「ロボットの効果は期待できても、本当に費用に見合う効果があるのか確信が持てない…」と二の足を踏んでいる企業も多いのではないでしょうか。 ここではロボットを導入する際の費用対効果について考えていきたいと思います。
一口にロボットの導入といっても、ロボットは本体を購入するだけでなく、関連装置と一緒に動作して初めて機能するものです。 そのため、ロボット本体よりもシステムや周辺装置の開発に必要なコストの方が大きくなるのが一般的です。
ロボット導入の際には大きく分けて「ロボット本体」「ロボット関連装置・周辺機器」「システムインテグレーション」についての費用が必要です。
例えば製品の箱詰め作業にロボットを導入する場合、「本体」のパラレルリンクロボットだけでなく、作業対象物に合わせたロボットハンド、 箱詰めをする製品を識別するカメラ、箱を運搬するためのベルトコンベア、梱包のための製函機・封緘機といった「ロボット関連装置・周辺機器」が必要となります。
また、生産ラインにどのようにロボットを組み込んだら最大限の効果があるか、工場のどこに配置するのか、動かした場合に発生するリスクは何か、 といったロボットシステム全体の設計や、ロボットをどのように動かすのかを学習させるティーチングなどの「システムインテグレーション」が必要です。
そのため仮にロボット本体の価格が400万円だったとしても、全体のコストは1,000万円を超えることも珍しくはありません。 複数のロボットを稼働させるとその関連装置・周辺機器のコストも増えていきます。
ロボットシステム構成例
このようにロボット導入にかかる費用はまだまだ高額であり、効果についても定量化しにくいため、コストが見合うのか判断しかねる企業も多いことでしょう。 しかし、人件費の削減と生産性の向上、稼働時間延長による増産を考慮すると3~5年で投資を回収できる事例も増えてきています。
例えば、製品の組立工程についてロボットを総額4,000万円のコストで導入した場合のシミュレーションをしてみましょう。 1日あたり10個増産し、1個あたりの利益が3,000円の場合、年間で以下の利益増が見込めます。
10(個)×3,000(円)×240(日)=720万円
また、この作業をしていた担当者が2人の場合は、以下のコスト削減が見込めます。
2(人)×25(万円)×12(カ月)=600万円
この場合、1年で総額1,320万円の利益増が期待でき、およそ3年で回収できる見込みとなります。
このほかにも、作業担当者の教育コストや退職リスク、人材確保のリスクといった人材関連から、 ロボット導入による省スペースの実現、過酷な作業負担の軽減などの間接的な効果も期待できます。 定量化できる効果だけではなく、多面的に評価することが大切です。
また、ロボットの減価償却は、ロボットの用途によって異なります。 例えば食料品製造業用設備の場合は10年、フラットパネルディスプレイ製造設備の場合は5年となります。 多面的な効果の試算と、減価償却年数を考慮して検討しましょう。
ロボットの導入の際は、補助金の活用も視野に入れると選択肢が広がります。平成30年度に実施されたロボット導入に活用できる主な補助金事業をご紹介しましょう。
中小企業や小規模事業者が革新的なサービス開発や設備投資などを実施する場合に、必要となる費用の一部を補助するものです。 「先端設備等導入計画」の認定または「経営革新計画」の承認を受けると費用の上限枠が拡大します。 また、先端設備等導入計画の認定を受けると、自治体によっては固定資産税が3年間ゼロになる優遇措置もあります。
介助者のパワーアシストを行う装着型の機器や、荷物等を安全に運搬できる歩行支援機器など、介護利用におけるロボットの導入に必要となる費用の一部を補助します。
補助金には毎年公募をするものや、ものづくり補助金のように復活するもの、名前を変更して再度募集するものなどがあるので、日ごろから情報収集しておくとよいでしょう。 そのほかにも各自治体で補助金を交付している場合もあります。自治体に問い合わせてみましょう。
補助金は金額も大きく大変魅力的ですが、採択に向けては事業計画を練る準備作業も必要なことに留意する必要があります。
補助金のほかにも、初期費用の負担を軽くできるリースやレンタルも検討してみましょう。 レンタルではさまざまなロボットの種類から業務に適合できるものを選べます。 お試し期間を設け、手軽に効果を実証できるサービスもあります。
ロボットを導入するかを決定するには、利益の試算をメインに、雇用人材の補完、作業環境の改善、品質向上などトータルな効果を測定することが大切です。
もし、十分な効果が期待できないのであれば、効果を出す下地作りがまず必要になります。 ロボットの効果を最大限に引き出していくにはどうしたらよいか、現場社員だけでなく、経営者自身も考えていく必要があるでしょう。