ロボット Insight

ロボットがそばにいることが当たり前になる時代~社会進出を果たしたロボットたち~

レンテックインサイト編集部

ロボットは工場の中で作業担当者と同じ場所に配置されているのが当たり前となり、高齢者の介護やホテルのエントランスでの接客でも活躍しています。 今後ロボットは私たちの生活になくてはならない存在になっていくのでしょうか。

技術の進化で実現した「ロボットのいる生活」

ロボットの歴史は、自動機械の原点である機械人形の「オートマタ」から始まり、オルゴールや日本のからくり人形もそのひとつとして分類されます。 現在のロボットは「動力伝達」「エネルギー蓄積」「制御」で構成されており、仕組みの概念は昔ながらの自動機械と同じです。

例えばからくり人形の歯車は動力伝達の役割をしており、ロボットの「モーター」や「ギアボックス」にあたります。 同じようにばねで実現していたエネルギー蓄積は「電池」となり、 カムとリンク機構で実現していた制御は「コンピューター」や「電子回路」になっています。

「NEDOロボット白書2014」によるとロボットの種類は以下のように分かれます。

 

無人システム

危険環境下で人間に代わって作業をするロボット

産業用ロボット

なんらかの製造プロセスにかかわり、人間に代わって作業をするロボット

サービスロボット

店舗やインフォメーションセンターで、訪れる人への案内をする、介護を支援するなど人と接して作業する、 または人の作業を補助するロボット(人がいる中で自律的に清掃作業をする、街中でデリバリーをするロボットも含む)。

エンターテインメントロボット

玩具やペットのように人に癒しや楽しさを与えるロボット

コミュニケーションロボット

人とコミュニケーションをすることで人の能力を伸ばしたり、健康上の問題を改善したりするロボット

 

近年はセンサーやAIの技術革新に伴い、人と接するロボット(パートナーロボット)が登場しています。 産業用ロボットについても以前は人が容易に近づけない場所で作業をしていましたが、 今は人間に危害を与えず、人間と一緒に作業ができる協働ロボットが増えてきました。 製造現場だけでなく、サービス分野でもロボットが積極的に活用されるようになっています。

さらにロボットがインターネットと接続されるようになることで、ドローンや無人自動車(ロボットカー)との境界もあいまいになってきています。 すべてのモノがつながるIoTの一部としてロボットも参加する時代になりました。

社会進出を果たしたロボットたち

このようにロボットが人間の生活を助け、人間の生活に溶け込むなかで、どのような役割を果たしているのか、事例をご紹介しましょう。

ウェルウォーク

2018年ロボット大賞厚生労働大臣賞を受賞したリハビリ歩行支援用ロボットです。 脳卒中などにより歩行が困難になった患者を転倒防止ハーネスで適度に支えたうえで、ひざを蹴りだしたり、 ひざをのばして支えたりという一連の歩行の動作を補助します。 転倒するリスクを抑えて、適度に負荷をかけることで回復を早める狙いがあります。
2018年7月に総合リハビリテーション伊予病院がこのロボットを導入したところ、ほとんどの患者が転倒を怖がらなくなり、 リハビリがスムーズに進むようになりました。 今後はリハビリ期間の短縮やリハビリをしても歩行できるようにならなかった患者の減少といった定量的な効果が期待されています。 

参考動画:https://youtu.be/HEQuu12iEpE

サウザー(THOUZER)

株式会社Doogが開発した自動追従運搬ロボットです。 120キログラムまでの荷物を運搬でき、走行中に障害物があれば停止するか避けて走行します。 人や台車を見分けて追走できるほか、床に反射テープを貼ることで自走もできます。
繊維製品メーカーのワコールは物流拠点にサウザーを導入し、人間がピッキングした商品をサウザーに置くと、 サウザーが人間を追尾して動くことで作業担当者の負担軽減を図っています。
また、ステーキハウスのブロンコビリーでも導入し、店員がテーブルの上にある食器を片付けてサウザーにのせて調理室に運ぶことで、 店員が調理室とテーブルの間を何往復もする必要がなくなりました。

参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=S3w9NGwhbrE

SpotMini(スポットミニ)

アメリカの企業でソフトバンク傘下のボストン・ダイナミクス社が開発した「ロボット犬」です。 2018年5月には一般発売が決定し、ビジネスへの活用も進む見通しです。 2018年10月には竹中工務店で建設現場の調査事業にスポットミニを導入する実証実験を開始しました。 動画を見ると建設現場で階段をラクラク上り、障害物は器用に避け、作業員や立ち入り禁止の区域を認識しているのがわかります。
ボストン・ダイナミクス社はAtlas「アトラス」という2足歩行のロボットも開発しています。 フランスの軍事訓練が起源となる競技「パルクール」を華麗にこなすなど、身体能力は他社の追随を許しません。 こうしたノウハウをもとに進化したスポットミニは、今後建設現場だけでなく、警備犬や災害救援としての役割も期待されています。 

参考動画:https://www.youtube.com/watch?v=wND9goxDVrY&feature=youtu.be

ロボットが社会進出するための課題とは

今後ロボットは技術の進化によって、さまざまな社会課題を解決していくに違いありません。 しかし現時点ではロボットが行う作業の「完璧な安全性」が課題となります。

例えば介護現場で現在必要とされていることの一つに、入浴やトイレの介助がありますが、 ロボットが介助対象の人に危害を与えることなく完全に、安全に遂行されなければなりません。 ロボットを開発してから実際の製品になるまで、認証に時間がかかるという問題を抱えています。

とはいえ、安全性の課題はロボットが着実に進化を続ければいずれはクリアできる課題でしょう。 人とロボットが一緒に生活する日はもうすぐそこに来ているのかもしれません。

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