。ほかにも、複数のドローンが自律制御し、短期間で農薬散布を終わらせるという実証実験も行われました。ドローンによる農薬散布は、より効率的かつ高品質に実施されるようになっていくでしょう。

農業でのドローンの活用シーンは農薬散布だけに留まりません。さまざまな用途でドローンを活用する事例が各所から報告されています。

例えば、農薬散布に近い用途として人工受粉でのドローンの活用が挙げられます。花粉を混合した溶液を散布して人工受粉させるという仕組みで、岩手県などで実証実験が行われました。従来の人工受粉は一つ一つ人間が手動で行うという方法で大変な手間がかかっていましたが、ドローンを活用することで作業時間を1/4にまで削減できたということです。

また、最近では海外のベンチャー企業がドローンを活用した自動収穫システムを開発しています。これはドローンに搭載したカメラの情報を基にAIが収穫可否を判断し、ロボットアームが摘み取った後に収穫ボックスまで搬送するという仕組みです。間伐や剪定といった作業にも応用できる技術であり、今後の実用化に期待が集まっています。

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農業機械のロボット化

各種農業機械のロボット化もあり、農業の自動化が進んでいます。ロボット化した農業機械の中で代表的なものが、自動走行トラクターです。トラクターは耕うんから収穫までこなす使用頻度の高い農業機械ですが、まっすぐ走るだけでも初心者にとっては難しく、運転ミスをすると無駄なスペースが生じたり、農作物を踏んでしまったりします。そこで、誰でも熟練の農作業者と同じように農作業ができることを目的としてGPS等の技術を搭載した自動走行システムが開発されました。自動走行システムによって、誤差数センチという高精度な農作業が既に実現しています。

現在は田植え機やコンバインなどにも技術展開されており、農作業全体をロボットがサポートする未来が実現しつつあります。また、メーカー各社は農業機械のロボット化だけでなく、IoTによるデータ収集やデータ分析のプラットフォームもセットで提供しています。データの収集・分析・活用というサイクルを回すことで、農業はよりスマート化していくでしょう。

農業ロボットの活躍に期待が集まっている

製造業や物流業だけでなく、農業においてもロボットが活用される時代になりました。ロボットの活用によって誰でも簡単に素早く農作業ができるようになれば、多くの課題を持つ農業が進化し活性化されていくでしょう。また、食料自給率の低下といった日本全体の課題についても、くい止めることができるかもしれません。

また、農業で活用されているロボットは今回ご紹介したもの以外にもたくさんあります。例えば、比較的小規模な農家では大型のロボットではなくアシストスーツを導入して、重いものを持ち上げる補助をしたり、腰や腕にかかる負担を軽減したりする事例が増えています。

農業の未来は私たちの生活に大きく影響すると予想できます。

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