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ロボット Insight

ソフト技術を強みにロボ事業を展開する豆蔵

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight ソフト技術を強みにロボ事業を展開する豆蔵

 ㈱豆蔵は、国内有数のITコンサルティングファームとして知られ、組み込み/業務系システムの開発やAI(人工知能)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)、DX(デジタルトランスフォーメーション)関連サービスなどを展開しています。モデルベース開発を強みにしており、組み込み系では、自動車、産業用ロボット、医療関連のほか、画像認識技術やAI、製造ライン向けの高度なシステム構築に関するノウハウなども有しています。そして最近では「ロボットシステム開発支援サービス」や「工場の自動化サービス(ロボット導入支援)」といったロボット関連の取り組みも強化しています。
 ロボットシステムの開発については、2013年に海外企業から「産業用ロボットのコントローラーやペンダントといった制御システムを開発してほしい」という依頼を受けたことがきっかけで始まり、2015年に基本機能の開発に成功しました。その後、「ロボットアームの機構設計もしてほしい」という依頼も受けた豆蔵は、ロボット工学で高い知見を持つ東京農工大学と、産業用ロボットアームの設計手法に関する共同研究を開始。豆蔵の強みであるモデルベース開発技術と、東京農工大学のロボット工学の知識を融合し、アームの開発期間を短縮する設計手法の確立を目指したもので、2017年3月に実用化することに成功しました。
 開発した手法は、コンピューター上にロボットアームのモデル(CADモデルおよびシミュレーションモデル)を作成し、物性や部品特性など精密なデータを用いてモデリングすることで、実機レスで機械の強度、挙動、振動、組立をシミュレーションが行えます。一般的に産業用ロボットアームの新規開発では、既存のロボット開発の経験に基づき、実機ベースで試作・検証を繰り返すため、通常は完成までに数年の期間を要しますが、豆蔵が開発した設計手法であればロボットの実機試作の回数を減らすことができ、開発期間の大幅な短縮につなげることができます。豆蔵では、開発した設計手法を活用してオリジナルの7軸協働ロボット(可搬重量3㎏)の開発を実施し、ロボットアーム、コントローラー、ペンダントを開発着手からわずか8カ月で作製することに成功しています。

三井化学や日本電産シンポと協働ロボを試作

 こういったロボットアームの開発期間を短縮するメカ設計手法に加え、主力事業の組み込み/業務系システムの開発などで培ったソフトウエア、基板設計、電源設計、ハーネス設計、FPGA開発といったエレクトロニクス分野の知見を組み合わせて、ロボットおよび関連機器の開発を支援できることが豆蔵の強みです。加えて、クラウドシステム側から複数のロボットを制御するシステムや、ロボット用AIシステムなどの開発も支援でき、これまでに、産業用ロボット、協働ロボット、双腕型ロボット、コントローラー、ペンダントなどの開発支援を行い、日本メーカーのみならず、海外メーカーとの実績も有しています。  他企業との共同研究も進めており、2021年1月には三井化学㈱(東京都港区)や日本電産シンポ㈱(京都府長岡京市)と連携し、10㎏可搬のオリジナル7軸協働ロボット「Beanus2」を試作しました。ロボットの機構設計、制御技術を豆蔵が担当し、三井化学の樹脂設計・成形技術にてロボットフレームをすべて樹脂化。これにより高い剛性を担保しながら、金属製と比べて重量をおよそ半分まで軽量化することに成功しました。減速機は日本電産シンポの高バックドライバビリティー減速機を使用し、そこに豆蔵の力制御アルゴリズムを融合することで、トルクセンサーなしでロボットアームを柔らかく制御することにも成功し、こういったノウハウもロボットシステム開発支援サービスで提供しています。

工場の自動化サービスも展開

 ロボットシステム開発支援サービスを展開するなかで「工場の自動化についても支援してほしい」という声が寄せられたことから、2019年から工場の自動化サービスも本格的に進めています。AIやビジョンシステムを活用したロボット検査システム、柔軟・不定形なワークをピッキングするロボットシステム、飲食店向けの自動食洗ロボットシステムなど、高難易度かつソフト、エレキ、メカの総合力が必要とされる領域を中心に、各業種の装置メーカーなどと連携しながらシステムの開発・実証を進めています。2021年内には工場の自動化サービスにおける実導入案件も出てくる見通しで、その成果を活用し、物流、食品、検査など、人手不足が深刻でかつ自動化の難易度が高い領域での展開を強化していく方針です。
 このほか、2021年1月に㈱エフエーサービス(横浜市港北区)のレーザー溶接事業を取得し、板金加工用レーザー溶接ロボットシステムのサービスを新規事業として開始しました。ロボットと加工技術を融合したYAGレーザーシステムを提供するもので、新規事業を行うための拠点をエフエーサービスから引き継ぎ、神奈川県相模原市にR&Dセンターを新たに開設しています。この事業取得を通じて、ロボット関連事業の取り組みをさらに拡大するとともに、ロボット技術やソフトウエア技術を使って、レーザー溶接ロボットシステムだけでなく、板金工場全体の自動化サービスも提供していく考えです。
 ロボット関連の取り組みは豆蔵における注力分野の1つとなっており、豆蔵ではロボット関連の事業規模を2024年ごろに20年比3倍以上に成長させることを目指していく考えです。

(出展:産業タイムズ社)

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