ロボット Insight

ロボット開発を新規に取り組むOKI

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight ロボット開発を新規に取り組むOKI

 現在、日本には多数の通信機器メーカーが存在します。では、そのなかで日本最初の通信機器メーカーはどこでしょうか。正解は沖電気工業㈱(OKI)です。1881年にOKIの創業者である沖牙太郎氏が日本で初めて電話機を製造し、日本最初の通信機器メーカーとして創業されました。
 現在は、情報通信事業、ATMやプリンターなどのメカトロ事業を中核として、各分野における製造・販売およびこれらに関するシステムの構築・ソリューションの提供、工事・保守・その他サービスなど、情報通信や社会インフラを支える様々な商品を提供しています。近年は、人工知能(AI)処理をエッジ領域で汎用的に実行させ、クラウドとの連携により実現する「AIエッジコンピューティング」に関する取り組みを強化しており、その1つとしてAIエッジコンピューター「AE2100」を2019年10月に発売。そして、そのAIエッジコンピューターの技術を活用したサービスロボット「AIエッジロボット」の開発も進めています。

自律制御と遠隔操作のハイブリッド型

 OKIがロボット開発を始めるようになったのは、OKIグループが近年推進している「Yume Pro」(ユメプロ)という取り組みがきっかけです。グループ内の新たなイノベーション・マネジメントシステムの策定、導入、定着、改善などを行う取り組みで、その一環として新事業の社内アイデアコンテスト「YumeProチャレンジ2018」が実施され、大賞を獲得したのが、社会課題となっている人手不足の解消を実現するサービスロボット「AIエッジロボット」でした。その大賞受賞を機に、AIエッジロボットのプロジェクトが2019年5月から本格的に始動。そしてわずか5カ月後の2019年10月には、AIエッジロボットのコンセプトモデルの試作機を、最先端IT・エレクトロニクス総合展「CEATEC 2019」にて披露しました。
 AIエッジロボットは、OKI独自のAIエッジコンピューターや俯瞰映像モニタリングシステム「フライングビュー」(4台のカメラ映像から周囲360度の俯瞰映像を合成し、遠隔から自由な視点で広域のシームレスなモニタリングを実現できるシステム)のほか、主力の情報通信やメカトロシステム事業で培ったAI、センシング、通信、遠隔運用などの技術やノウハウを実装されており、周囲の環境を把握しながら自律移動する機能を備えています。
 ただし、AIを搭載した自律ロボットは、臨機応変な対応に関して課題があります。例えば、移動型ロボットが軽微な障害物によって停止しつづけるといったことや、混雑した場所で滞留しつづけるといった事例があり、そういった際には人手による現場での復旧作業が必要となります。そこでAIエッジロボットは、AIが自動では対応できないと判断した場合、運用センターからの遠隔操作に切り替えることができ、1人で多数(10台程度)のロボットを運用することが想定されています。つまり、OKIでは「AIの自律性×人の柔軟性」を高度に調和させることで高い稼働率を実現し、多様なタスクの自動化・省人化に貢献することを目指しています。
 また、AIエッジロボットには、音、振動、画像、空間、匂いといった多様なセンサーを搭載できるインターフェースが装備されており、ユーザーの用途に応じて機能を拡張させることで様々な作業に活用でき、現在までに、施設管理、警備、搬送、建設など幅広い業種から問い合わせを得ています。

エッジモジュールの開発を推進

 2020年11月からは、ロボットに搭載可能なエッジモジュール「ROM」(Remote Operation Module)の開発を進めています。AIエッジロボットの高度遠隔運用コンセプトをベースにしており、ROMを搭載したロボットは遠隔の運用センターなどと簡単につなげることができ、管理者はロボットの稼働状況を常時監視できるようになります。また、協調型AI機能も搭載しており、運用センターの支援が必要な場合には、ロボットから運用センターへ報告をタイムリーに行うことができます。
 さらに、トラブル発生時、従来であれば現場に人が駆けつけて対処していたケースでも、ROMを介した遠隔からの高度な運用機能によってサービスの提供を維持でき、現場の対応要員を不要としながらダウンタイムを最小化することができます。これは協調型AIが、運用センターのオペレーションAIと連携して、運用センターのオペレーターを割り当て、遠隔操作、遠隔ルート設定、代替機出動などの対応を選択してサービスを維持するとともに、人の遠隔操作であれば簡単に対処できるタスクをオペレーターに依頼することで、現場のロボットが対応できる機能を拡充するというものです。OKIはROMの開発を進め、2022年にサービスロボットの高度遠隔運用ソリューションの商用化を目指しています。
 近年、AIを搭載した自律ロボットが様々な領域で活用され始めていますが、臨機応変な対応に課題があり、その結果、自律ロボットを導入できる業務が限定され、ロボットの活用が進まない状況を生み出しているという声もあります。それに対してOKIは、遠隔運用/完全自律のハイブリッド化によって、ニューノーマル社会における現場の非接触・非対面・無人化を支援していきたいという考えで、「自動化×遠隔運用」によってロボティクス分野において新たなビジネスを創出していく方針です。

(出展:産業タイムズ社)

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