株式会社堀場製作所は、流体計測・制御機器、真空計測・分析機器、液体材料気化装置など、各種精密機器を展開しており、中でもマスフローコントローラー(MFC)では世界トップシェアを誇ります。MFCは流体の質量流量を計測し流量制御を行う機器です。半導体プロセスをはじめ、高精度な流量計測・制御を要求されるプロセスにおける流量制御機器としてMFCは幅広く使用されており、同社のMFCは、CPUを搭載したデジタルMFCやデバイスネット通信に対応したモデルなど、さまざまなニーズに対応できます。
学生ベンチャーの草分け的存在と言われる堀場製作所は、「おもしろおかしく」というユニークな社是でも知られています。社員が「おもしろおかしく」仕事に取り組むことで職場での日常、さらには人生を健全で実り多いものとしてほしいという創業者の堀場雅夫氏の想いが込められた言葉です。代表取締役社長の足立正之氏は、この社是を「グローバルに浸透しているスピリットであり、永遠に引き継いでいくもの」と語っています。
同社は「ホリバグループイズワンカンパニー」という経営方針のもと、自動車、環境・プロセス、医用、半導体、科学の5つの事業部門でグローバルに成長を果たしてきました。研究開発畑一筋にキャリアを歩んできた足立氏が2018年に社長に就任してからは、事業の枠を越えて技術を組み合わせ、新たなソリューションを創出する「クロスセグメント」の取り組みを牽引し、さらなる発展につなげています。
そんな同社において、2023年4月に設立されたグループ戦略本部長として、エネルギー・環境、バイオ・ヘルスケア、先端材料・半導体の三つの重点分野において、グループ全体の成長に向けた陣頭指揮を執るのが取締役の小石秀之氏です。小石氏はMFCに代表される半導体向け製品を扱うグループ会社の株式会社堀場エステックに長く在籍し、2016~2022年まで同社社長を務めていました、現在は堀場グループの49社が一体となり、一つの方向に向かうための取りまとめを担っています。
MFCは、堀場エステックが世界シェア6割を持ち、半導体市場における同社の存在感の大きさを象徴する製品の一つです。それまで一般的だったサーマル式から圧力式MFCの投入により、半導体微細化の進展や装置のばらつき抑制ニーズに対応したことが半導体市場における高い評価につながりました。また、各地にフィールドエンジニアを置いて顧客の製造現場に対して密接なサポートを実現したことも顧客から高い支持を得ることに繋がっています。
同社のD700シリーズは、0.1秒以下の超高速応答により非常に微細な流量を安定して制御できます。また、自己診断機能も備えており、製造工程におけるダウンタイムの抑制が可能です。設備の増強や工場の確保、人の育成に手を抜かず、供給力の強化に注力してきたことも高い地位の実現につながりました。生産面では、京都府福知山市で約170億円を投資して新工場を建設し、2026年1月に竣工する予定で、MFCの生産能力を従来比で最大3倍に高める計画です。「半導体市場はまだまだ伸びる見込みで、先手を打っていくことが重要だ。必要な投資はたゆまず行っていく」と足立氏は語っています。
また、微細化の限界が現実味を帯びる中でアドバンスドパッケージが注目されており、そこにもビジネスチャンスがあると小石氏は話します。前工程に似たプロセスが増えており、MFCや制御機器の需要増が期待でき、先端材料開発用に堀場グループが得意とする分析・計測技術および装置を展開し、技術革新に貢献していく考えです。
大学ベンチャーとして誕生した堀場製作所は、産官学連携にも積極的です。「企業が単独で取り組むには困難があり、視野を広げる上でも大学との連携は絶対に必要」と足立氏は力を込めます。同社はもともとグローバルのアカデミアと広く付き合いがありますが、海外の大学は学術研究が自然にビジネス展開に組み込まれており、協業しやすいといいます。日本では代表取締役会長兼CEOの堀場厚氏が旗振り役となって京都の企業と大学で構成される「京都クオリアフォーラム」を結成し、行政とも協力しながら産官学連携の活発化に取り組んでいます。
堀場製作所はグループの将来を担う人材育成にも積極的です。自己申請で海外のグループ会社へ研修に行く制度があり、若いうちから世界を舞台に活躍できるチャンスが数多く用意されています。シニア人材の活用も推進しており、「第2定年を伸ばしていく。能力とやる気のある方にはバリバリ活躍していただく」(足立氏)方針です。
同社ではグループの役員や従業員を総称して「ホリバリアン」と呼んでいます。一人一人が起業家精神を持ち、自立した個としてその能力を最大限に発揮していこうとする姿勢の表れであり、会社はそのための場を提供していくとしています。同社は創業の根幹にあるベンチャースピリットを原動力とし、「おもしろおかしく」さらなる成長を続けていく考えです。