ロボット Insight

ロボットを核にした総合機械メーカーへ転換を図る不二越

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight ロボットを核にした総合機械メーカーへ転換を図る不二越

 国内有数の総合機械メーカーである株式会社不二越では、近年ロボット分野の取り組みを強化しています。同社は工具、工作機械、ロボットシステム、ベアリング、油圧機器、自動車部品、特殊鋼、コーティング、工業炉などを扱う総合機械メーカーとして知られ、自動車生産ラインで培った自動化に関する豊富なノウハウを有しています。ロボット製品としては、スポット溶接、アーク溶接、シーム溶接、ハンドリング・シーリング、パレタイジング、重量物搬送(可搬重量280~700kg)などのさまざまな用途に対応したロボットをラインアップ。ロボット部門の事業規模は307億円(2019年11月期実績)を誇ります。
不二越が産業用ロボット分野に取り組み始めたのは1969年で、油圧式の製品を開発し産業用ロボット市場に参入。1979年には超精密分野へ進出し世界初の電動型の多関節溶接ロボットを開発しました。その後、1990年にハンドリングロボットを商品化。2010年にはパレタイズロボットを市場投入し、物流インフラ分野への展開も開始しました。

スカラ型をロボット展で展示

 不二越では近年、ロボット製品のラインアップを積極的に拡大しており、2017年末に東京ビッグサイトで開催された「2017国際ロボット展」では、安全柵なしで使用できる協働型ロボット「CZシリーズ」を展示。そして2018年8月末に10kg可搬タイプの「CZ10」を市場投入しました。
 CZ10は国際安全規格(ISO 10218-1・TS 15066)を満たした安全設計で、安全柵なしで、人とロボットが一緒に作業することができます。機能面では、人との接触を感知して停止・退避し、設計面でも、ロボットに指などが挟まれないように各アーム間で一定の距離を保つ仕組みを構築するなど、安全性を確保しています。
 また、既存のダイレクトティーチングでは難しかった直線動作や、ハンドの向きを一定に保ったままのティーチングを可能にする新しいダイレクトティーチング機能を搭載。さらに、手首と旋回軸を同一直線上に配置する従来の産業用ロボットと同様のデザインとしたことで、ロボットの操作経験の有無に関わらず、幅広いユーザーが使用できる操作性を実現しています。

小型ロボットのラインアップを拡大

 その他強化しているのが小型ロボットの展開です。その主力製品の一つが世界最速・軽量コンパクトロボット「MZ04」と低出力ロボット「MZ04E」で、小型ロボットのボリュームゾーンである3~4kg可搬をターゲットに、使い勝手を大幅に向上することでロボット導入の敷居を下げた製品です。
 ロボットアームの軽量化と最新の制御技術により、クラストップの動作速度を実現。サイクルタイムを短縮し、幅広い用途で生産性を改善しました。手首部分は中空構造で、ケーブル類を収納することで、周辺装置との干渉リスクを大幅に低減しています。本体の設置面積はA5用紙サイズに抑え、狭小スペースへの設置が可能。本体の重さが26kgと軽量であることから、天吊り、壁掛け、傾斜設置など、ロボットレイアウトの自由度が向上しています。
 2019年1月には超小型コンパクトロボット「MZ01」を市場投入しました。可搬重量が1kgのロボットで、小型化と高剛性を両立した設計を施し、従来のMZ04に対して容積を45%に縮減。1kg可搬クラスの垂直多間接ロボットでは、世界最小のコンパクトなボディを実現しています。また、同一クラスのスカラ型ロボットと比較して、ロボットの干渉範囲を抑えることが可能で、大幅な設備の省スペース化を実現できることも特徴です。その他、2019年12月に開催された「2019国際ロボット展」では、スカラロボット(水平多関節ロボット)「EC06シリーズ」を参考展示。不二越がスカラロボットをラインアップするのは十数年ぶりだということです。

富山事業所でロボットの生産体制を強化

 不二越は1928年に富山で創業し、長年、富山に本社機能を置いてきましたが、2018年2月開催の定時株主総会決議(定款変更)後に本店の登記を富山から東京に移転しました。東京本社を不二越グループ全体の経営の中枢と位置づけ、経営トップ、経営企画・法務・グローバル財務などの本社機能、国内外の営業戦略本部が常駐し、経営・全営業を統括する体制に移行した他、国内外の有力企業や産学官交流などを狙い、ロボット開発部隊・企画部隊についても一部を東京本社へ移管し常駐化させました。これまでの富山本社は、「富山事業所」として引き続き主要事業の生産拠点に位置づけられており、国内外の生産拠点の基幹工場として、生産に関わる経営資源を統括しています。
 そして現在、ロボットの生産は富山事業所と中国・張家港市にある「那智不二越(江蘇)精密機械有限公司」(NJI)で行っています。増強も積極的に進めており、富山事業所では2018年から新しいロボット生産棟(ロボット第3工場)の建設工事に着手し、2020年1月に延べ床面積約5500㎡の規模の新棟を稼働させました。稼働後もロボット第3工場では、ロボットやIoT技術を導入して生産ラインを無人化ラインへと進化させる取り組みを進め、2020年5月に無人化ラインを完工させ、主に低可搬タイプの産業用ロボットを生産しています。
 中国ではNJIの近くに約9万㎡の敷地を取得済みで、新工場の建設計画が検討されていますが、現状では不透明な部分が多くなっているようです。NJIでは低可搬タイプのロボットをメインに生産していますが、中国の新工場は低可搬タイプから可搬重量70kg程度のロボットまで幅広く生産する見込みで、産業用ロボット市場が拡大する中国での生産体制を強化する狙いです。
 不二越では、2016年に新たな経営方針として「ロボットを核にした総合機械メーカー」への転換を掲げ、上記のような製品ラインアップの拡大や生産体制の強化を進めてきました。今後は幅広い産業機械分野に多彩なロボットを提供していく考えです。加えて、「ロボット単体」だけでなく「ロボットを含めたシステム」の提供体制を強化していき、ロボット事業を拡大していく方針のようです。

(執筆:産業タイムズ社)

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