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独自の協働ロボットで注目を集めるデンソーウェーブ

レンテックインサイト編集部

ロボット Insight 独自の協働ロボットで注目を集めるデンソーウェーブ

 株式会社デンソーウェーブは、大手自動車部品メーカーである株式会社デンソーの産業機器事業、システム機器株式会社、株式会社デンソーシステムズが合併して2001年に誕生し、QRコード(2次元コード)読取機器や産業用ロボットといった製品を扱っています。そのうち産業用ロボットは、自動車関連や電機・電子分野などで使用される小型製品において世界トップクラスのシェアを有します。また、2019年12月には、垂直多関節ロボットの新型モデル「VMシリーズ」と「VLシリーズ」を発表。VMシリーズの最大可搬重量は25kg、VLシリーズの最大可搬重量はデンソーウェーブのロボット史上最大の40kgで、中・大型製品のラインアップ拡充にも力を入れています。

 親会社の株式会社デンソーでは1967年に自動車部品を生産するための自社設備として産業用小型ロボットの開発を開始し、1970年には実用機の第1号として、アルミダイカスト鋳造作業ロボットを製作し本社工場に導入しました。デンソーではその後も生産合理化のために、積極的にロボットの導入を推進。そして1991年から他社への販売を開始し、現在デンソーウェーブがその事業を担当しています。

 開発の出発点が自動車部品向けであり、現在も自動車業界向けを中心に、垂直多関節、水平多関節(スカラ)、直角座標、工程間搬送、組み込み型のロボットを展開しています。高い品質が要求される自動車業界向けで長年展開してきたことから、細かな制御が要求される場面で強みを発揮し、信頼性で高い評価を得ています。また、上記のようにデンソーグループはロボットメーカーでありながらロボットのビッグユーザーでもあり、長年ロボットを使用してきた経験を開発に反映できることも強みです。

小型協働ロボットの取り組みを強化

 注目を集めている製品の一つとしては「COBOTTA」(コボッタ)があります。安全柵なしでも使用できる協働型ロボットで、可搬重量は500g。独自のモーターや減速機を活用しており、本体重量は内蔵されたコントローラーを含めてわずか4kgという小型ロボットです。従来のロボットでは自動化が難しかった小型部品のハンドリングや検査冶具へのセッティングなどにも対応でき、製造現場だけでなく、研究施設や教育機関などでも採用されています。

 2019年12月には、日立キャピタル株式会社ならびに株式会社日立システムズと共同で、オフィス向けロボティクスソリューション「RPA&COBOTTA オフィス向け自動化支援」を開発しました。コボッタによる人的作業代行に、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールによるデジタル作業の自動化機能を組み合わせたソリューションで、契約書などへの捺印と書面の電子化をロボットで自動化。2019年12月に開催された「2019国際ロボット展」などで展示され、大きな話題を集めました。

 販売面では、コボッタの価格シミュレーションや契約の申し込みを、デンソーウェーブのホームページで行えるサービスを2019年7月に開始しました。従来、産業用ロボットを導入するためには、販売店などから見積もりの提示を受け、契約を交わす必要がありました。それに対して、このサービスはデンソーウェーブのホームページにアクセスし、質問項目への回答とユーザー情報を入力するだけで概算価格を即座に確認することができます。また、契約の申し込みもでき、送付される書類に記入して返送するだけでコボッタを導入できます。これにより、産業用ロボットを導入したことがない企業・団体ならびに個人でも簡単にロボットを導入できる体制が整備されました。

AI分野の取り組みを強化

 また、デンソーウェーブでは先端的な研究開発の一環として、双腕型ロボットアームを備えた「マルチモーダルAIロボット」の開発を進めています。ロボットアームに不定形物を扱える多指ハンドを備え、ディープラーニングとVR(仮想現実)技術を用いることで、複雑なプログラムを組むことなく、人が人に作業を教えるのと同じようにロボットに作業を学習させることができるロボットシステムです。

 開発は、自動計測制御装置の事業を手がけるベッコフオートメーション株式会社や、AIベンチャーの株式会社エクサウィザーズと共同で実施。筋電義手ベンチャーのイクシー株式会社が多指ハンドを提供し、AIロボットの研究で知られる早稲田大学の尾形哲也教授がアドバイザーとして参画しています。展示会ではロボットでタオルを畳んだり、サラダを盛りつけたりするデモを実施しました。

 コボッタが間接的な簡易作業の置き換えに重点を置いているのに対し、マルチモーダルAIロボットは人が行っている直接作業を簡易に自動化することを目指した取り組みです。商品化の時期などは未定ですが、マルチモーダルAIロボットで培ったAI技術の横展開として、さまざまな実証を進めています。例えばロボットが人と協働作業する場合、人の作業状況に合わせてロボットが作業を変える必要がありますが、そのシーケンスを煩雑なプログラムで記述する代わりにAI技術を活用するといった取り組みです。

 AI関連では、OSARO(米カリフォルニア州サンフランシスコ)の技術を活用し、不定形な食材をピッキングするデモも展示会などで紹介しています。OSAROは産業用ロボット向けのAIソフトウエアを開発するベンチャー企業で、同社のAI技術を既存のロボットやビジョンと組み合わせることで、透明な包装を施された商品や形状の変わりやすいものでも正確にピッキングすることが可能です。

 今後、感染防止に対応した働き方の変革が進み、製造業だけでなく、医療現場やオフィスなどでも省人化ならびに自動化が進展していくと見られています。その中でデンソーウェーブでは、新たな領域にもコボッタをはじめとしたロボットの活用案を提案していき、ロボットを活用した柔軟で無駄のない自動化ソリューションの創出に取り組んでいく方針です。

(執筆:産業タイムズ社)

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