住友重機械工業㈱は、精密制御機械やコンポーネントをはじめ、各種産業機械、船舶、大型プラントなどを幅広く手がける国内トップクラスの総合重機械メーカーです。そして製造現場で使用される産業用ロボットの中核部品である精密制御用減速機の大手企業でもあります。国内の主要な産業用ロボットメーカーには同社の製品がほぼ採用されており、特に塗装や溶接などに使用される中大型ロボット向けの製品に強みがあります。
2018年には伊Lafert(ラファート)社をグループに加えました。同社は、誘導モーター、高効率磁石モーター、サーボモーター、サーボドライバーなどを主力製品に据え、産業機械、搬送機械、ファン・ポンプ向けを中心に、中国の大手ロボットメーカーなどにも製品を供給しており、住友重機械工業は、産業用ロボットの中核部品である精密制御用減速機とサーボ製品をセットで提供できる世界でも数少ない企業でもあります。
2019年12月に開催された「2019国際ロボット展」では、ロボット関連ベンチャーの㈱Keigan(京都府精華町)と協賛出展し、人物を自動で追従しながら積載物を搬送する自動搬送ロボット「Keigan AGV」を展示。駆動輪に住友重機械ギヤモータ㈱のアルタックスギヤモーターを使用しており、Keiganは住友重機械工業と制御技術などの共同研究を進めています。
部品だけでなく、ロボット本体に関する取り組みも増えており、その1つとして2017年に真空ロボットを製造販売するパーシモン・テクノロジーズ社(Persimmon Technologies、米マサチューセッツ州)を買収しました。パーシモン社は、ブルックスオートメーションの真空ロボット部門長であったマイケル・ピピン氏が設立されたベンチャー企業で、主に半導体ウエハー搬送用の真空ロボットを製造・販売しており、独自の高剛性設計により、構造がシンプルかつ軽量であることが特徴で、コンタミレス、高精度、高信頼性を実現しています。住友重機械工業は、イオン注入装置やクライオポンプ、XYステージなどの半導体関連事業を展開しており、パーシモン社をグループ化したことで半導体事業の拡大も図っています。
ロボット関連の取り組みとしては、リシンク・ロボティクス社(Rethink Robotics、独ボーフム)の協働型ロボット「Sawyer(ソーヤー)」の国内販売も手がけています。リシンク社は掃除ロボット「ルンバ」の開発者として知られるロドニー・ブルックス氏(マサチューセッツ工科大学コンピューター科学・人工知能研究所元所長)が設立した企業で、設置の際に柵などを必要せず、人の近くで作業できる協働型ロボットに強みを持ちます。
住友重機械工業は近年、自社の製造現場におけるロボットの活用や、ロボット関するノウハウの拡大に力を入れており、そのなかで住友重機械工業が研究開発面で連携しているマサチューセッツ工科大学を通じ、ロドニー・ブルックス氏と知り合う機会を得たことがソーヤーの国内販売に至るきっかけとなりました。
ソーヤーは、設置の際に柵などを必要せず、人の近くで作業できる協働型の単腕型7軸ロボット(可搬重量4kg)で、作業をさせるにあたってティーチングペンダントによる複雑なプログラム入力などを必要とせず、手でロボットのアームを動かすダイレクトティーチングによってプログラムを生成することができ、生成されたプログラムはPCのブラウザー上でのグラフィックユーザーインターフェースで直感的に編集することができます。また、ソーヤーを構成する7軸すべてに力覚センサーを内蔵しているため安全性が非常に高く、作業環境の変化に対する柔軟性が高いことも大きな特徴です。そういった特性を活かすことで、自動車関連、電機・電子、金属加工、三品産業(食品・化粧品・医薬品産業)などの幅広い分野ならびに工程で採用が進んでおり、従来のロボットでは困難であった機械加工や回路基板のテスティングなどにも対応できます。また、サービス業界でも採用されるケースが出てきており、その1つとして、大手旅行代理店エイチ・アイ・エスが企画したロボットカフェの「変なカフェ」にソーヤーが採用されています。
住友重機械工業では2020年からイスラエルのベンチャー企業Kitov.ai(キトフ・エーアイ)が開発した3次元追従型外観検査システム「KITOV」(キトフ)の取り扱いも開始しました。ロボットアームやAIを搭載した検査システムで、ロボットアームを活用することで対象製品をあらゆる角度から検査でき、小ロット多品種の検査で強みを発揮します。高度なAI・画像処理アルゴリズムによって、複雑な構造・形状、様々な材質も検査でき、自動化は難しいとされている鏡面や光沢のある製品の欠陥も検出できます。
生産年齢人口の減少による人手不足に加え、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う製造現場でのソーシャルディスタンスの確保などへの対策として、ロボットへの注目度が上昇していますが、一方で通常の産業用ロボットでは置き換えづらい作業や工程も出てきています。そのなかで住友重機械工業はロボットの中核部品の提供に加え、ソーヤーやキトフなどを展開していくことで、「人からロボットへの置き換え」をサポートしていく方針です。
(出展:産業タイムズ社)