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第9回ロボット大賞が決定!進む社会実装

レンテックインサイト編集部

 皆さま、こんにちは。FA(ファクトリーオートメーション)・自動化、さらには製造業のDX・デジタル化の専門紙「オートメーション新聞」の編集長をしている剱持知久(けんもちともひさ)です。レンテック・インサイト連載6回目は、先日発表された「第9回ロボット大賞」について触れてみましょう。

ロボット大賞とは?

 「ロボット大賞」ロボットに関心のある方であればこの賞の名前を聞いたことがあると思います。隔年で開催している国際ロボット展でも、受賞ロボットや技術を紹介する大きなコーナーが設けられているので、そこをチェックしているという人もいるかもしれません。
「ロボット大賞」は、経済産業省と一般社団法人日本機械工業連合会、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省による共催で、2年に一度、優れたロボットや関連技術などを表彰しています。2006年に第1回が行われ、2020年は第9回目として行われました。
 応募されたロボット関連技術の中から選ばれるという形となっていて、3年以内に国内で活躍した・取り組まれたロボットで、ロボット本体だけでなく、ロボットに関連するビジネス・社会実装、ロボット応用システム、要素技術、高度ICT基盤技術、研究開発や人材育成が対象になっています。応募は研究開発段階にあるものでも可能ですが、「社会に役立っているロボットを表彰する」というのが賞のコンセプトとなっています。ロボットは人の役に立ってナンボの世界であり、ロボット大賞の受賞製品を見れば、いまどんなロボットが社会で活躍しているのかが分かります。ロボット大賞を知らなかったという人は、ぜひチェックしてみてください。

第9回ロボット大賞
https://www.robotaward.jp/index.html

第9回ロボット大賞は?

 さて第9回目となった今回は、どんなロボットが受賞したのかというと、工場の自動化はもちろん、建設や農業、介護といった労働力不足が深刻化している産業に対する解決策となるロボットが選ばれました。またロボット開発者やシステムインテグレータ等の業務に役立つ調達サービスや、宇宙空間や深海といった人間では到達できない領域を開拓するロボット技術など日本のロボット産業の充実を感じさせるラインナップとなりました。

ファナックの新型協働ロボット、未活用領域への導入に期待大

 経済産業大臣賞に選ばれたのは、ファナックの協働ロボット「CRX」です。
工場や製造現場では産業用ロボットの活用が進んでいますが、まだ使われていない工程や作業、業界が多くあります。CRXは「安全、使いやすい、壊れない」をテーマに開発され、各軸にセンサを搭載して高い接触停止機能を搭載。衝突による人への危険と故障発生を最小限にしています。またダイレクトティーチングやタブレットを使った直感的なプログラミングに対応し教示作業が簡単にできるようになっています。こうした安全性や導入の容易さの特長が、ロボット導入のハードルを下げるものとして高く評価されました。

農業、建設土木、介護でも進むロボット活用

 製造業以上に労働力不足が課題となっているのが、農業や建設・土木、介護業界。これらは肉体的疲労の大きな労働で、それを代替または補助するものとしてロボットへ寄せる期待は大きいものがあります。しかしながら屋内で無機物を対象とする製造業に対し、農業や建設・土木業は屋外であり、ロボットや機械にとっては厳しく、作業標準を作りにくい環境。介護は体格の違いや感情がある人が相手となり、なかなかロボットや自動化が進んでいないのが実態です。それでも近年は技術の進化によって変わりつつあるようです。

 農林水産大臣賞に選ばれたのは、inahoの自動野菜収穫ロボットとRaaSモデルによる農業者向けサービス。自動野菜収穫ロボットを農業者に貸し出し、収穫高に応じて利用料を払ってもらうサービスで、農業へのロボット導入はやはりコスト感が課題となっており、その初期費用が軽減できるサブスクリプションのビジネスモデルが普及を促進するものとして評価されました。
 また優秀賞 農林水産業・食品産業分野には、トプコンの農機向け後付け式の自動化システムが選ばれました。既存の農機具に後付けして自動化機能を付与できるもので、こちらも導入や普及促進には効果が期待されます。

 建設・土木では、国土交通大臣賞となった西日本高速道路・清水建設・岐阜工業によるトンネル覆工コンクリート自動施工ロボットシステムは、山の中のトンネルを作る際の覆工コンクリートの打込みから締固め、打止め、脱型枠までの一連の作業を自動制御するものだそうです。従来は熟練者の経験と勘、人力で行っていたものを完全自動化し、すでに複数のトンネルで実績が上がっているそうです。

 介護向けでは、FUJIの移乗サポートロボット「HUG T1-02」が厚生労働大臣賞に選ばれました。排泄介助向けに開発されたロボットで、人をベッドから車椅子、車椅子からトイレに移乗させる際、介助者が人を抱き抱えて行っているものを代替します。排泄介助は介護の現場からの要望が多いにもかかわらず、それを補助するロボットはこれまでなかったそうです。これにより介助者の負担が軽減でき、すでに市場から高評価を受けているそうです。

薬局の自動化や研究用マウス飼育もロボット化?

 ロボットのアプリケーションは本当にニッチで、色んなところにニーズがあると思わせてくれるのが、日本ベクトン・ディッキンソンの次世代薬局ロボ(薬剤自動管理)と自動薬剤受取機、デジタル・シェルフOTC販売による薬の受け取りを自動化システムです。優秀賞(ビジネス・社会実装部門)に選ばれました。
薬を服用している人にとっては薬の有無は体調や命を左右するものであり、時間に関係なくいつでも薬を受け取れるのが理想。そこで、このロボットは薬局に特化し、薬の受け取りを自動化することでそうした不安をなくせるとのことです。
 またグローバル・リンクス・テクノロジー「RoboRack」(優秀賞 介護・医療・健康分野)は、もっとニッチな領域のロボットです。研究用のマウスは年間で約1千万匹が必要とされ、その飼育を自動化するロボットシステムです。現在はそれを若手技術者が飼育しており、それを代替します。こうした用途はこれまで聞いたことがなく、とても新鮮に感じた一方で、まだロボットが活躍できる場があることを示唆しています。

ロボット産業を支える部品調達の効率化も受賞

 一風変わった切り口からロボット大賞を受賞したのが、ミスミグループ本社のオンライン部品調達システム「meviy」(メヴィー)。日本機械工業連合会会長賞に選ばれました。
 ロボットは本体だけで機能を果たせる訳ではなく、いくつもの部品を組み合わせてシステムとして成立させることで完成します。そこで使う部品は標準品だけでは足りず、カスタムや一品ものが必要となり、そうしたカスタム部品の調達をスピードアップできればロボット開発はもっと効率化できるはずということで、そこに貢献しているのがこの「meviy」(メヴィー)です。
 欲しい部品の3Dデータをアップロードすると見積もりから発注までオンラインで行え、短納期で部品を調達することができます。部品点数が多く、特有の部品を設計する必要性が高く、試作が繰り返されることが多いロボット領域には極めて有用な仕組みとして高く評価されました。

ロボット大国、自動化先進国に向けて着々

 このほか警備ロボットやコミュニケーションロボットなどの受賞製品があり、総じて今回は、知らない部分でロボットの社会実装が進んできたという印象を受けました。FAや工場ではロボットや自動化技術の導入が先行し当たり前の光景になっていますが、ほかの領域ではまだこれから。それでも一部では受賞した各ロボットのように、私たちの知らない場所で実績が上がっていて、効率化に一役買っている例が多く出てきています。
ロボット大国、自動化先進国への歩みは着々と進行中。次はどんなロボットが登場し、便利に役立ってくれるのか。楽しみですね。

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