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半導体事業を拡大するミネベアミツミ

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight 半導体事業を拡大するミネベアミツミ

 2016年に、ミツミ電機株式会社とミネベア株式会社との間で経営統合契約および株式交換契約が締結され、2017年1月に新会社ミネベアミツミ株式会社が発足しました。そのミネベアミツミにおけるミツミ事業では、アナログ半導体、光デバイス、機構部品、高周波部品および電源部品を手がけています。アナログ半導体では、リチウムイオン電池保護IC、電源IC、タイマーIC、MEMSセンサー、磁気センサー、車載用メモリーなどのほか、IGBTをはじめとするパワー半導体も展開しています。スマートフォンなどに使われるリチウムイオン電池保護IC(1直)では、世界シェア80%程度を有します。

生産・開発体制を強化

 アナログ半導体事業の拡大に向けては工場の拡張が必要となるため、2018年に前工程の主力ファブである千歳事業所(北海道)でIGBT向けの増強を実施。千歳事業所は、ミツミの前工程の主力工場で、6インチラインを4本保有しており、設備投資によって6インチ換算で月産4万枚にまで能力を引き上げました。さらに2022年度には、千歳でパワー向けの生産能力を従来比3倍(6インチ換算)に増強するため、成膜装置やイオン注入器、洗浄装置などの裏面工程向け設備を導入しました。8インチにも対応させ、月間約8000枚の裏面加工が可能な体制を整えました。アナログ半導体は、中期的に大きく生産能力が引き上げられていく予定で、EV系はすでに大きな商談があり、電池関連などで増産を予定しています。

 2021年には、オムロンから8インチ換算で月産1万枚の能力を持つ工場(滋賀県野洲市)を取得しました。同工場はMMIセミコンダクター株式会社として、主にMEMS・ICの開発、製造、販売などを行っています。同所ではIGBTを製造し、裏面工程以降の検査や出荷までを千歳事業所で担っています。事業譲受後に、ミネベアミツミは100億円超の設備投資を実施して能力を拡大し、月産約2万枚の8インチウエハー生産体制を構築。同工場には拡張余地があるため、今後も需要などに応じて能力を拡大していく計画です。

 ミネベアミツミは、MMIセミコンダクターによって幅広いMEMS製品の設計技術と周辺技術を取得し、自社のMEMSセンサー製品技術との融合を図っています。新製品開発によるラインアップ増強、既存製品の高性能化、機能追加などのシナジーなどを進めており、特に、血圧計用のMEMS圧力センサーは、両社が強みを持つ分野であることから、新しいニッチトップ製品として競争力を高めていく計画です。

 2021年には群馬県太田市および岐阜県岐阜市に半導体の設計開発拠点を新設しました。これにより、半導体の日本国内の設計・開発拠点は、厚木事業所、千歳事業所、高塚事業所に加えて5拠点となりました。新設した二つの拠点では主に内製の小型・精密モーター向けなどのさらなる高効率化、高性能化を図るドライバーIC開発の半導体技術陣の強化を目指しています。さらなるアナログ半導体製品開発能力強化を図るとともに、今後の内製モータードライバーICのラインアップ強化において、最重要開発製品と位置付けているロジック・CPU制御技術とアナログ技術が融合されたインテリジェントモータードライバーICの開発を強化しています。

 同社では、コア事業である「8本槍」の一つとして注力しているアナログ半導体において、モーターなど他事業とシナジーを生み出す「相合」活動の取り組みを進めており、両拠点設立を機に、「相合」活動をさらに推進するとともに、市場・ユーザーに密接したサポート・最適な製品の開発に注力しています。

M&Aも複数実施

 ミネベアミツミはM&Aも進めており、2020年には、アナログ半導体の設計・製造を手がけるエイブリック株式会社を100%子会社化しました。買収金額は約344億円。エイブリックは、1968年のクオーツウオッチ用CMOS ICの開発からスタートし、その後セイコーインスツルの半導体部門としてグローバル展開してきました。現在は民生用のボルテージレギュレータ/ボルテージディテクター、リチウムイオン電池保護IC、車載用のEEPROMや電源IC、医療機器用の超音波イメージング用ICなど、アナログICを中心に低消費電流、低電圧動作、超小型パッケージ技術を活かした製品群を展開しています。

 また2023年11月には、パワー半導体専業メーカーの株式会社日立パワーデバイス(東京都千代田区)の全株式を株式会社日立製作所から取得し子会社化すると発表しました。2024年5月には株式の取得と事業譲受が完了し、日立パワーデバイスの名称をミネベアパワーデバイス株式会社に変更。日立製作所グループのパワーデバイス事業に関する海外販売事業を譲り受けました。買収価格は非公開ですが、400億円程度とみられます。

 ミネベアミツミのアナログ半導体事業は、(IGBTをはじめとする)パワー半導体領域においても事業拡大を目指しており、その中でIGBTビジネスの拡大を計画・推進してきましたが、これまではチップビジネスの展開にとどまっており、独自のモジュール化技術は有していませんでした。日立パワーデバイスの子会社化により、従来のチップ製造に加え、パッケージやモジュールの後工程技術と生産能力が取得でき、パワー半導体を開発から一貫生産できる垂直統合型のビジネス展開が可能となりました。なお、ミネベアミツミは、日立パワーデバイスの前工程ファブとして以前から製造を受託しており、一部ではすでに滋賀工場で試作中であることから、スムーズに統合できる見通しです。

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