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物流網のロボット化を進めるアマゾン

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight 物流網のロボット化を進めるアマゾン

新型コロナウイルス感染症の拡大により、在宅時間が長くなる中、インターネット通販の市場が拡大しています。それに伴い、インターネット通販事業者の物流施設では人手不足が深刻化しています。その対策として注目を集めているのがロボットです。インターネット通販の世界的大手であるアマゾン・ドット・コム(Amazon.com)でもロボットの活用が進んでおり、グループ会社のアマゾン・ロボティクス(Amazon Robotics)にてロボット製品の開発なども行っています。
 アマゾン・ロボティクスの前身は、2003年に設立されたキバ・システムズ(Kiva Systems)という企業です。ネットワーク管理された施設内で、商品棚を載せて動き回る自律移動ロボット「Kiva」(キバ)を中核にしたロボット物流システムを展開していました。ロボットが商品を配送作業員まで届けるシステムで、作業員は商品のある場所まで行く必要がなく、負担が大きく低減するとともに、生産性も大幅に高めることができます。アマゾンは2012年にキバ・システムズを完全子会社化し、2015年に社名をアマゾン・ロボティクスに改称しました。

日本の施設でもロボットを活用

自律移動ロボットは1000ポンド(約454kg)搭載可能タイプと、3000ポンド(約1361kg)搭載可能タイプの2種類があり、このロボットをはじめとした物流システムを活用することで従来の約半分の面積で同じ物量を扱うことができ、時間あたりの配送量も2~3倍にできます。アマゾンでは2012年の買収から2年間で自社の物流施設に1万5000台のロボットを導入。そして現在、米国、英国、ポーランド、日本などの拠点で20万台以上が稼働しているとみられ、1倉庫あたり20%のコストカットに成功しているもようです。
 日本では2016年8月に開設した「アマゾン川崎フルフィルメントセンター(FC)」(川崎市高津区)に日本の施設としては初めて導入されました。導入台数は100台以上とみられ、2016年末から本格的に稼働しています。そして2018年9月から稼働を開始した「アマゾン茨木FC」(大阪府茨木市)でもロボットシステムを導入したほか、2019年9月稼働の「アマゾン川口FC」(埼玉県川口市)、2019年10月稼働の「アマゾン京田辺FC」(京都府京田辺市)、2020年10月稼働の「アマゾン坂戸FC」(埼玉県坂戸市)ならびに「アマゾン上尾FC」(埼玉県上尾市)でもロボットを導入しています。

配達ロボットの開発・実証も推進

アマゾンでは、物流施設以外で使用するロボットの取り組みも進めており、その一つとして、配達ロボット「アマゾン・スカウト」(Amazon Scout)を開発しています。アマゾン・スカウトは、米シアトルにあるアマゾンの研究所で開発された自律移動型ロボットで、サイズは小型のクーラーボックス程度で、歩行者やペット、障害物などをロボット自ら回避しながら、歩道を走行します。
 アマゾン・スカウトのベースとなっているのが、ロボットベンチャーの米ディスパッチ(Dispatch)が開発した配達ロボット「Carry」(キャリー)です。ディスパッチは、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学、ペンシルベニア大学、プリンストン大学のロボット工学ならびにAIの専門家が設立したベンチャー企業で、アマゾンが2017年に買収しました。
 アマゾンでは、米ワシントン州スノホミッシュ郡の一部エリアにおいて2019年1月から、カリフォルニア州アーバイン地域において2019年8月からアマゾン・スカウトの配達実証を開始。数千回のロボット配送を実施し、ロボットの移動性能やさまざまな天候への耐久性を確認しました。
 2019年までは実証的な意味合いが強い取り組みでしたが、新型コロナウイルス拡大に伴うインターネット通販需要の高まりを受け、配達員の人手不足が大きな問題となる中、2020年からは商品配送を補完する役割を担っており、現在はジョージア州アトランタとテネシー州フランクリンの一部エリアでもアマゾン・スカウトによる配達を実施しています。アマゾンでは2040年までにCO2の実質排出量をゼロにする目標を掲げており、その一環として、配達時の電気自動車の活用などとともに、ロボットの活用にも積極的に取り組んでいく方針です。

新拠点を整備しロボット開発を加速

ロボット関連の取り組みはアマゾンの他の関連会社でも進んでおり、クラウドサービス事業などを展開するアマゾン ウェブ サービス(AWS)では、ロボティクスアプリケーションを容易に開発ならびに検証できるサービス「AWS RoboMaker」を提供しています。オープンソースのロボティクスフレームワーク「ROS(Robot Operating System)」を、機械学習、モニタリング、分析サービスといったAWSのサービスに接続でき、開発環境、物体認識、自然言語処理、自律動作、シミュレーター、フリート管理などが提供され、データのストリーミング、ナビゲーション、通信、認識、学習に対応したロボットを開発することが可能となります。AWS RoboMakerを利用することで、開発者はAWSマネジメントコンソールからワンクリックでアプリケーション開発を開始でき、大規模なインテリジェントなロボティクスアプリケーションの開発・検証も容易に行えるようになります。
 アマゾンでは、こういったロボット関連の取り組みをさらに強化するため、米マサチューセッツ州ウエストボローにて、開発・製造機能が一体となったロボット関連の新拠点を整備しています。オフィス、研究開発、製造の機能をすべて備えた拠点で、投資額は4000万ドル(約44億円)以上。延べ床面積は3万2500㎡で、開設は2021年内を予定しています。200人が新規雇用される見通しで、同じマサチューセッツ州内にあるアマゾン・ロボティクスの拠点と連携し、ロボット事業の体制を強化します。
 新拠点についてアマゾン・ロボティクスは「設計、製造、プログラムのチームが集結し、ロボットの開発・製造に一貫して取り組める世界トップクラスの施設となる」としており、世界的なインターネット通販事業者にとってもロボットはこれまで以上に必要不可欠な技術となっていくようです。

ロボット Insight 物流網のロボット化を進めるアマゾン

(執筆:産業タイムズ社)

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