近年、世界の平均気温は上昇を続けており、世界各国は地球温暖化対策への取り組みを強く求められています。日本政府は2050年までにカーボンニュートラルを達成すること目標に掲げており、国内企業は温室効果ガス削減に取り組む必要があります。
カーボンニュートラル達成に向けて、現在「CCUS」と呼ばれる技術が注目されています。CCUSは大気や排気ガスなどから温室効果ガスであるCO2だけを分離回収し、埋め立てて再利用する技術です。CCUSにおいてCO2濃度測定は必要不可欠な要素になるため、CO2センサーの需要が高まることが予想されます。
CO2センサーは、従来からさまざまな用途で用いられています。この記事ではCO2センサーとはどういうものか、用途や種類などを解説します。
CO2センサーは空気中の二酸化炭素(CO2)濃度を測定するための計測器で、大気中や自動車の社内、工場の設備から出る排気ガスなどさまざまな場所で活用されています。近年は新型コロナウイルス感染症の対策として、CO2濃度を測定して密閉空間で人が密集しすぎないようにチェックをする目的などで利用され注目されました。
CO2センサーにはハンディータイプや固定式タイプがあり、ハンディータイプは軽量なので、必要な場所に持ち運んで簡単に計測できます。固定式タイプではリアルタイム計測でデータを収集する目的などで使用すると、IoTなどでデータ活用が可能になります。例えば設備から出る排気ガスのCO2濃度を計測すればCO2排出量を正確に計測でき、対外的な報告書の算定にも利用できます。
CO2センサーは工業用、医療用をはじめ、様々な分野で利用されています。
●自動車の環境性能調査のための排ガス測定
●オフィスや教室、施設内の空気清浄度測定
●火災報知器
●炭酸飲料製造工場の安全対策
●密閉空間でのコロナウイルスなどへの感染予防対策
CO2センサーは主に、NDIR式(非分散形赤外線吸収法)、化学式、半導体式、熱式の4つの種類に分かれています。
NDIRは赤外線吸収法とも呼ばれ、赤外線が特定の分子に吸収される性質を利用しています。赤外線を透過させその減衰量を基に二酸化炭素の濃度を測定します。測定精度はあまり高くありませんが、オフィスや店舗などの室内でモニタリングする用途などではよく使用されます。
化学式のCO2センサーは酸化還元反応を利用してCO2濃度を計測します。炭酸ナトリウムや炭酸リチウムのイオンの酸化還元反応を電気エネルギーに変換して濃度を測定します。他成分の影響を受けにくい特徴がありますが、定期的なメンテナンスが必要で寿命が限られています。
半導体式のCO2センサーは、半導体の素子を使用してCO2濃度を計測します。CO2の濃度に応じて導電率が変化する素子の特性を利用しています。
熱式のCO2センサーは、二酸化炭素とそのほかの成分の熱伝導率の違いを利用してCO2濃度を計測します。計測器は基準値と測定値の二つのチャネルに分かれていて、チャネル内を加熱したときに二つのチャネルで発生する温度の差からCO2濃度を計測します。
CO2センサーは今後、カーボンニュートラル達成に向けて必要性が増すと考えられています。特に現在注目されているCCUSという分野では、大気や排気ガスからCO2を分離回収する工程でCO2の濃度を計測する必要があるからです。
CCUSは回収したCO2を地中に埋めるCCSや、燃料や資源に再利用するCCUがあります。どちらの方法でもCO2の回収量や漏れ量をカウントしてCO2削減量を算定する必要があるため、CO2センサーが必要になります。
特にDACと呼ばれる大気中のCO2を分離回収する技術は、2050年のカーボンニュートラル達成に重要な技術と考えられています。私たちの日常生活や、企業の生産活動の中で削減できないCO2排出量を回収して、全体の総量をゼロにするためです。
CO2センサーはさまざまな分野で安全や健康のために利用されてきました。CO2センサーを利用する際は、測定方式やその特性を理解して、用途に応じた製品を選択する必要があります。また今後はカーボンニュートラル達成に向けて、さらなる活用が期待されます。