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GXで必要な酸素濃度計とは

レンテックインサイト編集部

測定器 Insight GXで必要な酸素濃度計とは

近年、世界の平均気温は上昇を続けており、世界各国で地球温暖化対策への取り組みが強く求められています。日本政府は2050年のカーボンニュートラル達成を目標に掲げており、国内企業は温室効果ガス削減に取り組む必要があります。

日本政府は官民が連携して温室効果ガス削減に取り組む「GXリーグ」を推進する中で、燃やしても二酸化炭素を排出しない水素の導入を支援することを表明しています。一方で水素は、微量の酸素であっても混合することで大きな燃焼エネルギーを発生させる危険のあるガスです。そのため酸素濃度計を用いて、水素と酸素の混合を防ぐ方法が用いられています。

酸素濃度計は水素の安全対策以外にも、従来からさまざまな用途で用いられています。この記事では酸素濃度計の仕組みや用途、種類などを解説します。

酸素濃度計とは

酸素濃度計は空気中や液体に含まれる酸素濃度を計測する機器で、工業用やプラント設備、医療用など幅広い分野で利用されています。電気式や磁気式などいくつかの方式で酸素濃度を計測しますが、方式によって測定精度や応答性などが異なります。

大気中の酸素濃度は基本的には一定で、通常であれば計測する必要はありませんが、特殊環境では計測が必要な場合があります。例えば飛行機や潜水艦などでは、機内の酸素濃度が一定以上あるかどうかを計測して、乗客や乗務員の安全に配慮する必要があります。

酸素濃度計には持ち運びできるハンディータイプや、設置型で長期間モニタリングするタイプがあります。ハンディータイプは軽量で持ち運びしやすいため、フィールド作業や工場内の特定場所で調査するときに使いやすいメリットがあります。一方の設置型は長期間にわたって連続したデータを取るのに適していて、生産ラインの品質管理などで使用されています。

酸素濃度計の用途

酸素濃度計はさまざまな業種で使われており、以下のような使用例があります。

工業用

製造業を中心に、酸素濃度計は工業分野で幅広く利用されています。例えば石油化学プラントや鉄鋼業界では、作業者が安全に作業するための環境を維持するために利用されています。大気中の酸素濃度が低下すると、脳に必要な酸素が届けられなくなることで集中力の低下や身体への影響があり、10%以下では生命の危機が生じるほどです。

医療用

医療用で使われる酸素濃度計は、血中の酸素濃度を測る目的で使用されています。呼吸が困難な患者に対して、高濃度の酸素を供給するためにモニタリングします。正確には動脈血酸素飽和度と呼ばれ、動脈中のヘモグロビンと酸素の結合をパルスオキシメーターという機器で測定します。

環境用

環境用で使われる酸素濃度計は溶存酸素計というもので、排水や河川の水質調査に使われます。下水道や工場、水族館などで使われていて、日常生活や事業活動などで役立てられています。ポータブルで持ち運んで使えるものが一般的で、利用目的に応じて蛍光法や隔膜電極法など計測方式を選択します。

GXで必要な酸素濃度計とは 挿絵

酸素濃度計がGXで必要となる理由

酸素濃度計はカーボンニュートラル達成に向けて活用が広がることが予想されています。その理由は政府が推進するGXリーグの中で、都市ガスに代わる燃料として水素のような可燃性・有毒性のあるガスを利用することが推進されているからです。

水素は都市ガスと違って、燃焼したときにCO2を出さないので主に工業炉やボイラーなどの燃料として活用が期待されています。一方で水素は酸素と混ざって引火すると爆発事故を起こすリスクが都市ガスより高く、酸素濃度を検知して安全な環境を整える必要があります。

酸素濃度計の種類とメカニズム

酸素濃度計は測定方式で種類が分かれており、測定できるガスの種類や応答性などの特性を理解して選択する必要があります。

電気化学式(ガルバニ電池式)

電気化学式酸素濃度計は、電極と電解液を組み合わせ、酸素量に応じて流れる電流を検知して濃度を測定します。高精度に濃度を測定できるため多くの分野で利用されています。水素やメタン、プロパンなどの可燃性ガスや他方式で計測できないヘリウムやアルゴンなどの測定も可能です。

ジルコニア式

ジルコニア式酸素濃度計は、応答時間が早く測定可能な濃度範囲が広い特徴があります。ジルコニアが高温状態で酸素イオンに対して電気を通過させる特徴を活かして、酸素濃度によって変化する起電力をもとに酸素濃度を測定します。測定できるガスが限られている点がデメリットです。

磁気式

磁気式酸素濃度計は、酸素が磁力に引き付けられる磁性を利用して濃度を測定します。酸素を含んだ測定ガスに補助ガスを加えたガスを磁界のある空間に通すと、酸素分子が引き寄せられて出口の流量が変化します。その流量差により酸素濃度を検出します。

レーザー式

レーザー式酸素濃度計は、測定ガスが流れる空間にレーザー光を照射して分子の波長の違いにより酸素濃度を測定します。応答性が早く、波長の違いがある多くの分子を判別することができる特徴があります。

酸素濃度計は幅広い分野で活躍が期待される

酸素濃度計はさまざまな業種で安全や健康のために利用されてきました。測定方式やその特性を理解して、用途に応じた製品を選択する必要があります。また今後はカーボンニュートラル達成に向けて、さらに利用の幅が広がる可能性があります。

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