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アバターロボット事業に取り組むANA発のスタートアップ

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight アバターロボット事業に取り組むANA発のスタートアップ

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 新型コロナウイルスの影響によって世界各国で不要不急の外出を控える通達が出され、特定の国や地域からの入国を制限する施策が実施されました。その中で業務をテレワークへ切り替える企業が急増しており、それに伴いアバターロボットへの注目度が増しています。アバターロボットは、カメラ、ディスプレイ、マイク、スピーカーなどを搭載したロボットです。移動機能を持つタイプも多く、利用者の代わりに目的となる場所で活動し、相手とその場で実際に対面しているようなコミュニケーションが行えます。遠隔操作型ロボットやテレプレゼンスロボットなどとも呼ばれますが、そのアバターロボットに取り組む企業の中で注目を集めているのが、avatarin株式会社(アバターイン)です。

世界中に「瞬間移動」が可能

 avatarinはエアライン大手のANAホールディングス株式会社(ANAHD)で進められていたアバターロボットに関するプロジェクトが母体となり、2020年4月に設立されたスタートアップ企業です。事業の出発点となったのが、米国XPRIZE財団が主催する国際賞金レースのデザインコンペへの参加です。そのコンペにてANAHDが提案したアバターロボットのコンセプトがグランプリを受賞し、国際賞金レース「ANA AVATAR XPRIZE」がスタートしました。そしてANAHD内でも2017年10月から有志を集めてプロジェクトを開始し、2019年には「アバター準備室」として組織化。そして2020年4月にavatarinが設立されました。
 そのavatarinでは、アバターサービスプラットフォーム「avatar-in」(アバターイン)の実用化に取り組んでいます。これは一言でいうと、配車アプリ「Uber」のアバターロボット版です。Uberでは、移動したい人がアプリを通してUberのプラットフォームにアクセスして空いているドライバーとのマッチングなどを行います。これと同じように、アバターインプラットフォームでは、利用者がウェブサイトやアプリからアバターインプラットフォームにアクセスして、オフィス、街中、商業施設、観光施設、病院、学校など、さまざまな場所に設置されたアバターロボットを活用するという仕組みで、これにより世界中のどこにでも「瞬間移動」できるというわけです。
 プラットフォームの利用拡大には、アバターインプラットフォームに接続されるロボットの種類や台数を拡大することが重要なポイントとなります。そこでカギになるのが上記の「ANA AVATAR XPRIZE」です。このコンテストには世界81カ国820チームの応募があり、2019年末の審査によって19カ国77チームが予選を通過しています。いずれも優れた技術を持つチームで、このコンテストを通じて高性能なアバターロボットが生み出され、アバターインプラットフォームへの参画を促していきたい考えです。

オリジナルのロボットも開発

 avatarinでは、オリジナルのアバター開発も進めています。その一つがコミュニケーション型のアバターロボット「newme」(ニューミー)です。移動機能(走行速度約2.9km/h)を持った高さ100~150cmのアバターロボットで、首振り機能(上下±60°)や折りたたみ機能なども備えています。人の顔にあたる位置には10.1インチのディスプレイが搭載されており、利用者の顔やアニメーションなどを映し出せます。利用者はnewmeを操作することで遠隔の目的地を自由に移動でき、見たり、聞いたり、話したりできます。
 avatarinでは、newmeを活用して、水族館や博物館での遠隔見学、窓口業務の代替、ショッピング体験、展覧会の遠隔鑑賞、観光案内サービス、卒業式への代理出席など、さまざまな実証を進め、その性能や効果を確認しています。また、新型コロナウイルスへの対応として、遠隔でのコミュニケーションを必要としている医療施設などにnewmeが提供され、院内感染拡大の防止にも貢献しています。
 企業間連携も進めており、その一つとして2020年5月にソニーグループの株式会社ソニーAIと、次世代の遠隔操作ロボットの開発に向けて協力していくことを発表しました。ソニーAIは2020年4月に設立された企業で、AIの研究開発をベースに、ソニーグループが有するイメージング&センシング技術、ロボティクス技術、映画・音楽・ゲームなどのエンターテインメントの資産をかけ合わせたプロジェクトを進めています。avatarinでは、同社の持つ遠隔操作ロボットに関する技術、プラットフォーム、多数の検証で積み上げたノウハウに、ソニーAIのAI技術とロボティクス技術、ならびにソニーグループが有するセンシング、アクチュエーターデバイス技術やノウハウを組み合わせることで、誰にでも使いやすい次世代の遠隔操作ロボットの技術開発および社会実装に関する検討を進めています。

アバターを社会インフラに

avatarinの母体となったANAHDでは航空輸送事業を主軸に展開していますが、実は航空機の利用者は世界で6%ほどにすぎないとされています。つまり残りの94%を含めて世界中の人に新たな移動手段、言い方を変えれば物理的距離をなくす新たな方法が必要であるといえ、新型コロナウイルスの拡大によって移動が制限される中、その新しい移動手段の必要性は高まるばかりです。そういった状況の中、アバターロボットは物理的距離や身体的限界を越えて人々が繋がることができる技術であり、通信環境さえあれば世界中のどんな場所からでも操作でき、利用者の意識・技能・存在感を伝送させることができます。
 またアバターロボットには数多くのセンサーが搭載されており、大量かつ質の高いデータが取得できます。そしてその取得したデータを収集・分析することで、新たなサービスを生み出せる可能性もあり、究極的には地球上の78億人の人類を繋ぎ、情報をシェアしながら進化するプラットフォームになる可能性もあるとavatarinでは見ています。新型コロナウイルスへの対策として、遠隔技術に関する需要がグローバルで高まる中、avatarinにもすでに多くの引き合いがあり、予定していた計画を前倒しで進めて、アバターの設置数や活用事例を増やしていき、世界中の人々が社会インフラとしてのアバターを使える取り組みを加速させていくようです。

(出展:産業タイムズ社)

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