人間には実現できない動作・パワー・スピード・正確性など、特殊な能力でものづくりの現場を支える産業用ロボット。さまざまな業種の製造現場で、すでに欠かせない存在となっています。 そんな中、次々と製品化が進んでいる「コミュニケーションロボット」も、ビジネスや日常生活に欠かせないパートナーとなるかも知れません。
人間が理想とするロボットの在り方については、国によって違いがあるようです。
例えば過去のハリウッド映画を見ると、多くのロボットは人間の指示に従って黙々と働く機械として描かれていました。
人間と会話することはあっても、ロボットが発する言葉は「Yes」くらいのものです。
アメリカ人にとって理想のロボットとは、文句を言わずにひたすら主人(人間)のために働いてくれる道具としての存在と捉えることができます。
これに対して日本では、「鉄腕アトム」や「ドラえもん」のように、人間と心と言葉で通じ合えるロボットが描かれてきました。
日本人にとって理想のロボットとは、普段から気さくに会話ができ、困った時には相談に乗ってくれたり、いざというときは体を張って守ってくれたりするような存在と捉えることができます。
そんな日本人が理想とするロボットが、AI(Artificial Intelligent/人工知能)技術の進化などによって具現化されつつあります。
それが「コミュニケーションロボット」です。
総務省も「ICT(Information and Communication Technology/情報通信技術)スキル総合習得教材」の中で、「人間とのコミュニケーションを主な目的としたロボット」を、コミュニケーションロボットと定義しています。
その形態や用途、役割はさまざまです。ソフトバンクロボティクス株式会社と、アルデバランロボティクス社(英: Aldebaran Robotics SAS)が共同開発し、
2015年6月から国内で一般販売を開始した「Pepper」は、人型コミュニケーションロボットの代表的存在ともいえるでしょう。
コミュニケーションロボットとしてのPepperは、発売当初から「受付やイベントで使う」「店舗内で使う」「介護施設で使う」などといった、ビジネス活用が中心となっています。
サービスや商品の説明、高齢者の話し相手をするなど、ビジネス上明確な役割が与えられているのです。
その一方、シャープ株式会社が2016年5月から発売を開始した「RoBoHon(ロボホン)」は、手のひらに乗るサイズで、外にも持ち歩ける個人向けのコミュニケーションロボットとして開発されました。
RoBoHonは、一人1台の所有を想定したパーソナルなロボットで、通信機能も備えています。
その他にも、常に家の中に置かれ、家族の顔を識別して適切なコミュニケーションを取ったり、家族で予定を共有したり、家族同士のメッセージングサービスとしての活用が期待されているコミュニケーションロボットもあります。
コミュニケーションロボットの活用シーンは、今後もさまざまな形で広がることが予想されており、中でも特に期待されるのが、モビリティ分野での活用ではないでしょうか。 例えば自動運転が実現した場合、バスやタクシーなどでも人間のドライバーは存在しなくなりますが、移動サービスを提供する上での、さまざまなガイド機能は残しておく必要があります。 「次は○○に停まります」や「○○にお越しの方はこちらでお降りください」など、これまではドライバーが案内していた情報を提供する手段が必要になるのです。 現在、全国各地で行われている自動運転バスの実証実験では、その役割をコミュニケーションロボットに持たせようとしています。 単に社内スピーカーからアナウンスが流れてくるだけでは、自動運転車の車内は無機質な空間となってしまうため、コミュニケーションロボットがガイドすることで、 乗客が閉鎖された空間に閉じ込められているという、心理的負担を減らそうとしているのです。 現時点での実証実験では、コミュニケーションロボットの役割はまだガイドをするだけに留まっていますが、無人の自動運転バスが正式にサービスを開始する頃までには、 コミュニケーションロボットが乗客の質問に答えて、観光ガイドや道案内をする機能などを搭載しようとしています。
この他、社会問題の一つとなっている高齢者の自動車事故を防止する目的においても、コミュニケーションロボットの活用が研究されています。 高齢者が一人で運転する際に、コミュニケーションロボットに注意を喚起してもらうのです。 ICT/IoT(Internet of Things/モノのインターネット)社会において、コミュニケーションロボットはますます重要な存在となりそうです。