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人間の働き方も変わる?協働ロボットの最新動向

レンテックインサイト編集部

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Inkwood Researchの調査によると、協働ロボットの世界市場は、2016年に2億6300万ドルでしたが、2025年には約92億7000万ドルにまで拡大するとしています。 今後ますます注目が集まる協働ロボット、今どのように活用されているのでしょうか。

人間と働く協働ロボットはなぜ誕生したのか

産業用ロボットの歴史は古く、1954年にG.C.デボル氏が繰り返し作業するロボットの特許を出願したのが始まりです。そして後に「ロボットの父」と呼ばれるエンゲルバーガー氏が産業用ロボット「ユニメート」を開発するユニメーション社を立ち上げました。

1968年には川崎重工がユニメーション社と技術提携し、翌年に国産初の産業ロボットが誕生しました。当時は高度経済成長期で人手不足が社会問題となっており、作業を効率化することで労働力を補う手段として産業用ロボットのニーズが高まっていきました。

こうして登場した産業用ロボットですが、コストが高く、単一の作業しか対応できませんでした。 また、大きな力で作業をするため、安全上人間と隔離した状態でしか作業することができません。 こうした特性から、従来の産業用ロボットは主に自動車産業や電気・電子産業などの大企業で少品種大量生産を目的として導入されており、範囲は極めて限定的でした

昨今では少子高齢化に伴う人手不足が深刻な問題です。 また、消費の多様化に伴う多品種少量生産のニーズが高まっています。 このような時代においては、今までの高価で単一的な作業だけをこなす産業用ロボットだけでは、労働力の補完や多品種少量生産を実現できません。 そこで人間と同じ空間でいろいろな作業を行う協働ロボットが求められるようになりました。

技術の進化で協働ロボットの用途が広がる

協働ロボットは1980年代ごろから遠隔操作技術として研究されてきました。 従来の産業用ロボットでは、サーボ(制御装置)の目標値を位置または角度で設定する位置制御で動作してきました。 協働ロボットはそれに加えて力制御(トルク制御)を行うことで、対象物が同じ形をしていなくても正しく認識して適切な作業ができるようになりました。 この力制御の進化により、今までできなかった部品の組み立てやピッキング、調理補助といった用途に広がっています。

また、今までは決められた作業とは違う作業に変更する場合、制御プログラムの作成やティーチングが必要となり、時間もコストもかかるものでした。 さらに法令により、80W以上の産業用ロボットは人間と隔離される必要がありました。

しかし、2013年には労働安全衛生規則が一部改正され、安全基準を満たし人間への危険が排除されれば、80W以上のロボットでも人間と協働で作業することが可能になりました。

また、力制御の進化によって、ユーザーでも比較的簡単にティーチングができるようになり、いろいろな作業をひとつのロボットで柔軟に実施することが可能になりました。 そのため導入が難しかった中小企業でも導入が広がっています。

さらに最近では、人工知能(AI)の活用が進んでいます。大量の作業データやセンサーから収集した情報を学習するロボットも登場しています。 データから学習することで熟練工と同じ作業ができるようになりました。また、ロボットをクラウドに接続し、複数のロボットを連携させることも可能となっています。

最新の協働ロボット事例

それでは最新の協働ロボットの事例を見てみましょう。

アマゾン

おなじみの巨大ECサイトアマゾンは、自ら在庫を持ち、迅速な納品体制を構築していることで知られています。 その原動力となっているのが、配送センターにあるピッキング用のロボットです。 ロボットは床に貼り付けたバーコードを読み取りながら移動し、前後に取り付けられたカメラで人に衝突しないように制御しています。 ロボットはクラウドサーバーから注文情報を受信し、必要な商品を棚からピックアップします。 ロボットの導入により今まで1時間以上かかっていたピッキングが15分に短縮できるようになりました。

ハウステンボス

ハウステンボスにはたこ焼きロボット「OctoChef(オクトシェフ)」が登場しました。 アーム型の協働ロボットとAIによる画像認識を組み合わせてたこ焼き器への油引き、生地入れ、返し、焼き加減の調節、盛り付けをこなすことができます。 唯一できないのがタコなど具材を乗せる作業で、これだけは人間が行います。
安全性の面においては、狭いスペースのたこ焼き店舗の場合、人間をセンサーで感知するたびに止まってしまうと仕事になりません。 そこで、人間がぶつからないようにロボットが注意を呼びかけるように制御しました。 ロボットと人間の共同作業により、通常3人必要なところを1人で運営できるようになりました。 焼き上がりはまだまだ人間にはかないませんが、今後はデータを学習することで、気温・室温に応じた焼き方ができるようになると期待されています。

仲間として働く人に溶け込む協働ロボット

アマゾンの配送センターで働く人は、ピッキングするロボットのことを「ドライブ」と呼んでいます。 また、ハウステンボスではロボットが人間に声をかけて作業しています。このように、人間がロボットを、 「機械ではなく、退職しない、24時間働いても疲れない働く仲間」として受け入れ、職場に溶け込んでいるのが協働ロボットの特徴であり、 その場で働く人にとってもより働きやすい新たな職場を提供してくれることになるのではないでしょうか。

(出典: Inkwood Research - GLOBAL COLLABORATIVE ROBOTS MARKET FORECAST 2018-2026)
(出典: The Guardian - Meet your new cobot: is a machine coming for your job?)

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