ロボット Insight

ロボット分野の取り組みを進める大和ハウス

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight ロボット分野の取り組みを進める大和ハウス

点検ロボット「moogle(モーグル)」

 大和ハウス工業株式会社は、大手ハウスメーカーとして知られ、戸建住宅をコア事業に、賃貸住宅、分譲マンション、商業施設、事業施設(物流施設、医療・介護施設)など幅広い事業領域で活動しています。そういった事業に加え、実はロボット関連の取り組みも進めています。現在、少子高齢化が大きな社会課題となっていますが、その課題解決の1つとして大和ハウス工業が着目したのがロボットで、2008年1月にロボット事業の部門を社内に設置しました。そして、介護・医療関連ロボットの販売代理業務や点検ロボットの開発・販売などを行い、新たな主力事業として育てていくための取り組みを進めています。
 販売代理業務では、CYBERDYNE㈱のロボットスーツ「HAL」や㈱知能システムのセラピー用アザラシ型ロボット「パロ」などを販売。自社で開発した製品としては、点検ロボット「moogle(モーグル)」を展開しています。
 モーグルは、住宅の床下点検用に開発された走行型のロボットです。遠隔で簡単に操作でき、15cmの段差を乗り越える走行性能を装備し、搭載したカメラで、基礎のひび割れ、シロアリ被害、水漏れなどを調べることができ、点検状況を静止画で保存できます。例えば、0.1㎜のクラック(ひび割れ)を確認でき、クラック幅に応じて自動で色分けし表示する機能なども備えています。

建設作業にもロボットを活用

 従業員の労働環境を良くするためにロボットなどの導入も進めており、2018年4月には、CYBERDYNEのロボットスーツ「HAL腰タイプ作業支援用」を大和ハウスの全国9工場に計30台導入しました。腰への負荷を最大約4割低減できる機器で、作業中に腰部にかかる負荷を低減させるとともに、腰痛などのリスク軽減に貢献しています。
 建設作業の負担軽減に関する取り組みも進めており、耐火被覆吹付(鉄骨に耐火性能を持たせるために行う作業)用ロボットを2018年に開発。産業用ロボットアーム、走行台車、昇降台車を組み合わせたシステムで、人間では通常150~160㎡/日しか作業できませんが、このロボットシステムであれば200㎡/日以上の作業が可能です。そして通常は鉄骨の柱や梁の耐火被覆吹付には3人の作業員が必要ですが、ロボットシステムで作業員を2人にすることができ、耐火被覆工事の工期も約30%削減できます。
 大和ハウス工業では、2018年の開発以降、このロボットシステムの実証を進め、そして2021年1月に実工事へ初めて導入しました。実導入したシステムは、ロボットアームの配置方向を横向きに設置し、吹付範囲を拡大。また、走行台車のタイヤに「メカナムホイール」(モーター出力により車輪円周上に45度の角度で取りつけられたローラーが回転し、車体の向きを変えることなく全方向に移動可能な特殊車輪)を採用することで、全方向への移動を実現しています。また、高さ7mの吹付が可能で、数cmの誤差で吹付位置の調整することも可能で、大和ハウス工業では今後、複数の現場へ導入することを計画しています。

物流向けの取り組みを強化

 大和ハウス工業が近年力を入れている事業として物流施設事業があります。これまでに3000棟以上の物流施設を開発し、物流施設の設計・施工だけでなく、不動産や金融など各分野のパートナーを組み合わせ、自社保有・ノンアセット・不動産流動化など幅広い物流不動産ソリューションを展開しています。
 そのソリューショの1つに次世代型物流施設「Intelligent Logistics Center(インテリジェント・ロジスティクス・センター)」があります。人工知能やIoT、そしてロボットなどを駆使し、マネジメントや庫内作業、荷物の搬送・輪配送、物流領域の川上から川下までを総合的にサポートし、物流業務の効率化・省人化・自動化を実現する新しい物流センターです。
 大和ハウス工業では、次世代型物流施設の実現に向けたM&Aや事業提携なども進めており、2012年には㈱フレームワークスをグループ化。独自の物流センター管理システムを中心とする物流システムの構築や、物流コンサルティングサービスなどを展開しており、次世代物流施設の管理システムを構築するうえでの中核的な役割を担っています。
 また、2017年には、㈱アッカ・インターナショナルをグループ化。アパレル業界向けのフルフィルメントサービス(通信販売業務において、商品が注文されてから注文者に届くまでに必要な管理運営業務)を展開する企業で、アパレル系のインターネット通販に必要な撮影から採寸、商品原稿の入力、カスタマーサポート、商品を発送する物流拠点をセットにしたサービスを展開しています。直近では、㈱ナイキジャパンが千葉県市川市に2020年2月に設置した物流センターの運営をアッカ・インターナショナルが担当しています。
 そしてロボット関連では、2017年6月にGROUND㈱と資本業務提携を締結しています。GROUNDは、物流施設にロボットや人工知能といった最先端テクノロジーを融合する「インテリジェント・ロジスティクス事業」を展開するベンチャーで、その1つとして自動搬送ロボット「Butler(バトラー)」を取り扱っています。バトラーは、物流施設の床面を移動するロボットが可搬式の棚の下に潜り込み、作業者の元に棚ごと商品を届けるタイプのロボットで、大和ハウス工業が開発した物流施設「DPL市川」(千葉県市川市)にもバトラーが導入されています。このように、一見まったくの畑違いに思えるロボットにも積極的に取り組み、新しい施設のかたちを常に提案する姿勢が、大和ハウス工業の強みなのかもしれません。

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自動搬送ロボット「Butler(バトラー)」

(出展:産業タイムズ社)

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