IoT(モノのインターネット)によって工場内の機械や設備の状況から故障を予知する予知保全に注目が集まっています。センサによって収集したデータから機械や設備の状態を分析し最適なタイミングでメンテナンスすれば、部品のムダや作業量を減らしつつ工場のダウンタイムゼロ=稼働停止時間ゼロに近づけられるというものです。
そのダウンタイムゼロを目指す、予知保全の手法の一つとしてドローンが注目されています。予知保全のためのドローンの代表格が米国シアトルのスタートアップVtrusのドローンABI Zeroです。
ABI Zeroは熱探知カメラ、3Dスキャナー、360度カメラ、深度センサ付きカメラ、ガスセンサ、環境監視モニターなどのツールセットを備えています。これらのツールによって収集されるデータはVtrusのクラウドに送信されます。熱探知カメラによって機械や設備の熱分布を捉えチェックしたデータ、センサによってガス漏れを点検したデータ、機械の計器の状態やバルブのさびなどを撮影した写真データなどを収集します。これらのデータは機械や設備に対してメンテナンスを実施するかどうかの意思決定に活用されます。
また、ABI ZeroはビジュアルコンピューティングプラットフォームのNVIDIA Jetson platformを活用して毎秒30回、1回あたり30万カ所の深度を計測します。そのデータを他のカメラのデータと統合することで詳細な3Dマップを形成することで、(操作する人を必要とせず)自律的に飛行することができます。ルートを設定して飛行させることも可能で、これまで人が歩き回って点検していた工場内の機械や設備の点検をドローンが代行することも可能です。
ABI Zeroで注目すべきは1日あたりの飛行時間です。ABI Zeroはフル充電で約10分間の飛行が可能となっています。10分間の飛行後は自動的に充電機へドッキングして充電を開始し、約30分間の充電が完了すると再び飛行可能となります。1日あたり合計6時間の飛行が可能な計算です。
ABI Zeroを活用した予知保全は工場のダウンタイムを短縮するための手法として大きなアドバンテージがあります。
IoTによる工場の予知保全をする場合、そのための設備投資は少なくありません。工場内のすべての機器や設備にセンサを取り付けたり、場合によっては機器や設備を新しいものに変えたりしなければならないケースもあるでしょう。
またIoTではなく従来の様に人が高頻度で点検するのであれば、そのための人員が大勢必要となります。そのうえ点検のための制度やカリキュラム、さらには設備を整えなければならずその分の人件費やコストがかさむことになります。
一方、ABI Zeroではドローンを投入し合計6時間飛行させることで工場内の機械や設備のデータを収集して予知保全を実行できます。ABI Zeroが自律的に飛行し工場内の機械や設備を点検し必要なデータを収集しリポートを生成。そのリポートにおいて機械や設備に何らかの異変が見つかった場合にのみ点検のための人を派遣します。これにより、人員やコストを大幅に削減することが可能となります。
人命の安全確保は工場にとって最も重要なことです。高所や有害ガスが発生していたり密閉空間だったりと人が作業をするには危険な場所の点検にもABI Zeroは有用です。
またABI ZeroはGPSを使用しません。密閉空間でかつ極度に狭い場所ではGPSで飛行位置を確認するのは不可能なためです。代わりにABI Zeroはコンピュータビジョンで3Dマップを形成して自律的に飛行します。
人間が入り込めないような狭い場所にもABI Zeroが入り込んで点検を実施します。
従来、予知保全に関しては人が高頻度で点検をする、もしくは機械や設備に取り付けたセンサによってデータを収集・分析し異変を感知するのが一般的でした。しかし、その場合には多額の人件費や設備投資が必要となります。その点、ABI Zeroではコスト面で優位性があります。また、ABI Zeroを飛行させることでセンサを設置していないアナログな機械や設備の異変(熱分布、ガス漏れ、さびなど)をも感知できます。さらに、これまで人が行っていた危険な場所での点検作業を減らし、リスクを削減するのにも有用でしょう。
工場のダウンタイムを短縮しより安全な工場を実現するうえで、ABI Zeroのようなドローンを活用するのは賢明といえるのではないでしょうか。今後、ドローンを工場現場に活用する事例が続々と出てくるでしょう。
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