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半導体事業を強化するレゾナック

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 半導体事業を強化するレゾナック

 レゾナックは、2023年1月、昭和電工株式会社と昭和電工マテリアルズ株式会社(旧日立化成株式会社)が統合し誕生しました。昭和電工は素材の技術に強みを有し、昭和電工マテリアルズは半導体材料に強く、特に後工程で重要とされる10~15材料のうち7~8種類を有しています。多種類の半導体材料をラインアップし、それぞれの材料が世界でトップクラスのシェアを誇ります。素材から加工が可能で、かつ高機能に特化しており、半導体メーカーと直接仕様を決めて開発を行い、材料を販売していることなどが特徴です。

 神奈川県川崎市にあるレゾナックの開発拠点「パッケージングソリューションセンター」では、最新の半導体製造装置を揃えており、同センターで設立したコンソーシアム「JOINT2」では半導体製造装置・材料・基板メーカーと組み、技術革新に挑んでいます。さらに、その第2弾として、次世代半導体パッケージ分野で日米の材料・装置などの企業10社によるコンソーシアム「US-JOINT」を米シリコンバレー(カリフォルニア州ユニオンシティ)に設立。2024年12月末までにクリーンルームを整備し、2025年4~6月期までに設備を導入して稼働する予定です。

 US-JOINTは、大手プラットフォーマー向けの次世代半導体におけるパッケージング工程の最先端要素技術を開発します。顧客に近い場所で研究を行うことで、市場のニーズをリアルタイムで捉えて迅速な評価や開発につなげる狙いです。また、米国で共創コンソーシアムを設立した目的を「インターポーザーを介した複数のチップをより高速に接続する2.xDといった最先端パッケージ開発では、新材料や装置だけの単独の技術開発だけでなく、パッケージ全体における最適化を図る必要がある。今後、全体のプロセス管理が重要になってくる」(レゾナック エレクトロニクス事業本部の阿部秀則副本部長)と説明しており、設立メンバーとして、国内企業は、レゾナック、東京応化工業、ナミックス、メック、TOWA、アルバック、海外企業は、KLA、K&S、モーゼスレイク、アジムースが名を連ねています。

 近年、シリコンバレーに集積するGAFAMなどの大手IT企業も自社で半導体を設計する流れが出てきています。さらに、後工程のパッケージも自ら研究開発を行い、高性能化を実現する新コンセプトが次々に生み出されています。こうしたトレンドを現地で的確に把握し、最終顧客らと共同開発する意義は大きいといえるでしょう。

半導体R&Dの人員を拡充

 レゾナックは、半導体材料分野へのリソース投入を加速するべく、半導体向けR&Dの人員を拡充しています。研究所ならびに計算情報科学研究センターの半導体向け人員の比率を、2024年内に6~7割程度まで引き上げる方針で、計算情報科学センターの人員規模についても現在の80人弱から100人体制に増員する考えです。

 旧昭和電工と旧日立化成が統合して発足した同社では、事業部だけでなく研究開発部門の統合も進めており、統合作業は「すでに8~9割完了している」(執行役員CTOの福島正人氏)といいます。そして、その体制をベースに、テーマ選定やリソース配分など、同社が掲げる「共創型研究開発」のモデルを追求しています。CTO直轄の組織として、先端融合研究所、高分子研究所などの新事業創出ならびに分析・評価を兼ねた研究部門のほか、計算情報科学研究センターや2023年から横浜市で始動した「共創の舞台」などがあり、社内外との連携を駆使しながら研究開発を推進しています。

 さらに、2024年1月にエレクトロニクス事業本部との連携強化を目的として「研究所戦略部」を新たに設立。テーマや開発スピード、材料特性向上などの成果を最大化するため、研究所出身のエンジニアを中心に構成される組織となっており、R&D活動における戦略部門と位置付けられています。

 開発期間の短縮に向けての施策も講じており、下館事業所(五所宮)をフィラー・複合材のコア拠点とし、これまで分散していたフィラーの開発拠点と、封止材やフィルムなどの開発拠点を集約。フィラーが得意な研究員を同事業所に配置し、顧客の求める製品をタイムリーに提供しています。小山事業所で進める「パワーモジュールインテグレーションセンター」においても、同事業所内の別の建屋に移転し、顧客の共創スペースを確保することで開発・評価機能を拡充。開発から採用までの期間短縮を目指しています。

AI半導体向け材料を増産

 生産面では、AI半導体(2.5/3Dパッケージ)などの高性能半導体向け材料の生産能力を従来の3.5~5倍に拡大するプロジェクトを進めています。増産する材料は、絶縁接着フィルム「NCF」と、放熱シート「TIM」で、いずれも高性能半導体向けに一部採用されています。

 投資金額は約150億円を計画しており、2024年以降順次稼働する予定です。現在、それぞれの生産拠点で増産投資に着手しており、需要動向を見ながら、2027年のフル稼働を目指す方針です。調査会社のガートナー社によれば、AI半導体市場は2027年に2022年比2.7倍に拡大すると予想されており、レゾナックはタイムリーに生産能力を拡大させ、市場での優位性を強固にする方針です。

 NCFは、高性能半導体に搭載されるHBM(High Bandwidth Memory)と呼ばれるメモリーを、接続しながら多段積層するために使用されています。NCFには接着力とデバイスの接続信頼性に加え、サブミクロン単位の厚み精度が要求されます。NCFの生産拠点は五井事業所(千葉県市原市)。同社はNCFの前身にあたるダイボンディングフィルムの開発・製造で長年培った技術を活用しています。

 TIMは、高性能半導体の放熱用に使用されます。TIMには、発熱するチップの熱を素早く放熱する熱伝導性と、繰り返しの温度変化に耐える信頼性およびチップと冷却器の微小な凹凸に密着する柔軟性が求められます。同社は、独自技術を使い、柔軟なシート材に特殊な形で黒鉛粒子を加えることで、要求される性能を達成しました。生産は茨城県日立市にある山崎事業所(桜川)が担っています。

 レゾナックは2024年9月に、グループ会社で再生医療事業を手がけるMinaris Regenerative Medicine, LLC、Minaris Regenerative Medicine GmbH、Minaris Regenerative Medicineを米国のファンドへ譲渡しました。こうした取り組みを含めて事業のポートフォリオを見直しており、それに合わせて半導体材料へ経営資源を集中する体制が強化されているといえるでしょう。

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