ホームロボットロボットに“命を吹き込む”Mujinの技術

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ロボットに“命を吹き込む”Mujinの技術

レンテックインサイト編集部

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 近年、ロボット業界では数多くのベンチャー企業が国内外で設立されています。その中でも最注目企業という声が多いのが株式会社Mujin(ムジン)です。革新的な産業用ロボットコントローラー(RC)の開発・製造・販売を手がける2011年設立のベンチャー企業で、同社のRCを活用することでロボットに“命を吹き込む”ことができ、自ら考えて動く知能的な産業用ロボットを短期間で導入することができます。その技術を求め、国内外のさまざまな製造・物流企業が同社の門戸を叩いています。

ロボット自ら動作を計画

 MujinのRCは、リアルタイム動作生成、干渉回避、動力学考慮、モーター直接制御、センサー同期制御、リモートアクセスなどを標準搭載しており、EthernetかEtherCATで通信できるサーボアンプがあれば、ロボットメーカーの既存のプログラム言語は一切使わず、数ミリ秒ごとに直接制御できます。ロボットの機種、軸数、機械構造は問わず、即座に運動学解析を実施し、干渉回避などを考えたうえで、一瞬で動作を考えさせることができるようになるRCで、ファナック、不二越、川崎重工業、安川電機、オムロン、三菱電機、デンソーウェーブのロボットに対応しています。
 このRCの性能を訴求するためMujinは、ばら積みされた部品や商品をロボットが自ら考えてピッキングできる技術を世界で初めて開発し、2015年1月から販売を開始しました。国内の自動車メーカーをはじめとした製造業のほか、近年は物流分野からの需要も高まっており、物流倉庫にこのピッキングシステムを導入することで、少なくとも6000種類の商品を仕分けること(超多品種のピースピッキング)ができます。提供できるソリューションも年々拡大しており、現在、ばら積み部品ピッキングや超多品種のピースピッキングのほか、デパレタイジング、パレタイジング、ソーター投入といったロボットソリューションに加え、CTU(コンテナ搬送ユニット)とAGV(無人搬送車)といった搬送型ロボットも提供できる体制を敷いています。

ユニクロなどが採用

 上記のような技術が評価され、大手企業を中心に採用が増えており、これまでにインターネット通販大手のアスクル株式会社、理化学機器商社のアズワン株式会社、日用品卸大手の株式会社PALTAC、自動車部品大手のアイシン・エィ・ダブリュ株式会社、日用品卸総合会社の株式会社坂塲商店などがMujinのロボットソリューションを採用。また海外でも中国インターネット通販大手のJD.comが上海市の大型物流施設において、Mujinのロボットソリューションを導入しています。そして2019年11月には、ユニクロなどを展開する株式会社ファーストリテイリング(FR)とMujinが戦略的グローバルパートナーシップに関する合意書を締結しました。Mujinの技術とFRのノウハウを融合し、アパレル製品向けのピッキングロボットを共同で開発しており、FRの海外拠点を中心に技術を導入しています。
 事業面の拡大も進めており、2019年8月に東京都江東区辰巳へ本社を移転しました。新本社は1万4000㎡のスペースを有し、ロボットの実機を展示したショールーム機能なども備えています。開発スペースも広く確保し、ユーザーがワークを持ち込んで、実際の現場に近い状況での実証が行え、必要であればロボットセルまで作りこむことができます。2019年2月には三井住友銀行から特殊当座借越による成長資金として75億円を調達し、事業体制を強化。2019年3月には中国・広州にて現地法人を立ち上げ、海外展開を本格的に進めています。

企業間連携も拡大

 企業間の連携も進めており、2019年6月には、アクセンチュア株式会社と物流領域のサービス提供で協業すると発表しました。アクセンチュアは、AIやアナリティクスといったデジタル技術を駆使し、サプライチェーン管理サービスなどを提供しており、協業を通じて、アクセンチュアの在庫管理システムと、Mujinのロボットシステムを組み合わせたソリューションなどを提供しています。2020年には、大和ハウスグループの株式会社フレームワークスと業務提携を実施。産業用ロボットを用いた倉庫の自動化ソリューション領域で協業しており、積みつけ工程を自動化するMujinのロボットソリューションと、フレームワークスのIT技術の融合などを進めています。その一環として、Mujinのロボットシステムに搭載するWCS(倉庫制御システム)を、フレームワークスが供給。Mujinは知能パレタイズロボットと複数のAGV(無人搬送車)を組み合わせたシステムを提供しています。このシステムは、注文データをもとに積みつけパターンを出荷什器(パレット、かご車、カートラック)単位で生成し、AGVが保管エリアからの出荷ケースが載ったパレットを搬送することができます。
 新型コロナウイルス感染症の拡大を機に、外出せずに家の中で消費活動を行う「巣ごもり消費」が増加しました。それに伴い、インターネット通販の利用頻度が増加し、物流施設の稼働率が上昇する中、安全面の配慮などから物流人員を増員できない企業も多くなっています。一方で「ロボットを導入している物流施設はロボットを24時間稼働させることで需要増にも対応できている」という声も増えており、テクノロジーの進化によってロボットが対応できる工程も増えています。従来、ロボットは次世代物流施設の設備や、施設の先端性をアピールする設備といった印象もありましたが、上記のような社会背景もあり、ロボットは物流施設における必須の設備となりつつあります。Mujinのロボットソリューションの需要も今後さらに高まっていくことになるでしょう。

(出展:産業タイムズ社)

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