製造業におけるドローン活用の最新動向についてご紹介します。
ドローンの活用シーンが広がる中で、製造業がドローンを導入して業務改善に取り組む例も増えてきました。ドローンの一般的な用途は、空撮・測量・インフラ点検・輸送・農薬散布などですが、今後は製造業でも幅広く活用されていく可能性があります。
ドローンを活用して、生産ラインの見える化をする実証実験が行われています。
これは、工場内でドローンを飛ばして生産ラインの3Dモデルを作成し、設備や人員の配置を把握するという取り組みです。同時に、設備に取り付けたセンサーなどのIoT機器で生産データも収集することで、生産ラインの状況をリアルタイムで把握することができます。
近年の製造業では、工場内のあらゆるデータを収集・分析して生産性を向上させるスマートファクトリーへの取り組みが進んでいます。ドローンの活用もその一環であり、生産ラインの3Dモデルを参考にして設備や人員の最適な配置を検討することが目的です。
ドローンは在庫管理の効率化にも役立つと期待されています。
製造業での手間のかかる作業の一つに、棚卸しがあります。棚卸しでは、大量の製品・部品・原料が倉庫内のどこに何個あるのかを一つずつチェックしていく必要があるため、完了までに数日かかることも珍しくありません。大規模な工場であれば、一週間以上かかることもあるでしょう。
しかし、ドローンとRFIDを組み合わせることで、棚卸しにかかる手間を大幅に削減できる可能性があります。ICタグを在庫に取り付けておき、リーダーを搭載したドローンが倉庫内を飛び回ることで、まとめて在庫情報を取得するという仕組みです。
ドローンを活用した棚卸しには、「短時間で棚卸しを完了できる」「少ない人員で棚卸しができる」「人によるミスをなくせる」といったメリットがあり、製造業企業から注目を集めています。ドローンを活用した在庫管理ソリューションを提供している企業は既にあるので、これから普及していくことが期待できます。
ドローンの主な用途としてインフラ点検がありますが、製造業での点検業務にもドローンが役立ちます。
例えば、老朽化したプラント設備の点検業務でドローンが活用される事例が増えています。人が行きにくい高所や、近づくと危険な設備の点検をドローンで実施することで、設備保全を効率化することが目的です。ドローンが人の足と目の代わりになることで、点検の手間が削減されるとともに、安全性も高まります。
ドローンでの点検といえば、屋外の広い場所での点検をイメージするのではないでしょうか。しかし、最近では狭い場所や暗い場所でも安定して飛行できる設備点検専用のドローンが登場しており、ダクト内や天井裏などの点検もドローンで行えるようになってきています。
製造業でのドローンの活用が期待されていますが、広く普及するためにはいくつかの課題が残っています。
一つ目は、GPS制御機能が使えない可能性があることです。一般的に、ドローンはGPS信号によって自身の位置を把握し、自動で補正することで安定飛行しています。しかし、工場などの屋内ではGPS信号が届かない場合があるため、操縦者のスキルが高くないと事故を起こす危険性が高まります。また、工場内を常に飛び回るような使い方を想定すると、ドローンが自律飛行することが求められますが、GPS信号がない環境だと難しい傾向にあります。
屋内でもドローンを安定飛行させるための技術としては、Wi−Fiやビーコンを使った屋内測位技術や、超音波センシング技術などがあります。そういった技術の進歩が、製造業がドローンを活用するためには必要不可欠になるでしょう。また、人や設備に当たらないように障害物の検知機能を搭載するなど、安全面への配慮も重要です。
二つ目の課題は、製造業向けのドローンや関連サービスが少ないことです。製造業でのドローンの活用実績はまだ少ないのが実態であり、特に生産ラインの見える化は実証実験の段階にあります。実証実験で十分な成果が出ると判断された後に、用途にあったドローンやソフトウェアなどの関連サービスが開発されていくでしょう。
業務用ドローンは成長市場であり、2020年から2025年の間に販売台数が2倍以上になると予想されています。ドローンメーカー各社は技術開発に力を入れているため、今後は製造業向けのドローンや関連サービスが充実していくのではないでしょうか。
生産ラインの見える化、在庫管理、点検業務などにドローンを活用することで製造業にはさまざまなメリットがあります。まだ実証実験の段階にある用途も多いものの、いずれは製造業でも幅広くドローンが活躍するようになるでしょう。
上述した以外にも、ドローンの活用シーンは増えていくと考えられています。ドローンの最新動向に注目し、自社の課題をドローンで解決できそうであれば、積極的に活用していきたいものです。