レンテック・インサイト連載5回目は、予想以上の加速を見せているサービスロボットについてご紹介します。
サービスロボットの普及について、数年前までは2020年の東京オリンピック・パラリンピックのころには社会のさまざまな場面でガイドロボットや警備ロボット、清掃ロボットなど多くのロボットが活躍するなんて言われていました。個人的にはサービスロボットが社会に受け入れられるのはもう少し時間がかかるかなと見ていましたが、コロナ禍によってその状況が一変。ここに来て普及が加速しています。
サービスロボットで一番身近なものと言えば、部屋の掃除を自動で行ってくれるお掃除ロボット。私の家にはありませんが、友人の家では日々の掃除がラクになったと自慢しています。
インターネット調査のマイボイスコムのアンケート調査によると、ロボット掃除機の所有率は9%。まだ1割未満とは言え、今後利用したいと考えている人は3割に上り、ジリジリと高まっている様子。所有者のほとんどは従来の掃除機と併用していて、ロボット掃除機だけで済ますという人は2割程度。吸引力の弱さだったり、ロボット掃除機を使うほどの部屋の広さでもないなどの課題が出ているようです。
また世界に先駆けてロボット掃除機を市場に投入したアイロボット社によると、同社製のロボット掃除機と床拭きロボットの国内累計出荷台数が400万台を突破したとのこと。特に昨年は、コロナ禍のため家で過ごす時間が増え、特別給付金などもあって大きく伸びたと言います。
私の欲しいものリストの上位に位置するお掃除ロボット。同じような人も多いのではないでしょうか。
まだ導入台数は微々たるものですが、これからのロボット社会の実現に向けて大きな試金石になりそうだと思っているのが、レストランや飲食店でのロボット導入。これまで受付に人型ロボットが置かれる例もありましたが、今回は配膳・運搬ロボットが主になっています。
牛角や土間土間等の飲食店を運営するレインズインターナショナルは、牛角・牛角ビュッフェ・しゃぶしゃぶ温野菜・居酒家 土間土間・かまどか・とんかつ神楽坂さくらの一部店舗に、ソフトバンクロボティクスの配膳・運搬ロボット「Servi(サービィ)」を先行導入。また和食レストランのとんでんを展開するとんでんホールディングスも、同じ「Servi」を11店舗に導入しました。
また二子玉川 玉川高島屋の6階にあるTHE GALLEY SEAFOOD & GRILL by MIKASA KAIKANでも、サラダバーの配膳にQBIT Roboticsのロボットが導入されました。
ロボットが配膳・下げ膳を担い、スタッフの負荷低減、お客様との密回避によるコロナ禍の対応、エンタメ要素と迅速な対応によるサービス品質の向上、回転率の向上など、さまざまな効果を生んでいます。現在のところ、お客様からの評判も上々で、近未来的、ロボットが運んでくれる楽しみがある、ロボットが可愛いなどの意見が寄せられていています。
このままロボットと人が一緒に働き、助け合うのが普通になっていくと、人のロボットに対するネガティブイメージや払拭され、もっと普及が進んでいきます。ロボット大国、ロボット活用先進国と言われ、ロボット産業をもっと盛り上げていくためにも、私たちの生活に近い場所でのロボットの活躍に期待したいです。
また日本ロボット工業会(JARA)では、コロナ禍での感染拡大の防止や生活サービスの維持に対してロボットをもっと活用していこうという意思のもと、「コロナ禍におけるロボット活用事例」をまとめ、公表しました。活用パターンを「除菌」と「非接触」「その他」に分け、全27種類のロボット活用事例を紹介しています。
除菌では自律運転するAMR・モバイルロボットに、除菌のための薬剤散布機能や紫外線照射による除菌機能搭載し、施設内を自動で動き回って除菌するロボットを取り上げています。
例えば天然温泉みちしおの事例では、自走式のサービス・紫外線除菌ロボットを使い、人がいる空間・時間帯は注意喚起やサービス訴求のディスプレイを訴求し、人がいない夜間に紫外線照射を行って施設内の除菌を実施しています。またこれ以外にも、羽田空港やつくば市役所、JR高輪ゲートウェイ駅での清掃・除菌ロボットの例なども収録しています。
非接触では、宿泊・飲食業におけるAMR・モバイルロボットによる配膳補助や、サービスロボットによるホテル等での受付窓口の無人化、塾における講師のロボット代替、施設での検温やマスク着用の有無検知のロボット化など、人同士が接触しないようロボットが介在する19の事例が紹介されています。
この活用事例は誰でも下記からダウンロードできるので、興味があれば是非読んでみて下さい。
https://robo-navi.com/servicerobot_covid/index.html
これからのロボット普及に向けて、その際のハードルになるのが、導入費用とその効果はもちろんのこと、ロボットに対する人の受け取り方、心理面だと思っています。ロボットが使えないもの、ダメなもの、怖いもの、危ないものと捉えられてしまうと、これからに向けて大きなマイナスになりかねません。現在のところ、お掃除ロボットも飲食店での配膳ロボットも決して評判は悪くなく、むしろ良い状態。コロナ禍で人が困っているところを補助してくれる存在として好意的に受け取られていて安心しています。
しかしながら油断は禁物。事故やトラブルがあると評価は一変し、せっかくの産業の芽を潰すことになりかねません。サービスを受ける側とは言え、ロボットを使いこなし、社会の一員に育て上げるのは人間の役目。そこは気をつけなければなりません。